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交流会 初日②

この日のすべての授業が終わり、放課後を迎えた。

朝に説明があったスケジュール通り、俺達生徒は学園から王宮へ移動し、ヤマト学院の生徒たちとの懇親会を兼ねた食事パーティを行うことになった。


両学院の生徒数を合計すると1000人を優に超えている。

いくら王宮の食事ホールといえど、一つのホールにそれほどの数の生徒は入り切らないので、学年ごとに3つのホールに分けて開催されている。ゆえにこの会場にいるメンバーはすべて両学院の1年生、そして先生のみである。


パーティなので定番のビュッフェ形式。部屋にはたくさんの料理が並んでいる。お互いの国の名物料理が並んでいて、どれも美味そうである。

ヤマト皇国は独特の名物料理があって、スシとかタコヤキとかスキヤキとかウドンとか、なんというか本能的に安心するような食べ物が立ち並んでおり、見てるだけで思わずよだれが出てしまう。

一方でウェルセリア側だとドリアやピッツァ、スパゲティなどが有名かな。


他国の本場仕込みの料理を食べる機会なんて滅多にない。

そのことに有りがたいと思いながら俺たちはテーブルを囲いながら食事を進めていた。


「こちらがヤマト皇国名産料理の一つ、寿司でございます。どうかジュール君にもお召し上がりいただきたく」

「おお。確かに美味い! 一体この赤いネタは何だ!?」

「それはマグロですね」

「これがあのマグロなのか……。あの黒い体からは想像できないな」


一口サイズに握ったご飯――シャリの上に魚の刺身を乗せる一品。

食べやすい大きさに設計さるているのはポイントが高い。

醤油と山葵の組み合わせも絶妙だ。

これがヤマト皇国の食べ物。懐かしさを感じさせるような独特な味わいが趣深い。他にもエビやイカ、サケなどのネタもあるらしく、味のバリエーションは豊富。

これがヤマトのトップに君臨する名産料理。他のテーブルでも人気らしく、ビュッフェの減りも一番早かった。


「こちらのタイも美味しいですわよ。はいあーん♡」


ヒミカは箸でネタを一貫つまむと、それを俺の口の方まで持ってくる。

しかしフレンがその手をペチンと払いのける。


「何をどさくさにあーんしようとしてるのよ、この女狐!」

「おやおや、ひどい言いようですわね」

「そうでしょ。あなたってば、1限目から1日中ジュールにベッタリじゃない!」


フレンの言うとおりである。結局俺は2時間目以降の授業も全部ヒミカと共に受けた。というか気づけば今日はずっと彼女に隣ではりつかれていた。いや今も絶賛はりつかれ中だ。 


今でも耳をすませば、「ぐぬぬううう!! あいつばかりヒミカ様と仲良くしやがって〜!」、「ヒミカ様ってばあんな平民のどこがいいんだよ」、「フレン様だけでなくヒミカ様まで。全くうらやまけしからん!」などと誹謗中傷の声が聞こえる。

確かにはたから見れば、相手国のお姫様を独占しているように見えるのも事実。そのこともあってか他クラスの生徒からの視線はいつもよりキツいような気がした。


「それが何か問題でも? これは両学院の親睦会。こうして密にコミニュケーションをとるのは当然のことですよ。それかアレですか? もしかして妬いてます?」

「うぐぐっ、そ、そんな……こと!」


おい、言いくるめられてるぞフレン。いつものクールで聡明な姿はどこにいったんだ。


「これは皇国式の接待でございます。今日1日ジュール君と共に行動してわかりました。自身は隠しているようですが、彼は相当な実力の持ち主。素敵な殿方にご奉仕するのは当然です。フレン様は何か勘違いしているようで」

「ぐぬぬ。言ったわね! 明日の親善試合覚えておきたい」

「ほほほ、そのときは返り討ちにしてさしあげますわよ〜」


飯も絶品。両手に花。楽しいはずの食事会。

だがこの二人の仲の悪いせいで台無しだ。


「まあまあフレンさんも落ち着いてください。ご飯美味しいですよ。一緒にもっと食べましょう!」

「ヒミカ様もあまりフレン様をからかい過ぎるのもよろしくありませんよ?」


フレン、ヒミカをなだめるアリスとシズクが天使に見える。この二人も同じテーブルで助かった。


「おっとこれはこれは相変わらず女を侍らせて、平民のくせにいい身分だな。ジュール・ガンブレッドよ!」


背後から話を割って入り込んできたのはAクラス所属紫髪貴族のレイヴン=マスカーレ一行だ。


「なんだあんたか。代表戦以来だな。もう俺やフレンには近づかないと約束したはずだが?」

「ああそんな約束もしたっけか。けど別に構わないだろ。ま、せいぜい最後の晩餐ってやつを楽しんでくれたまえ」

「最後の晩餐だと?」

「おっと失敬。なんでもないさ。それでは失礼するよ。ハッハッハー」


余裕の表情を残しながら、レイヴンたちはすぐに立ち去っていった。


「なんだったんだあれは?」

「さあねジュール、私に聞かれてもわからないわ」

「最後の晩餐だなんて、まるで死刑囚でもあるまいし」


いつものレイヴンなら、貴族らしくもっと嫌味を言ってくると思ったんだけどな。なんだかえらく上機嫌だった。

代表戦で敗れて改心でもしたのだろうか。

ま、そんなやつのこときにしてても仕方ないよな。

それよりも飯だ飯。次はタコヤキというやつが食べたい。


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