1/1
英雄になれなかった男
―――――最初は、憧れ、だった
―――――だが、いつしかそれが生きる目標となっており
―――――いつしかそれが生きる意味となっていた
―――――そして儂は
―――――俺は強くなっている己に溺れていったんだ
◇
チュンチュンと小鳥が鳴いている朝、その男はズズッと茶を飲み、ふぅと息を吐く。
そして正面を向き、ジトッとした目で木刀を振る幼い少女を見る。
「頑張り屋さんじゃのぅ」
「そうでなきゃ、おじ様を超せませんから」
「カッカッカッ、その意気込み良し。なら儂もちょいと指南してくれる」
男のその言葉に少女はえっ、と驚き男の方を向く。