白銀の狼
書き溜め多分これで終了……
次話から投稿遅れるかもです……
モーリスに抱えられたまま村を出るアマネ。
これ……100人位いない? ほぼ軍隊じゃん!
そう思える程の規模で兵士が整列していた。
物珍しそうに僕を見る兵士さん達。
「兵士長……そのガリガリの女の子が……確かに目が金……本当に魔族の様だ……」
兵士の一人がモーリスに話しかけ、気持ち悪そうに僕を見ている。
まだ自分の姿をちゃんと確認出来てないけど、金の目ってそんなに気持ち悪く映るんだ!
「そんなに気持ち悪い?」
思わず聞いてしまった……
コテっと無表情で首を傾げるガリガリの少女、自身の不用意な発言にハッとする兵士だが……
なんかモーリスさんが怒ってる……
これは不味かったかな? フォローしとかなきゃ!
「えっと……大丈夫! 言われ慣れているから気にしてない……」
ずーっと言われ続けて来た事だからね!
本当はニコリと微笑む所なんだろうけど、元来の無表情なんで……ごめんね。
なんて思っていたら……
ドガッ!!
その兵士さんが吹っ飛んでしまった!!
モーリスさんに殴られたらしい……
こんな事にならない様にフォローしたつもりだったんだけど……なんか間違えた?
その殴られた兵士さんを無視し、どんどん隊列の中央に進んで行くモーリスさん。
可哀想にと振り替えると、殴られた兵士さんは此方を見て唖然としている……そりゃ突然殴られたらそうなるよね〜
モーリスさん……まだ怒ってるみたい……眉間に皺を寄せたまま隊列の間をズンズン進んでいく。
銀の鎧の集団を抜けたらあの運動会なんかで使いそうなテントが立てられていた。
テントの中にはテーブルと椅子が並ぶ。
その椅子に僕を座らせるモーリスさん。
「アマネすまない。事前に兵に君の事情を話しておくべきだった……俺のミスだ! しかもアイツ……国王の名での保護対象に向かいあの言動……厳罰にしないといけない!」
い、いや……そんな厳罰って……
「さっきも言ったけど気にしてないから……いや、本当に! 罵詈雑言? 嫌味とか……嫌がらせとかには本当に慣れてるんで……」
僕がそう言うと何とも言えない表情になる。
そんな中何やらいい匂いがしてきた。
匂いに釣られ振り向くと、髪を肩口で切り揃えた整った顔立ちの女性の兵士が現れ、恐らくスープかな? それと水をテーブルに置いてくれる、。
「副長のマリアと申します。さっきまでは兜を被ってたんで分からなかったと思うけど、村ではモーリス兵士長の隣にいたんですよ」
へ〜! 女性もいたんだ! 全然気が付かなかった!
「1年間何も食べていなかったんですよね? いきなり固形物はダメだと思い、具を取り除いたスープとお水をお持ちしました。こんな物で申し訳ないのですがお召し上がりください」
確かに具がなく寂しいスープだけどこの匂いは……
スプーンを手にしスープをすくい、ゆっくり口の中に流し込む。
う、うめ〜!!
何せ1年間何も食べて無い身体なのだ!
一口食べるともう止まらない!
一気に食べたら身体に悪いと分かっていても次々と口に運んでしまう。
あっという間に食べ終わってしまった……
コップにつがれた水を飲み干すと急激な睡魔に襲われ……そのまま意識を手放した。
椅子でそのまま眠ってしまったアマネをそっと抱き上げるモーリス。
「副長、直ぐにテントをたため! 出立すぞ!」
「はっ! やはり予定を変更してマルタの街でしょうか?」
モーリスは自身の腕の中で眠るアマネに目をやり
「ああ、こんな消耗した体では王都までの旅は無理だ……彼女の体力が戻るまでマルタに滞在する。至急マルタと王都に連絡を! 我々がマルタに着くまでに受け入れ準備をしておくんだ!」
「はっ!」
副長のマリアは踵を返し伝令の兵士に伝えに行った。
あの具なしスープを貪り食うアマネの姿を思い返す。
モーリスは貴族、ひもじさとは無縁の所で暮らして来たのだ。
戦時中は貴族出身の兵士も全線では兵糧が届かず、腹をすかせて戦ったと言う話も聞いた事はあるが……モーリスが兵士になった頃には既に終戦し、厳しい訓練期間でさえ粗末だかきちんと食事は取れていた。
1年間何も食べれないなど想像も出来ない。
腕の中のアマネを見やり
「この少女のこれからが、これまでの不幸を忘れさせる程の物になる事を心より願う……」
ボソリと呟きテントを後にするのであった。
ヌシハナニモノダ!
ふっと頭の中に声が届き目を覚ますアマネ。
目を開きキョロキョロと辺りを見渡すと、あの銀色の鎧に囲まれている。
自身は相変わらずモーリスの腕の中。
「起きたか、さっき村を出たばかりだ。これよりマルタと言う街に向かう。アマネの体力を考えると辛い旅路になると思うが……およそ2日、出来るだけ身体の負担を軽減できる様配慮はするつもりだ。辛くなったら何時でも言ってくれ!」
街まで2日かあ……
けど今の声……ただの夢?
不思議な夢だな……ただ声だけの夢なんて。
すると突然
「全体止まれ! 臨戦態勢をとれ! 魔獣だ!!」
ま、魔獣! 本当に魔獣いたんだ! 見たい!!
隊列を組む兵士さん達より大きい身体に乗っている馬も一回り大きいモーリス、そのモーリスに抱きかかえられているアマネは、隊列の先で道を塞ぐ狼の大群を見つける事が出来た。
あれが魔獣! 狼の魔獣ウォーウルフって言ってたっけ? 黒い毛並みに顔まわりや足元は銀色が混じる。
狼って図鑑とかでしか見た事がないけど、どっちかって言うとシベリアンハスキー見たいだな! けど数が……これヤバくない? どう見てもこの兵士さん達の数倍いる様な……、これ食い殺されちゃったりする!?
餓死は免れたけど食い殺されるのか……多分痛いんだろな……
「何かおかしい……」
モーリスさんがボソリと呟く。
何が? 僕が見上げると
「ウォーウルフってのはこんな狩りの仕方はしないんだ。ヤツらは恐ろしく慎重でな、普通なら茂み等に隠れて取り囲んでから襲って来るんだ……こんな見通しの良い場所でしかも隊列の前面に……伏兵を隠す場所もないと言うのに……」
モーリスが怪しんでいるとウォーウルフの大群が2つに割れ、他のウォーウルフより3倍はあろうか! 全身白銀の狼が姿を現した!
アマネは目を見張る! あきらかに周りにいるウォーウルフとは纏っている空気と言うかオーラが違っていたのだ!
「あの白銀のヤツ……他のヤツとオーラが違う……」
僕が呟くとモーリスさんと隣にいた副長のマリアさんが目を見開いた!
「あ、アマネ! 君はオーラ……魔力が見えるのか!?」
魔力? あの白銀から出てるのは魔力なの?
「モーリスさんやマリアさんには見えないの?」
2人には見えないらしく首を振る。
ならこの金の目か覚醒遺伝ってのが関係してんのかな?
けどこの白銀の狼、白銀って確かしろがねって言ったっけ、その白銀の毛並みもそうだけど魔力も凄く綺麗だな……
思わずずっと見つめてしまう。
そんなアマネの頭の中に先程の声が響いて来た。
(ヌシハヌモノダ! オウニナルベキモノ八ドコニキエタ)
ん? こ、これテレパシーってヤツ!? しかも王になるもの?
えっと……アマネの事なのかな? よく分かんないけどアマネはもう居ないよ……
頭の中の言葉に頭の中で返してみる。
(モウイナイダト……)
うん、僕もよく分かってないんだけどね……
僕は恐らくアマネは餓死して死んでしまった事、僕は別の世界で死んじゃって、気がついたらアマネになっていた事を白銀の狼に説明をする。
(ソウカ……カノジョ八……イナイ、ナラオヌシガオウニナルベキモノダ!)
ぼ、僕が王になるべき者!?
……多分違うと思うよ?
(…………イヤ、オヌシダ! カノジョ八マケタノダ! セイゾンキョウソウニ……ソシテタマシイノニタオヌシガエラバレタ!)
生存競争……
(ツヨクナケレバオウニ八ナレナイ! イキルノダ!)
生きる……僕あまり生に執着している方ではないんだけど……
てかさあ、君は誰?
(…………ワレハクギン、ナカマハソウヨブ……)
白銀かあ、味気ないな……じゃあさあ、しろがねって呼んでもいい?
白銀の狼は目を剥く!
(ワレハ……シロ……がね!!)
突然白銀の狼、しろがねの魔力が吹き上がる!!
魔力の見えない兵士達は、突然威圧感が増した白銀の狼に警戒し剣を抜き盾を構える!
「あっ! 待って! その狼、悪い子じゃ無いと思うから!」
僕の叫びに兵士さん達は一斉に僕に視線を移す。
わっ! めっちゃ注目されてる……
(くっ、くっ、くっ! その歳で我を縛るか……やはりお主が王となる者の様だな!)
カタコトだった言葉が急に流暢になるしろがね。
え? どう言う事!?
(決めた! 我はお主を守護する者になろう)
僕を守護……いや、結構です……とは言えない雰囲気……
けど……名で縛るか……ありがちな設定だけど……
(主に1つ忠告しておこう、無闇に名の縛りは使わぬ事だ。皆我の様にはいかぬ、縛られるのを嫌う者も多い。特に古き者達は……)
古き者達? う〜ん……そもそもそんな事するつもりも無いし、しろがねの事もただの偶然だしな……
しろがねとそんな会話をしていると、モーリスに揺さぶられながら声を掛けられる。
「おい! アマネ! 聞こえてるか? アマネ!」
ふとモーリスを見上げる。
「大丈夫なのか……その目……」
目? 何かおかしい? よく分からず首をかしげる。
「いや……大丈夫ならいいんだが……」
周りの兵士さん達もなんか引いてる感じがする……
「それで……あの白銀の狼の事なんだが……」
う〜ん……なんて説明を……王が云々は流石に言えないし、言ったらなんか変な事に巻き込まれそう……
「えっと……友達になった!」
「「「ま、魔獣と友達!!!」」」
周りにいる兵士さん達が驚いて一斉に僕を見る。
不味かったかな?
(くっ、くっ、くっ、友達か……今はまだそれでよい)
何がおかしいのか……
あっ! そう言えば、魔獣とはいえ前世も含めて初めて友達ができたかも?
しろがねは後ろを振り替えり首をクイッと上げると、ウォーウルフ達は散り散りに去って行った。
一匹だけ残ったしろがね。
僕の方に真っ直ぐ向かって来た!
警戒しながら道を開ける兵士さん達、その間を悠然と歩いて来る。
改めて近くで見ると……デカい!! 馬上でモーリスさんに抱きかかえられている僕の目線とほぼ一緒だ!
「もしかして……僕達に付いてくるの?」
声を出してしろがねに訪ねる。
僕の質問を聞いたモーリスさんを始め、兵士さん達も目を丸くする!
「お、おい……アマネ……そんなデカい魔獣付いて来ても街には入れんぞ!」
そりゃそうだ! 大パニックになってしまう!
だがしろがねは
(問題ない!)
一言言い残すと…………ま、マジ!!
その巨体がどんどん縮んで行き、まるで仔犬の様な姿になってしまった!
目の前で起こった光景に皆が目を疑う。
仔犬の姿になったしろがねは、ピョンっとジャンプすると僕の胸に飛び込んできた!
驚いて思わず両手で抱きしめる。
うっ! モフモフが心地良い……
「これなら大丈夫?」
「…………あ、ああ……」
目を白黒させ返事をするモーリス。
しかし……魔獣と会話し、しかも仲間にするとは……このアマネ、かなり高貴な魔族の覚醒遺伝かもしれない! それに先程の目、怪しく光るあれは……、城に戻ったら色々調べる必要がありそうだ。
「と、とにかくマルタに向かう、出立するぞ!」
戸惑う兵が多いがマルタに向け軍が動き出す。
そんな中、後方でアマネに忌諱の目を向ける者がいた!
な、なんなんだアレは! あの気持ち悪く光る目に魔獣と会話するだと!? しかも魔獣と友達!? こんなのを城に連れて行って本当に大丈夫なのか?
あのモーリスに殴られた兵士である。
王命とは言え、あんなバケモノを……
兵士長も副長もあの少女にほだされているようだが、あんな巨大魔獣を従える能力……他の魔獣も従えて人を襲うかもしれん! いや、あのウォーウルフの軍勢だけで小さな街や村なら簡単に落ちる!
なんとか事故に見せかけて処分しないと!
兜の隙間からアマネを睨みつけるのであった。
ありがちなテンプレに逃げてしまいましたw