アマネ
暗いお話しになってしまいました……
よろしければ御意見、ご感想よろしくお願いいたしますm(_ _)m
あれ? 死んでないの?
目覚めると見た事のない場所……薄暗いし、臭いし……とりあえずこの臭い場所から離れよう。
チャリっ!
鎖の音がし、首に違和感を覚える。
へっ? 何これ……首輪? しかも鎖で繋がれている?
鎖の長さは1.5メートル程、部屋の真ん中に繋がれていて扉まで辿りつけない……
意味が分からん……どうしよう……
刺されて死ななかっのか? あのままあのグループの奴らに何処かに連れられて来た?
イヤイヤ! 先生も女生徒も居たしそんな事は……
そう言えばお腹のナイフは?
お腹に手を当てると……あれ? 痛くないし血も流れてない……ってかなんだ……このオンボロの服は……
お腹に当てていた手を開き眺めると……
あれ? 僕の手こんなちっちゃかったけ? まるで女の子の手の様な……それにイジメられて出来てた傷も無い……
ゆっくり立ち上がり自分の身体をペタペタと確認する……
マジかよ……
それは……女の子の身体だった……
恐らくやせ細ってはいるが同年代の女子、14、15位であろう女子の身体だ!
考えろ! 考えろ! これはなんだ!
あっ!
もしかして………………転生?
イヤイヤイヤ! 幾ら転生ものよく読んでたからって自分がまさか……
もしかしたら意識を失って見ている夢かも知んない! 恐らくそうだ!!
もう一度横になれば! そう思い横になろうとすると
ズキン!!!
物凄い激痛に襲われる! 頭が割れそうに痛い!
その痛みと共に、今まで自分が経験していない記憶が頭の中に流れこんでくる!!
痛い痛い! 今まで色々なイジメを受けて痛みには強いハズだけど、これは耐えれない!
そのまま意識を失ってしまった。
とある辺境の農村
その日、何故か魔獣の遠吠えが頻繁にこだまする。
その村で1人の妊婦が今まさに子を出産しようとしていた。
「ほれ! もう少しじゃ! 頑張るんじゃぞ」
助産婦であろう年老いた女性が妊婦を励ます。
その建物の外では恐らく父親であろうか? 建物の周りをぐるぐる周り、不安を隠せず時々塞がれている窓から中を覗き込もうとしている。
すると
「ホギャー、ホギャー」
元気な赤ん坊の鳴き声が!
建物の扉が開き
「入っておいで、元気な女の子じゃ! お前さんもこれで父親じゃな!」
部屋の中に飛び込んで行く。
出産を無事に終え、やつれてはいるが幸せそうに自分が産んだ子を抱く妻。
男は涙を流し妻と我が子を抱きしめる。
「頑張ったな! よく無事で産んでくれた! お前もよく産まれて来てくれたな!」
「あなた、元気な女の子よ! 抱っこして上げて」
妻に言われ不安げに我が子を抱き上げる。
その小さいな生命に男は
「うん! これはべっぴんさんになるぞ! お前に似てるしな!」
我が子をを抱く夫を幸せそうに微笑み見つめる妻。
夫は妻に我が子を手渡し、その小さな頬っぺを撫でる。
「ちいせえなあ! お前はこのとうちゃんが必ず守ってやるからな! すくすく育つんだぞ!」
父親に頬っぺを撫でられた赤子が、その声に反応したかの様に目蓋を開くと……
赤子の瞳は……魔族の目……金色であった。
その日からこの親子の悲劇が始まる。
村の者から魔族が生まれた!
まさか……魔族と不貞を……
真っ先に妻が村に魔族を誘い込んだと噂が流れる。
何度そんな事はしていないと弁解しても、皆懐疑の目を向けてくるのだ。
夫は酒に溺れ、妻に軽蔑の眼差しを向け、罵詈雑言を浴びぜかける。
耐えかねた妻は首を括った……
魔族の目を持つ赤子……村ではその扱いをどうすれば良いのか分からない。
捨てるか殺すと言う意見もあったが、魔族から報復されるかもしれない……
村の村長は街の役人に相談をする。
役人が数名村まで足を運び、魔族の目を持つ赤子を検分する事となった。
役人は赤子を検査すると
「これは……魔族と交わって出来た子ではないな。恐らく隔世遺伝だ。どちらかの何世代も前に魔族の血が混ざっていたのだろう。昔は魔族と人は交流があったという、稀だがこういう赤子が産まれてくるのだ。魔族としての能力は育てて見ないと分からん。中には瞳が金色なだけで、全く人と能力が変わらん者もいるらしいからな。」
妻の不貞では無かった!!!
夫は衝撃を受ける!
村の懐疑的な目を向けていた者たちも、1人の女性を追い込み死に至らしめた事に後ろめたさを感じ始める。
「で、ではこの子はどの様に対処すれば良いのでしょうか?」
村長が役人に問うと
「この村で生まれたのだ! この村で育てるべきであろう。お前達の疑いのせいで母親を死に追いやったのだろう?」
そう言い残し役人は村を去って行った。
魔族とはまだ戦時中、厄介事に巻き込まれたく無かったのだ! このずさんな役人の対応が更なる悲劇を生む事となる。
覚醒遺伝者を保護しようと言う動きは他国でもチラホラあったのだが、この辺境の村までは伝わっては居なかったのだ!
役人が去った後、村人と夫の間で諍いが起きる。
お互いの後ろめたさから、誰かのせいにしたかったのだ……
数日後……自宅で首を吊る夫の死体が見つかった。
赤子の扱いに困り果てる村人達。
隔離する事にした。
村の外れに罪人を捕えてる洞窟がある。
そこに赤子を放り込んだのだ!
死んでくれて構わない! いや、むしろ死んでくれたほうがありがたい。
死ねば罪人のせいに出来る。
そうしてその赤子は村から放置される事となった。
数年後
罪を許され洞窟から出てきた老婆……その腕の中には表情の抜け落ちた3歳ほどの女の子を抱き抱えていた。
この老婆は20年もの間、この洞窟に閉じ込められていたのだ!
盗賊の情婦として捕えられていたが、その盗賊が捕えられ冤罪だと分かったたのだ!
街の役人はすぐさま老婆を解放し、金品を与え罪滅ぼしとしたが、この老婆の20年はもう帰って来ない……
その老婆が20年の冤罪の見返りとして求めたのが……この洞窟に放置されていた幼女の解放。
役人は驚く! 村で管理していると思いきや、まさか洞窟に放置していたとは!!
この件で村長初め、村の有力者数人が鞭打ちの罰を受けることとなる。
その鞭打ちが今後この幼女に対し、禍根を残す事となるのだが……
老婆はこの女の子をアマネと名付け、アマネの両親の家に2人で住む事となった。
アマネとは極東の国の言葉で天女を意味する。
この老婆の村人に対する嫌がらせだとも言えた。
老婆はアマネに食事を与え読み書きを教えた。
2人でひっそりと暮らしていたのだ。
村人達は誰ひとりアマネと老婆に関わろうとはしなかった。
それから10年がたち……老婆は死を迎える。
最後にアマネに残した言葉は……
「人を決して信用するんじゃないよ! お前は特別な子だ……絶対に信用……するんじゃ……」
全てを言い終わらずにこの世を去る。
アマネは生まれて初めて涙を流した。
無愛想な老婆だったが、この老婆のお陰で洞窟の中でも生き延びる事が出来、今もこうして生きている。
ベッドで動かない老婆をじっと見つめるアマネ。
どれ程の時がたったのであろうか? 部屋の中が腐敗臭で満たされた頃、扉がガチャと開く。
数人の村人が老婆とアマネの家にドカドカと入って来た。
「く、くっせえ! マジか! あの婆さん腐ってやがる!!」
「流石魔族の子だな! 弔いもしないか!」
アマネには人を弔うと言う知識はない、生まれてすぐに洞窟に放り込まれ、老婆と過ごしてからも老婆以外との接触など皆無だったのだ。
自分達でアマネをそういう風にしておきながら、村人達はアマネに嫌悪感を抱く。
「おい! アレを早く出せ!」
村人の1人が首輪と鎖を取り出した。
「これ高かったんだそ! わざわざ街まで行って買って来た魔獣を捉える為の首輪だ! 多少魔力があっても抑え込むらしい! その金の目、もしかしたら魔力とかあるかも知れないからな!」
ぼーっとそう言う村人を見つめるアマネ。
「けっ! 気持ち悪い目をしやがって! おい! さっさとその首輪を付けるんだ!」
首輪を付けられ鎖で繋がれるアマネ。
自分が何をされているのか理解出来ないでいる。
「これで安心だな! オヤジ達が鞭を受けた報いだ!! お前はこのまま此処で朽ち果てろ!! この疫病神め!!」
家から出ていく村人達。
そこから1年……アマネは放置される事となる。
食べ物も水も与えられず……
だがアマネは1年耐えた。
恐らく隔世遺伝の魔族の血の成せる事なのだろう。
だが限界を迎える。
だんだんと意識が遠のいて行く。
ベッドの上の白骨化した老婆を見上げると、一筋の涙が痩けた頬を伝い落ちた。
首輪に鎖……カタ:(ˊ◦ω◦ˋ):カタ