【短編】高度に発達した魔法は科学と見分けがつかなかった
突如降りて来たトンデモ異世界系のお話。
剣と魔法の世界だから中世ヨーロッパ風だって?
高度に発達した科学が魔法と見分けがつかないならば、逆もあったりして?という発作だよ。
「よくぞ召喚に応じてくれた!」
そんなありきたりな勇者ものラノベに出てきそうなセリフを言う人物を見た面々は唖然とした。
「我が国は魔物の氾濫により危機に瀕しておる。騎士や冒険者が戦っておるが、氾濫の中心にあるのは魔王と呼称される巨大な魔物だ。それを倒すには並の力では太刀打ちできない。そこで、諸君ら召喚者が必要になった!」
そんなテンプレな演説をぶつ人物を見る面々はある違和感を覚えた。
「アレ、立体映像じゃねぇ?」
金髪の如何にもな若者がそう周りへ尋ねた。
「確かに、どう見ても実物じゃないよな」
中年に差し掛かった男がそれに応える。
怪しい目で見る面々に立体映像も気が付いたらしい。
「何だ?召喚者たちの世界にもこのような魔導通信があるのか?」
と、不意に聞いてくる。
「あ、画面から消えた」
非常に長身の少女がそう呟いた。
もし現実であればあり得ない事に、映像の人物は横へ振り向き、上半身だけが消失していた。
そして、戻って来る映像の人物。
「失礼した。で、あるから、召喚者諸君には、魔王を討伐してもらいたい!」
話を戻してそう締めくくる映像。
「そんな事より!さっさと戻してくれませんか!!これからオペなんです!!」
そう叫ぶ綺麗系のお姉さん。失敗しなさそうな人ですよ?
彼女の叫びを聞いて、少しビビった映像は、おもむろに口を開いた。
「召喚者の皆も自分の仕事があるだろう。その事は重々承知している。そのため、召喚者諸氏は実際にはアイソトープだ。え?違う?何?ハァ?・・・、うっおほん。クローンだ」
「陛下!!そんな事を何の説明もなく召喚者たちに告げてはなりませんぞー!!!」
声だけ乱入してくる人物まで居る。
「ハァ?私がクローン?だったらオリジナルは日本に居るの?」
先ほどの失敗しない系美女が呆れ顔で問いただす。
「陛下に代わって説明いたします」
そう言って実体がその場へと姿を見せた。
その人物の説明によると、
「召喚魔法陣をキャンウォンディーという街に出現させ、あなた方4人のスキルを魔法陣が検出し、召喚されることになりました。召喚において、肉体並びに魂に接触し、この地に複製体を顕現させたという事になります」
それを聞いて、ポカンとする若者。頭を抱える中年男、興味を示さない長身女子。
「ハァ~、まさか、SFで言う転送体って言いたい訳?その上で、オリジナルは今頃オペの真っ最中と。フザケンナ!」
と、キレる女医。
「そうなると、俺たちって鉄砲弾。使い捨ての駒って所か。召喚系ラノベでももっと騙すかオブラートに包んで魔王討伐やらせると思うがな?」
中年男も、そう実体に対して問いかける。
「テッポダマ?、いえ、捨て駒など滅相もありませんぞ。流石に召喚だからと、無から有を作り出すと嘯く紛い物の錬金術などでは無いですからな。4人の体は我が国の人物のモノですから、粗略に扱ったりはしませんぞ」
そう聞いて、女医はさらにキレる。
「余計にタチ悪いじゃない。私の体は誰だか知らないが、いたいけな人間から奪ったってんだろう?なら、返すよ」
女医の言葉で実体の話を理解した長身少女も震えている。
「君たちの国では治癒魔法によって死者の四肢や臓器を病気や欠損の生者へと移し替えたりはしないのか?さすがに生きた人間の体を使ってはおらん。召喚の儀には時間がかかる故、召喚母体として登録した者が死ねば、その遺体を魔法保存して召喚に際してシンクロした肉体へと召喚転送しておるのだぞ?」
映像にそう言われて、各々自分の体を触ってみる。
「私、ものすごく背が高い?」
長身少女がそう疑問を発する。
「うわ、〇毛生えてるじゃん!しかも金色!!」
金髪の若者がそう喜んでいる。
「そう言えば、少し若返ったかも?」
中年男も手を見てそう言う。
「ふん、私の20代はもっと肌綺麗だったけどね!」
女医はやはりキレている。
「理解したかね?では、各々のスキルを見ていく」
映像がそう言うと、実体の人物が4人に近づいて来た。
おもむろにタブレットっぽいナニカをかざしながら、実体が口を開いた。
「キャンダマ・サー・アキュイ殿ですな?シーフのスキルを有しております」
金髪の若者はポカンと説明を聞いてから訂正する。
「いや、俺の名前は菅田 正章だけど?」
すると、ニコニコと実体は復唱した。
「はい、キャンダマ・サー・アキュイ殿」
どうやら、本気で言ってるっぽい。
「さて、次の貴方。キャンザー・キュマ・リー殿ですな?ヒーラに加えてマジシャンのスキルも有しております」
女医が青筋を立てて睨んでいるが、敢えて何も言わない。
「次の方。ゴー・ダリ・コー殿ですな?戦士。しかも珍しい、シールド系のスキルです」
長身少女は独り言のように抗議する。
「合田 莉子」
実体は聞いちゃいない。
「さあ、貴方は。タキャハッシー・キャンテゥ・ロー殿ですな?アーチャーのスキルを有しておりますな。しかも、魔法弓に非常に長けておるようですぞ」
中年男も訂正を試みた。
「鷹橋 賢太郎だ」
実体はニコニコ
「はい、タキャハッシー・キャンテゥ・ロー殿」
どうも、悪気はなさそうなので、中年男もあきらめた。
「さあ、召喚者たち、その方達の武具を用意してある。それぞれに合ったスキルのモノをどれでも選んでよいぞ!」
立体映像の言葉によって、どうやらオープニングは終了となるらしいと3人はため息をついた。金髪の若者は小学生のようにはしゃいでいる。
どうよ、このコレじゃない感。
異世界転移の新ジャンルを開いた出だし。
そう、出だしだけ。
もしかしたら、続編を書くかもしれない。