波間の中に
心が体を押しのけるように
もしそうやって疎外され尽くしてしまったら
私は物を言うことはできなかった
こうして貴女に
緩く優しい言葉をかけることも
そうこうしているうちに
季節は流れてしまって
私たちは何度目かの
私たちの時間が蓄積されてゆく
毎日の生活に
楽しさは見いだせないけど
一瞬一瞬の時間を
記憶に焼き入れることはできないけれど
これからも
まるで鳥たちがお互いを寄り添うようにして寝ているように
貴女の羽の一つ一つが
私の肌を撫ぜ
私の羽の一つ一つが
貴女の肌を撫ぜられれば
そうして私たちは
寒さを分かち合い
そうして私たちは
朝を迎える
だから私は考える
心が体を押し出してしまわないように
欲望が貴女との生活を蝕まないように
慎まやかな生活の中に
限りある幸福の中に
さすらう渡り鳥が
いつかの終わりに
その柔らかい体を
濃い草むらの青空の下で
横たえることができるように
そうして長い月日が経って
貴女はどこにもいなくなってしまっても
貴女の魂は循環し続ける
この世界の全てに
それに気づいた私は
今度は海に行こうとする
貴女が愛した
全ての命の源へ
この世界の全てに
私は貴女を探しに行く
巡礼の旅は終わらないまま
遠くでイルカの鳴き声がした