表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる  作者: グミ食べたい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/46

第14話 中間考査

 五月になり、高校生になって初めての中間考査も、なんとか無事に終わった。


 ボウリングの後、一ノ瀬さんとは何度か他愛もない話題でLINEのやりとりをしていた。けれど、中間考査が近づくにつれて、さすがに気を使ってこちらから送るのを控えるようになった。

 そのせいで、ずいぶん長いあいだやりとりしていない気がする。


 試験も終わったし、もう気兼ねなく送っていいはずなのに――

 少し間が空いただけで、なんとなく送りづらくなってしまっている自分がいる。

 基本的に、一ノ瀬さんのほうからLINEが来ることはない。

 やりとりを再開するなら、最初の一通は俺から送らなきゃいけないのに……。


 一方で、三間坂さんからは相変わらずだった。

 試験前はもちろん、試験期間中ですらお構いなしにLINEが飛んできていた。

 そのたびに、「勉強の邪魔をしないでくれ」と思ったり、「そもそも三間坂さんは勉強しなくて大丈夫なのか?」と疑問に思ったりしたものだ。

 本人は「普段からちゃんとやってるから問題ない」と言っていたが――正直、怪しい。


 そんなことを考えている今も、現代文の授業では中間考査後、最初の答案返却が始まろうとしていた。

 俺は内心かなり緊張しているというのに、隣の三間坂さんはいつも通り余裕の表情で、まったく動じている様子がない。


「……三間坂さん、なんか余裕ありそうだね」

「そう?」


 くっ。

 この返し、完全に手応えがあった人間のそれじゃないか。

 もしかして、現代文が得意なのか?


「三間坂さん、現代文って得意?」

「文系はわりとね。まあ、特に苦手な科目もないし」


 くっ……なんだその余裕の塊みたいなセリフは!

 俺も一度でいいから言ってみたいぞ、そんな台詞!

 もっとも、得意・不得意の基準は人それぞれだ。

 平均80点で「苦手はない」と言う人もいれば、60点台でそう言う人もいる。

 今の言葉だけじゃ、三間坂さんの実力はまだ測れない。


 そんなことを考えているうちに、出席番号順で答案が返却されていく。

 先に呼ばれるのは、当然俺のほうだ。


 名前を呼ばれ、三間坂さんより一足先に教卓へ向かう。

 受け取った答案をさっと折り、周囲から見えないようにしながら、自分の体で壁を作って点数を確認した。


 ――88点。


 90点には届かなかったが、悪くない。

 いや、かなりいい。

 現代文は得意科目のひとつだし、これは胸を張っていいだろう。

 俺は少しだけ背筋を伸ばして、自分の席に戻った。


「その様子だと、点数よかったみたいだね」


 むっ。

 三間坂さんが、にやりとした笑みを向けてくる。

 心を見透かされている気がして少し癪だが、この点数なら負ける気もしない。

 多少勘づかれたところで、今の俺には余裕がある。


「まあまあ、ってところかな」

「へぇ~。よかったらコツとか教えてよ」

「コツ? そうだな……」


 俺は少し考えてから言った。


「たまにさ、『作者の気持ちを答えなさい』って問題に、『本人じゃないのに分かるわけない』とか言う人いるだろ? でも、あれって人の心の内を当てる問題じゃないんだよ。この文章をどう読み取るのが妥当か、っていう理屈の問題なんだ。感情論じゃなくて、論理で考える。それが大事」

「へぇ~、そうなんだ」


 ……その反応。

 感心してるのか、適当に相槌打ってるだけなのか、どっちだ?

 本音を探ろうとしたその瞬間、三間坂さんの名前が呼ばれた。

 彼女はすっと立ち上がり、答案を取りに前へ向かう。


 俺も視線を前に向けると、三間坂さんは先生から答案を受け取るなり、俺みたいに隠したりせず、その場でさっと点数を確認していた。


 ……堂々としてるな。

 見られるとか、気にしないタイプなのか?


 ここからじゃ答案の中身までは見えない。

 せめて表情から手応えを読み取ろうと視線を送ったが、三間坂さんの顔はいつも通りで、何の情報もくれなかった。


 くっ……手強い。


 答案を二つに折った三間坂さんが席に戻ってくる。

 俺は、彼女が腰を下ろすなり声をかけた。


「三間坂さん、どうだった?」

「まあまあかな」


 くっ。

 俺と同じ返しをしてきやがった。


 さすがに、あっさり点数を教えてくれるほど甘くはないか。

 でも、気になる。

 俺が勝ってるのか、それとも負けてるのか。


 たまにははっきりと、「俺のほうが上だ」って実感したいんだ。


「……何点くらいだった?」

「高居君が教えてくれたら、私の点数も教えるけど?」


 ちっ、そう来たか。


 ギブアンドテイク。正論だ。

 だが、点数をはっきり言うのはそれはそれで恥ずかしい。

 万が一負けてたりしたら、精神的ダメージがデカすぎる。


 でも、気になる……!


 はっきり言わずに、探る方法はないのか――

 ……そうだ。


「……正確な点数は言えないけど、ヒントならいいよ。俺の点数、ゾロ目だから。三間坂さんもヒントちょうだい」


 これぞ、シュレディンガーの点数。

 ゾロ目と言っただけで、11から99まで可能性は無限大。

 ヒントとしてはガバガバだが、対価としては十分なはずだ。


 これで三間坂さんからヒントを引き出し、点数を推理する。

 もし曖昧なヒントしか出てこなければ、「それじゃ釣り合わない」と追加情報を要求する――完璧な作戦だ。


 さあ来い、三間坂さん。

 俺にヒントを――


「あー、一緒だね。私もゾロ目」


 ……は?


 俺の期待をあっさり裏切る、まさかの同一ヒント。

 これではヒント不足だと文句も言えない。


 だが、状況は少しだけ整理できた。

 今回のテストに、一問一点なんて問題はなかった。

 それに、今までの感じからして、三間坂さんが66点以下というのも考えにくい。


 ――つまり。


 77点か、88点。

 同点か、俺の勝ちか……この差は大きい。


 なんとかこの勝負を確定させたい。

 ――だが、これ以上踏み込むには、俺が自分の点数を明かすしかない。


 ……いや、無理。

 やっぱり恥ずかしい。

 結局、俺は自分の点数を差し出す勇気が出ず、彼女の点数を知るのを諦めた。


 ……ふぅ。

 俺はつくづく、小心者である。

 点数の探り合いを断念した俺は、なんとはなしに三間坂さんの手元へと視線を落とした。


「――――!?」


 ちょっと待て。

 今、ちらっと見えたんだけど……99点って書いてなかったか!?


 いや、落ち着け。

 今回のテストに一点問題はない。

 きっと見間違いだ。77点を99点と勘違いしたに違いない。


 早鐘を打つ胸を押さえながら、俺はもう一度、先生の解説を聞いている三間坂さんの机に目を向けた。

 点数の部分は隠れている。だが――


 答案の中に、赤い「△」が見えた。


 △だと?


 そうか。

 二点問題で△なら、1点。

 つまり――99点は、あり得る。


 え。

 最初の中間考査で、99点……?

 三間坂さん、まじかよ……。


 俺はその瞬間、強く心に誓った。

 三間坂さん相手に、点数を言い合うのだけは絶対にやめておこう、と。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ