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9/10

ことばを ふかく心にきざみこんだ

等身大歌詞ノートに年代別の写真パネル。

「作詞家」様の軌跡が美しく飾られている。


このエリアは一部だけ撮影が許可されており、グループで来場されている方々が代わるがわるに写真を撮っていた。


そんな様子を壁に背を預けて観察していた。

別にぼっちが捻くれて斜に構えていた、訳ではないと主張したい。


知りたかった。


時流、才能、運。

知能、知識。


容姿端麗さも含めて、おおよそ人がこの世界で成功する「要素」をこの方は全てを持っている。だけど、そのどれもが「該当時間において一番ではない」。


時流を読み切るだけならば、おそらく以前から調べている人物のほうが審美眼のレベルは高い。


才能。確かに「シンガーソングライター」として超一流ではある。ただ、この方は提供曲がそのキャリアに対して極端に少ない。ご自身の世界観から出られない。


運。これは「作曲家」様と出会えたことに尽きる。だけど、それ以外はこの方の努力だと思われる。履歴を追う限り、マーケティング戦略をしっかり練っているし、そのために必要な「タイアップ」を得ることを重視している。そう「好き勝手に音楽を作っていない」。


この方々は「作曲家」様が作った曲に「作詞家」様が歌詞を書く。「曲先」のユニットであることからもリクエストに応じて「言葉」を選んでいると考えられる。


撮影スポットの周りには、流れる人だかり。来場者の笑顔で溢れている。


視線を上げ、写真パネルを見る。


確かに容姿端麗だとは思うが、この方の少し下のご年齢には「ラストマン」がいる。24年前、一度だけ10m先で見た、30歳の「ビスクドール」は鮮烈に印象に残っている。この年代の「イケメン」は衆目一致でこの方以外はない。


なお「名前を省略されるのを嫌うアイドル」はメイン職業が音楽活動ではなく俳優だから、ジャンルが違うと俺は思っている。


「ビスクドール」、人の顔と名前が覚えられないという精神病患者ですら、恐ろしさを感じるぐらいに綺麗だった。「作詞家」様は間違いなくかっこいい。しかし「人」からでない。


「知」。この方は国立大卒で数学の教員免許を取得されている。それは確かにすごいけど、それこそいっぱいいる。


視線が揺れる。


この方が「一流」ということに異論はない。

だけど切り取ったモノだけ比較すれば「一番」じゃない。だけど「日本で一番CDが売れた作詞家」。


誰かが歌う曲ではなく、ご自身の身体で表現し、誰よりも優れた才能を発揮された。


ゴシップも殆どない。


深呼吸しながら、クビを振る。

現在から過去を振り返ると、この方は「ご自身のコントロール」に非常に優れている。


今まで調べた人物たちと決定的に違うこと。

この方は「自己主張が少ない」。


とても受動的な履歴。だが、実際にこの目で見たこの方は「とても意思が強かった」。


おそらく、頑固。神経質で譲れないことは是非もなく譲らない。ボーダーラインが非常に見え難く、かつ脆い。感情は仮面や多面的ではなく「発露」が近いと感じられた。


「物言わぬ哲学者」


自己主張全開な世界で、誰よりも力強い歌声で存在を叫び、名を轟かせた人物。


振ったクビ先、真横5cmにポスターが貼ってあった。


大量の本棚に囲まれて「作詞家」様が大の字に横たわっている。


「作詞家」様を解剖したい。

その思考回路、分析したら、何が見える?


顕微鏡を覗くように、ポスターにレンズをギリギリまで近づけた。


携帯電話には、あたかも「作詞家」様を直接被写体としたのかのような「スタンプ」が映し出された。

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