復活の魔神
エイプリルフール特別企画です。
「ごつい魔法士とひょろい剣士」のみゃあ視点になりますので、先に本編読み終わってからでないと意味がわかりません。
本編中、ほぼマスコットキャラであったみゃあの意外な本音を綴っていますので、お楽しみください。
なお、これでみゃあのイメージが崩れても、作者は一切関知しませんので、自己責任でお願いします。
我は神狼族の覇者。かつて魔神と恐れられ、この地に君臨していた。
数多の敵を屠ってきたが、「勇者」を名乗る人間によって封印されてしまい、百の星霜を経て、ようやく復活を遂げた。
だが、新たな体は、以前とは比べものにならぬほど脆弱だ。
我は魔力を蓄え、再び最強の魔神として返り咲くのだ。
我の縄張りに魔狼が住みついたようだ。
ひ弱な魔狼の分際で我の縄張りに踏み込むとは生意気な。不遜極まりないが、今の我の力では追い立てることもおぼつかぬ。どうしてくれようか。
やはり、我は天に愛されし強者だ。
魔狼の片割れが死んだようだ。ひ弱な魔狼ごときといえども狼の端くれではある。
この血肉を喰らい、魔石の力を吸えば、我が力の回復は早まろう。
1頭を喰らい尽くした後は、もう1頭を食らえるくらいには回復するかもしれぬ。
これはいい。なんと芳醇な魔力をまとった小僧だ。
全身から溢れる魔力を吸い放題とは素晴らしい。
わざわざ吸いやすいように我を捧げ持つその殊勝さも見所がある。
よかろう、お前を我がシモベと認めよう。せいぜい我に魔力を吸わせるよう励めよ。
これは好都合。我に供物を捧げるとは、この図体ばかり大きいのも一応使えるようだ。
なるべく多くの種類の魔獣の魔石を捧げよ。
お前達の魔力でも構わぬ。お前達も魔獣の端くれだけあって、よい魔力を持っている。
おお、封印されし我が体!
シモベども、褒めてやろう!
全盛期の我の体にはほど遠いが、この体に比べれば天と地の開きがある。あの体に戻れれば、元の力を取り戻すのもすぐだ。
シモベどもの供物を待つまでもなく、我自ら魔獣を狩りまくってくれる。
おのれ、なんという屈辱!
我の体が、このような矮小な人間如きに操られるなど!
シモベども! 我の体を奪い返すのだ!
…おかしい。いかに長い間封印されていたとはいえ、シモベどもに傷付けられるような柔な体ではないはずだ。
紛い物か。我の体に似せて作った紛い物…しかし、紛い物にせよそれなりの力は感じるものを。
なるほど、人間如きでは我の体は扱い切れぬというわけか。
なんとかして人間の魂を追い出し、我が取って代わるべきところだが、シモベどもには荷が勝ちすぎるか。
やむを得ぬ仕儀とはいえ、実に惜しい。
この小さな体よりは余程強い体であったものを。
だが、この紛い物の血肉を喰らえば、復活の大きな足掛かりとなろう。
もっと多くの肉を喰らわねば。
シモベよ、よくやった。
これだけの量の肉を喰らえば、我が力を取り戻すに大きな助けとなろう。
かつての力とは比べるべくもないが、復活したばかりに比べれば遙かにマシとなった。
我が力を取り戻すにつれ、シモベどもが捧げる供物による魔力もさほどの意味をなさなくなってきた。
もっと強い魔獣を喰らわねばならぬ。
シモベどもよ、あと僅かの辛抱だ。
我がもう少し力を取り戻すまで、今しばらく励むがよい。
シモベの魔力もますます良質なものとなってきておるし、あとほんの僅かだ。
シモベたちよ、長い間ご苦労だった。
我はこれより自ら魔獣を求め、喰らうことにする。
お前達はお前達の縄張りを守るがよい。
我が力を完全に取り戻した後も、この縄張りは残しておいてやろう。
さらばだ。達者で暮らすがよい。
というわけで、「ごつひょろ」本編終了の数年後、みゃあはレイルの元から旅立ちます。
その頃には、全1mくらいに成長しています。
そして、フォルスには子供がいたりします。