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異世界たちと探し人  作者: みあし
三章 金時星編

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Ⅴ 不穏の前兆 


 あの後、ゆづりは古葉の髪を奪うことは出来ずに放課後を迎えてしまった。というか、まともに古葉の顔さえ見れぬようになってしまった。

 

「どうしよう…」


 古葉の髪さえ奪えれば万事解決するという、今までと比べてかなり易しいミッション。


 しかし、達成できるビジョンが見えない。どうしたらいいのかという、解決への糸口も見えない。

 少し良さげな案が思い浮かんだとしても、古葉の瞳がこう主張するのだ。「そんな案、通用しないよ」と。彼はクスクスと微笑みながら、ゆづりの心をへし折ってくる。


 こうなったら、古葉を四六時中追いかけ回して、自然に抜けた毛を拾ってやろうか。

 ゆづりは悪質なストーカーのようなことを考えつつ、教室を出ていく古葉の背を見送る。しかし、彼の髪がポンポン抜け出すなんて奇跡は起きず、そのまま古葉の姿は見えなくなった。


「とりあえず八星に行くか」


 学校はほぼ毎日ある。古葉と会うのもそう難しいことではない。髪を奪う機会だって、これから数えきれないほどあるだろう。

 だから、今日は諦めよう。ノアとソフィーは昨日別れたきり会えていないから、そちらも気になるし。


 ゆづりは回りを見渡す。そして、誰もこちらを見ていないことを確かめると、ベランダから飛び下りた。



****



「誰もいないな」


 中継場へ着くと早々、宇宙空間部屋に赴いたゆづり。

 そして、部屋にいる神からノアとソフィーについて聞こうとしたのだが、生憎誰もいなかった。

 部屋の中央にある机の上にも、ティーパーティの痕跡は残っていない。数個のカップが伏せて置かれており、微塵も人の影を感じれなくなっていた。


 つい昨日、アリーセとイルゼの歓迎会をして賑わっていたというのに、こうも寂れるとは。

 ゆづりは少し悲しくなりつつ、水魔星へ繋がる扉を開ける。そして、出来た隙間から顔を覗かせ、中を見たのだが。


「ノアー…」


 ノアは部屋にいなかった。以前のように、クッキーの缶も転がっていない。古びた厚い本しか残っていなかった。

 おそらく、彼は未だ帰ってきていないのだろう。あれから一日経ったのに、まだ収拾がついていないようだ。


 ゆづりは大変だなと思いつつ、部屋を後にする。

 今度目指すのは、ソフィーがいるであろう地球の部屋だ。ソフィーとは大抵宇宙空間部屋にて会えていたために、彼女の個室に赴くのは今回が初めてだ。

 しかし、扉を迷うことはない。八つあるドアのうち、開けたことのないものが地球のものなのだから。


「ソフィー、いますか?」


 触れたことの無いガラスが埋め込まれた黒い扉を選んで、室内を覗く。

 すると、真っ先に目に入ったのは本棚だった。壁一面に本棚がズラリと並び、その中に古書がびっしりと詰められている。ざっくりと括れば、水魔星の部屋と酷似していた。

 しかし、水魔星とは異なり生活感が滲み出ている。小さなシンクやコンロが部屋の隅に設置されていたり、観賞植物が飾られていたりしているだろうか。地球で探せば見つかりそうな内装だった。


「いないか」

 

 ゆづりは余すことなく室内を見渡す。しかし、何処にもソフィーの姿はない。シンと静寂な空気の香りしか残っていなかった。


「……帰るか」


 ソフィーにもノアにも会えないのなら、中継場には用はない。ゆづりはもう地球に帰ろうかと足を進め、ふと木黙星の木製の扉が目に入り、ピタリと歩みを止めた。


「どうせなら資料室に行って、適当な本を翻訳してもらおうかな」


 一日一回しか使えない、理解者の翻訳機。

 最近はそれどころではなく木黙星には通っていなかったが、一通り落ち着いた今、もう一度再開してもいいかもしれない。創造者について記された書籍が見つかり、新たに分かることがあるかもしれないし。


「此処にも誰もいないや」


 ゆづりは誰もいない、静寂に満ちた資料室を徘徊し、適当な本を手に取る。そして、誰とも会うこと無く廊下を歩み、木製の扉を選んで部屋に入った。

 

「理解者ー…」


 部屋の中央では、膝が隠れるくらいの背丈の草がフサフサと揺れていた。そして、その中央に、いつもなら大木こと理解者が鎮座しているのだが、今は木ごと消えていた。ピピの姿もない。本来の木黙星の性質、人がいない星に変わっている。

 誰もいない。理解者も席を外しているようだ。


「もしかして、みんな忙しいのか?」

 

 ゆづりは部屋から半身を出し、ズラリと並んでいる八つの扉を振り返る。普段ならその扉の向こうに神たちがいるのだが、なんとなく今日はいないような予感がした。


 それでも確認するよう、近くの扉からノブを捻っていく。しかし、ゆづりの予想に添うように、月祈星の放棄者が寝ている部屋以外はすっからかんだった。金時星と天機星と土獣星の扉は、鍵でも掛けてしまっているのか、そもそも開きもしなかった。


「今日はもう帰るか」


 神がいないなら中継場に用はない。さっさと家に帰って開発者の日記の翻訳を進めた方がいいだろう。まぁ、古葉にページを数枚抜かれていると分かった今、あまり意味は無さそうだが。


 ゆづりは今後の方針を決めると、あっけなく地球へ帰った。その時はみんな忙しいのだと、深く考えていなかったのだ。


 ーー少なくとも、この日から一週間もの間、神たちに一切会えなくなるとは微塵も思っていなかった。

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