ときには人の言葉に従う勇気も必要だ
右手の時計を見れば14時43分。
残りは半分ぐらいだろうか?
歌詞が書かれたプラスチックが暖簾のように枝垂れた入り口から変わった空間に入る。
正面には椅子が数客。左手に巨大モニターがあり、言葉が断片的に映し出されていた。
中程に進み、振り返って入ってきた壁を調べる。
迷路で迷わないためには右手を壁に置き、壁に沿って歩くこと。
セオリーに従って、壁に記載された文字列を読む。
ここは「作詞家」様の個人スタジオを再解釈して再現したものらしい。
木理が押し出されたカントリー風な空間。
天井には布が柔らかくかかっており、アメリカ風の書斎といった感覚に陥る。
棚に「作詞家」様のアイテムが飾ってあったりして、この空間は興味深い。この雰囲気のなかで言葉が生まれてくるのか。
画面はちらちらと目まぐるしく文字列が移り変わっていた。来場者は椅子に座って必死にメモを取る筆記試験の最中。
数学ではなく国語のテスト。
もしくは動体視力検査。
そう思う俺は、たぶん作詞家様への愛が足りていないのだろう。鉛筆もメモ帳も用意してない。名前も書けないから0点確実。どうしようもない。先生!と叫ぶしかない。
後ろで突っ立ったまま、ぼんやり画面を見つめていると、よくわからない単語があり、携帯で調べて、そのまま凍りついた。
ばかな。
めまいがした。ちょうど空いた椅子に座り込んだ。
現在、世界は略語で溢れている。
three-letter acronym=三文字頭字語
いや、しかし、ユニット名の由来が不明だからか非常に紛らわしいというのか。
「最初から最後まで」をギリシャ文字で例えたらしい。Wikipediaにはユニット名の由来ともある。
ネットで調べたら大変如何わしい情報につながってしまい、非常に困惑した。否定はしないが、驚く。
携帯電話という「コンパス」を持っていても、事前に調べていないと、道に迷うし、突然雨が降るかもしれない。
温かさを感じる「書斎」の中で、ひとり芝居をしてしまったことを恥じる。




