マルタの街
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2日かけて到着したマルタの街。
正直驚いた!
あの村の感じを想像しもっとこじんまりとした街を想像していたんだけど……街の周りを囲む巨大な壁! これ何メートルあるんだろう……
街に1歩入るとそこは石畳みが敷かれ、石造りの建物が整然と並んでいた!
「疲れただろう、用意されている屋敷までもう直ぐだ! そこでゆっくり英気を養ってくれ!」
正直あまり疲れてはいない、旅の移動はほぼモーリスさんに抱きかかえられていたしね。
今回の旅で苦労したというか……困ったのはトイレぐらいだ。
食事と水分を取ったせいか出発して直ぐにもよおして来てしまい、モーリスさんにその辺でするから下ろしてと言うと副長のマリアさんに叱られてしまった……
マリアさんと数人の女性の兵士さん達が少し離れた場所に恐らく旅用なのだろう、テントの様に周りを囲んだ簡易トイレを設置してくれた。
そりゃそうか……女の子がその辺で用を足す訳には行かない……、ふむ……中々に面倒くさい……
しかもだ! 1年間鎖に繋がれていたせいか、まともにトイレまで歩けないでいたのだ……マリアさんに抱えられながらトイレまで連れて行ってもらう……流石に中までは丁寧にお断りしました!
幸い洋式の座るタイプで助かった……和式の様なタイプだと支えて貰わないと出来ない……
簡易トイレでボロボロのズボンを下ろす……本当に無い……分かってはいたが軽くショックを覚える……
用を足し僕が出て行くと、次々に女性の兵士さん達が簡易トイレに入って行く。
簡易と言っても何度も設置するのは面倒なので、1人が使うとついでに皆用を足すらしい。
因みに男性はと言うと……余程高貴な出でない限り、その辺で済ませるそうだ……ズルい……
まあ、トイレ事情以外は順調に旅を終え100名の兵士さん達と街中を進む。
事前に周知されていたのか、これだけの数の兵士を見てもそれほど騒ぎにはなっていない。
…………ただ
僕を見る目だけは明らかに違う!
恐怖、驚き、蔑み
あまり僕に対し良い感情は持っていない様だ。
僕に抱かれているしろがねも、周囲のそんな感情を敏感に感じとり歯を見せ威嚇し始める。
そんなしろがねを落ち着かせようと頭を撫でていると、モーリスさんが申し訳け無さそうに説明してくれた。
「アマネ……スマン。この国は他国に比べ、魔族や覚醒遺伝者に対する考え方が10年遅れているんだ……辺境の地程まだ……俺もあの村に行くまでまさかこれ程とは思っていなかった。だが出来る限りアマネに不快な思いをさせないよう努力はする。もし何かイヤな事があれば、俺かマリアに知らせてくれ!」
まあ人に嫌われるのには慣れてるしね!
(何かあれば我に命じろ! 食い殺してやる!!)
し、しろがね……過激だよ……食い殺すのは止めようね……後、その威嚇も止めよ……
なぜ? と僕を見上げるしろがね。
ん〜、なぜと言われても……円滑な人間関係を築く為?
(意味が分からん!)
だよね〜、無表情でイジメられっ子だった僕が、円滑な人間関係を築く方法なんて知る訳がない……僕自身嫌われようとして嫌われている訳ではないのだが、元来の無表情のせいで14年間マトモな人間関係を築けないでいたのだ!
親兄弟にさえ距離を置かれていたもんな……
そんな中、魔獣とは言え友達になったしろがね。
大事にしなきゃと思うのだが、魔獣である為か発想が過激過ぎる……
とにかく人を食い殺すのはダメ! まあ本当に生命の危機とかならしかたのない事かも知れないけど……出来るだけ大人しくしててね!
(………………分かった……)
ん〜、返事の前の間が気になるけど……
そうこうしている内に僕が暫く滞在する事となる屋敷に到着……何これ……デカすぎる!!
思わず見上げてしまう。
他の建物と同じ石造りの屋敷なのだが……なんか老舗高級旅館って感じ……
でっかい門をくぐると……10数名のメイドさん? が建物入口に並ぶ。
「アマネ様、良くお越しになられました。わたくしアマネ様付きのメイドラナと申します。マルタ滞在中、アマネ様のお世話をさせて頂きます」
20代前半位かな? ラナと名乗るメイド服の女性が1歩前に出て頭を下げる。
おお! 初めてみる本格的なメイド服!
テレビとかで見るコスプレメイド服とは全然違う!
おどおどしながら僕も「よろしくお願いします」と返事を返す……全く表情に出ないけど……
「ではお部屋に案内致します」
そう言って僕の無表情を気にした様子もなく屋敷に入るナラさん。
相変わらずモーリスさんに抱かれて僕もラナさんについていった。
兵士さん達とはここまでの様で、モーリスさんとマリアさん後数名の兵士さんが後に続く。
長い長い廊下を何度か曲がりようやく僕が滞在する部屋に到着、案内された部屋の扉をラナさんが開けてくれる。
モーリスさんと部屋に入ると……
な、なんだこの部屋は……あまりにも広過ぎる……どこのホテルのスイートルームだ!?
僕が目を白黒させていると、モーリスさんも「ほう!」と声を上げ
「マルタの領主もかなり奮発したようだな! 結構結構!」
なんかご満悦なんですが……
「ですね、これならアマネさんもくつろげる事でしょう!」
マリアさんまで……この人達の基準がわかん……
するとしろがねが僕の腕から飛び降りて部屋の奥に駆けていく!
「しろがね? どうた? 何かみつけた?」
しろがねが向かった方にモーリスさんと見に行く。
パーテーションで仕切られた奥、天蓋付きの巨大なベッドの真ん中でしろがねが飛び跳ねていた……
(こ、これは……たまらん! 決めた! ここは我の縄張りである!!)
呆気に取られるモーリスさんにマリアさん、メイド長のラナさんは……何も言わないけど眉間にシワをよせコメカミをヒクヒクさせている……恐らくだけど、自分達でベッドメイキングしたのをしろがねに荒らされオカンムリなのかな?
「しろがね……そこは多分僕の寝る場所だよ?」
(ガーーン!!)
そ、そんな絶望した顔しなくても……
「クスっ!」
しろがねの絶望した顔を見てマリアさんが思わず笑う。
「えっと、ラナだったかしら? あの子用に小さなベッド用意できる? これぐらい広いともう1つ小さ目のベッドを置いても問題ないでしょう」
マリアさん優しい!
「承知致しました。アマネ様が入浴とお食事を済ませる迄に用意いたします」
おお! ラナさん、仕事の出来る人って感じでカッコイイ!
ラナさんが他のメイドさんに目配せをすると、数人のメイドさん達が部屋を出て行く。
早速ベッドの準備をしに行ったのかな?
ただ……今気になる事言わなかった?
確か……入浴って……
まさかお風呂があるの!?
「あ、あの……入浴って?」
「ああそうか……アマネは風呂に入った事はないんだっな……」
あっ、やっぱりお風呂あるんだ!!
よくある異世界物じゃあ風呂文化は無くて、体を拭くだけって設定をよく見かけたけど、古代ローマとかじゃお風呂あったみたいだし、似たような時代背景とか文化なのかな?
是非お風呂に入ってサッパリしたい!
自分では気づかないけど、恐らく今の僕はかなり臭いはず……1年間鎖で繋がれて色々垂れ流してただろうし……それ考えたら……モーリスさんそんな僕をずっと抱きかかえてるんだよね……
「お風呂はわかる! 入りたい!」
「では私が入浴のお手伝いをさせて頂きます」
ん? お手伝い?
「じゃあ私も一緒に入ろうかしら!」
ちょっ、ラナさん……マリアさん!?
女性と一緒にお風呂に入るの!?
それはダメ!! 身体は女の子になっちゃったけど、中身は思春期の男の子なのだ!!
「ひ、1人で入る……」
「アマネ……風呂の入り方分かるのか? それにまだマトモに歩けもしないだろ? そんな状態で1人で風呂なんか入ったら溺れてしまうぞ?」
僕は抵抗を試みるもモーリスさんに反対されてしまった……
モーリスさんはマリアさんに僕を預け
「じゃあ俺も一風呂浴びるか! 副長、ラナ、アマネの事任せたぞ」
モーリスさんから僕を受け取り、ヒョイっと抱き上げるマリアさん! 女性でも流石兵士! 軽々と僕を抱えている。
「では私達も」
マリアさんに抱えられ浴室に向かう、その後をラナさんと数人のメイドさんが付いてくる。
ちょっと待って……本当にこの人達とお風呂に入るの?
どうせなら男風呂の方に……流石に無理か……
よし! 無心だ! 心を殺すんだ!!
中身14歳、思春期の男の子の過酷なミッションが始まるのであった……
なんて羨ましい……w