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少女ハ絶望ヲ知ル

 その夜は明るく、そして赤かった。

 爆発音、断末魔、一生聞く事は無いと思っていた音が耳に反響する。

 上を見上げれば赤黒い波動が空を支配し、地上を見渡せば巨大な金属質の刃が、人々が住んでいた場所を瓦礫に変え、血の海を広げていた。

 今いる家にも衝撃が走る。振り替えると巨大な刃が家の半分を粉々にしていた。

 数メートルずれていれば命はなかっただろう。

 しかし不思議と恐怖も安堵も感じない。

 状況が理解出来ない。


 「サタネル!逃げなさい!」


 彼女の母親であるフィアネはシャリファでは異端とも言える黒髪を揺らし、焦りを滲ませていた。

 その目は本気で訴えかけており娘の逃避しかけた意識を引き戻す。


 「これっ、持って!」


 フィアネは非常用に用意されたリュックを半ば押しつけるように私に渡す。


 「...お母さん?」

 「貴方は逃げなさい。良いわね?」

 「えっ......お母さんは?」

 「お母さんは大丈夫だから。」


 大丈夫なわけない。私達が今生きている事さえ奇跡に近い。

 しかしお母さんは私の心配そっちのけでなにやらリュックを漁っている。持ち物の確認をしているのだろうか。

 自分の考えは悠長なのか。

 焦るべき状況なのは確かだろう。


 「サタネル!!」

 「お父さん...?どうして...!?」


 家の外から状況を飲み込めていない私に声をかけたのは彼女の父親、カーシである。彼はこの戦争の最前線で戦っていたはずだった。ここは中央区、戦闘員が戻ってこれる場所じゃない。

 理解出来ない事が多すぎて思考が何度も停止しかける。

 

 「すまないサタネル。説明している時間がないんだ。」

 「わかんないよ...何これ、意味わかんないよ!」

 「今はわからなくていい。生きていればいずれわかる。だから今は生きてくれ。」

  

 混乱する私をお父さんが家の外に連れ出す。そこには2メートル程ののアイアンハートが一騎たたずんでいた。

 シルエットは鳥、白鳥などが特に近いだろう。

 しかしシルエット以外は何もかもが違う存在だ。

 羽毛はなく、代わりに金属質の体が光沢を放っていた。

 翼には機関銃が取り付けられており、殺戮を目的とした存在とわかる。

 

「これに乗れ、安全な所まで連れていってくれる。」


 そう言いながらカーシはそのたくましい首にかけられたネックレスを外し、サタネルの華奢な首にかける。

 カーシの黒髪から色が抜け黄色の髪が露になる。

 代わりにサタネルの黄色に黒が混じった髪が完全な黒に染まった。


「シャリファの外ではこれを外すなよ。...それからこれも付けて行け。」


 一方的に話を進めるカーシは今度は指輪を私の小指につける。

 良く言えば幻想的、悪く言えば不気味な装飾が施された指輪は、まるで私の為に存在しているかの様にすっぽりとはまった。

 



 

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