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LIFE series

LIFE -first past-

作者: 工藤将太

どうも!開いて読んでみようと思った方!

初めましての方は初めまして、そうでない方はいつもありがとうございます。

工藤将太です!今回は連載化が一応決まった?作品LIFEの続編かつ過去編を描いた短編となります。

前回のLIFEも是非見てくれる良いかもしれませんね!

舞台はそう遠くない未来の話なのですが時代設定的に未来と言っても今の文明ほど

高度になっていないのでキーワードには抜いています。


ちなみに前回のLIFEからは少し設定を弄っているので、

結構あやふやだったモノががっちりと固まった感があると思います。

特に前回抜けていた重要な部分も練り込んでいるので、面白いかなと思います!

ではではどうぞ楽しんでください!


世界は未だ黒く乾期のないしっとりした肌寒さに覆われている。

私は自分の空っぽになってしまった胸に手を当てて呟く。

その言葉を呟くたびに私の身体は軽くなりそして手には命が握られる。

私の名前はアフィー、18歳。機命者だ。

今はベージュの色の戦闘用ではない制服に似た服を着ている。

機命者とはこの世界に対抗するために

人間たちが作り上げた組織、機命団の団員を指す言葉。

自分自身の心臓を取り出しそれを武器に変えた人型の兵器。

機械仕掛けの怪物を倒すために今日も明日もきっと戦っていく。

それが私たち、機命者……ライファーと呼ばれる者達だ。


むかし世界は青空に包まれてたらしいけれど、

ある日空から謎の生命体が飛来してきて色々あったけれど

それから世界は滅茶苦茶になってしまった。

飛来してきた生物は骸のような顔と機械仕掛けだったのを合わせて骸機がいきと呼んでいる。

そしてそれから色々な技術を使って犠牲もあったけれど、

今はこうして地中の中でひっそりと暮らしていつの日か空に行ける日を待ち望んでいる。

……でも……。


『―――悪いが調整師として告げておく。

 君のLIFEの特徴は”寿命を対価にして治癒させる”だったね?』


―――私は。


『―――機命者は心臓を武器にする。

 リスクとして武器に変えている間は元の身体の中の心臓は

 血液循環装置が代わりになってはくれるけれど、

 それでも、それだけで寿命が減っていくんだ。』


―――知ってる。


『―――そして君の特徴と今の状態を照らし合わせると…』


―――私はもう。


『―――年内中に死ぬ。』







手がかじかむ。

ここは私のお気に入りの場所、ぽつんっぽつんっと光が

暗闇のなかに散りばめられた街を見下ろせることのできる丘の上。

近くには秘密基地の洞窟がある……けれど今はこの丘の上にいたい気分だ。

少し寒い日が近づいているようで吐いた息が白くなるのを見て私は少し困惑する。

分かってはいたことだ。

機命者は心臓を武器に変えたことでとても強い力を得る代わりに、すごく短命であることは。

1年、もしくはそれ以下どれだけ早くに現役引退をしても長く生きられて50年の私たちは

平気で死んでいく。

この前なんかは私よりも8歳も年下の女の子が自身の武器の力の消耗に

耐え切れず若くして”老い”を見せて死んでいった。

10歳の見た目なとても可愛らしい女の子だったけれど、

本人曰く目がぼやけ耳も聞こえず記憶力もなくなって最後はベッドで息を引き取る……。

機命者は武器である心臓が体内にあるうちは急速に傷を治癒させていく。

対外にあるときは代わりに寿命を減らしていくのだが、

どっちにしろこの前できた傷は今も修復できていない。

でも元のちゃんとした人間みたいで少し嬉しい。


「―――?」


ふとアフィーはお気に入りの丘の近くにある、

秘密基地として利用する洞窟の方から何か聞こえた気がした。

ここでくつろいでいても構わないけれどもしも

骸機のクイーンが近づいてきた、となれば私は否応にも行かなければならない。


(寿命が近いからもう戦力外通告受けてるんだけどな…)


そんなことを考えながらアフィーは丘の上からその洞窟へ行くことにした。

……クイーンは骸機の中枢、母体と呼ばれている

司令塔のような役目を担っている大型骸機のことを指す別称だ。

むかし、まだ私が入隊したばかりのころにそれはやってきて

そのクイーンを率いる骸機の群れにはかなり手を焼いたのを覚えている。

今は昔よりも入隊数は増えてはいるがクイーン

来たときの死んでいった機命者は昔の約半数。

現役引退したり戦力外通告を受けた機命者ですら駆り出され、

結果姫クイーン率いる骸機の群れは撤退。

以後数十年、クイーンはこの地中世界、私たちの住む街へと来てはいない。

何が目的で来たのかは分からない、

でもその強さは尋常ではなく一瞬で何人もの骸機を蒸発させた。

一瞬で消えた先輩たちの姿は今も脳裏からは離れない。


「……?誰かいるの?」


洞窟内へと入るとそこは薄い紺色の中で岩石の亀裂から光が漏れている。

この洞窟は昔は出入りが禁じられていた場所で、

今はその禁ずる立場の人が死んでしまったことで事実上放置されているところだ。

そしてこの洞窟は一番地上世界に近い場所でもある。

長い洞窟で一度奥まで行ったことがあるが奥は開けた洞窟で中には

とても大きな白金の躰をした生物が居座っていたため、

きっとこの洞窟は地上世界に繋がっているのだ。

そしてもう一つ理由のようなものがある。

それは光だ。

地上世界がどんな光に包まれているかは分からない。

亀裂は数mmのために入ってくる光は少ないけれど岩石が

何かの鉱石なのか良い具合に反射してこうして

別の光を点けなくても比較的明るくなっている。

……こんな綺麗な光は地中世界じゃ見かけることはないだろう。

それはそうと誰かの足音が洞窟内に入ってやっと聞こえるように

なったのを確認してアフィーは足を進める。

すると足を進めた先に、二人ほど寛げるスペースがあるのだが

そこに何か少女の形をした何かが倒れているのをアフィーは発見した。


「!―――だっ、だいじょうb……」


そして足を止める。

そこにいたのは一見してとても端麗な齢10にも満たない、

けれど綺麗すぎる少女が白いワンピースだけを着て、

背中から機械の羽のようなものを折りたたんで倒れていたのだ。

機械の羽を持つ機命者など機命団にはいない。

いやそもそも心臓としても機能するLIFEは

仕様上、手から離れないようになっている。

つまり背中についている、ということはこの娘は―――機命者じゃない。

機械を持つのはこの世界で知っている限りじゃ機命者か骸機だけ。

アフィーはそう少し考えると目を瞑って首を横に振る。

そして両手に意識を持って呟く。


「―――展開せよ、”LIFE”……!!」


アフィーの両手に黄色い光と共に揺らぐオーブのようなものが現れる。

オーブは両手から離れるように血管のようなもので繋がれている。

すると、ふと倒れていた少女の目が開く。

アフィーの光によって少女の目はコバルトブルーの宝石のように輝き、

白いショートヘアも光によって透き通っていく。

アフィーはそんな別の眩しさに胸がきゅぅっとなるような感覚に苛まれたが、

その想いを振り切ってそのオーブを少女にかざす。

少女の身体はよく見ると右足がなく中からは青い液体が零れていたが、

それがすぅっと光によって再構成されるかのようにして元の足の形に戻っていった。

また複数の切り傷のようなモノも見受けられたがそれも含めて光によって消えて行く。

アフィーは額に汗を浮かべながら光を出し続けて、

しばらくしてその光は消えアフィーはLIFEを仕舞う。

すると少女は目を瞑っていたのか、もう一度目を開けて起き上がる。

なお少女の羽が依然ついたままだ。


「きず……なお…て……る」


「はぁ…はぁ…ふぅ……。大丈夫?」


アフィーはぜぇぜぇと息を吐きながらそう少女に諭す。

少女は驚いてアフィーを見て片言に呟いた。


「おね…ちゃ……んがなおして…くえたの?」


「ええ、私のLIFEでね。

 あなた…名前は?私はアフィー」


「……わたしのなまえ……シロ・クラトラス・ノヴァ」


アフィーは一瞬疑問を浮かべながらも頷く。


「そっ、そう!ゆっ、シロちゃんか!よろしくね、シロちゃん。

 ところで……どうしてここにいたの?」


「……きちゃ、いけなかった…?」


シロは眠いのか瞼を擦りながらそう呟くとアフィーは

いいえ、と首を横にゆっくりと振って呟く。


「ここは危ないから。でもこの洞窟は比較的安全だからいても構わないわ。

 私もよくここに来るから。……ねぇ、シロちゃん。」


「なあに……おねぇ…ちゃ…ん?」


「あなたはがいk……ううん。

 もしかしたら迷子かもしれないわね。

 ここにどうやって来たか分かる?」


アフィーは言葉を言いかけてやめる。

何故かその言葉は問いかけたくなかった。

するとシロはううんと首を横に振ると、


「ここが、どこなのか…わからない……ここは、どこ、なの?」


「―――そっか。迷子……なのか。」


質問がしたい。

この娘に自分が何者なのか理解させたい。

きっとこの娘も馬鹿じゃないだろう。

自分はさっきLIFEを見せたばかりだ。

骸機は人間を食べて生活する、主に人間の脳みその部分を捕食して情報を得る。

だったらこの娘も―――なんて、アフィーの中で邪な考えが沸々と湧き上がるが、

アフィーはその考えを拭う。


「おねぇ…ちゃん、はここに、なにを……?」


「そうね、お姉ちゃんはここに休みに来たの。

 あまり今は外に、友人とは会いたくないから。」


「どう、して?」


「ふふふ……私ね?もう戦えないの。

 もう友人のパートナーとして戦って癒して共に歩むことは出来ない。

 そんな自分が嫌だから今はあまり会いたくないんだよね。

 まぁーもうそろストレングスもここに来るだろうしな……」


ストレングス?とシロは呟く。

アフィーはそう、ストレングス。

私の相棒パートナーで幼馴染の男の子だよ!と話した。

ストレングスは私のパートナー……一緒に戦う相棒である。

ストレングスは初めて男性で機命者になれた唯一の成功例で、

実力もさながら今は既に討滅者という称号を得ている身だ。

機命者になるためには適合試験を受ける必要があるのだけれど、

その成功確率は昔までは女性だけで、男性は成功すらしなかった。

けれどストレングスが失うモノはほとんどなくなったと言って

受けた結果こうして男性初の機命者となっている。

みんなからはfirstファースト

……男性で1番目ということを指して言われている。


シロに一通り愚痴のようにそれを零すとシロはふぅんと、呟く。


「おねぇちゃん、はどうしてその……きめぃしゃ?になろうとしたの?」


「……そうだなぁ……昔ね?とても慕っていた人がいたの。

 ストレングスじゃないんだけど、その人がどうせ死ぬのを待つのなら

 戦って生きたいって言って、色々と私に教えてくれたの。勉強もそう、考えもそう。

 でもその後、機命者の適正があるってストレングスの次に

 男で2番目に機命者になっちゃってビックリしたけどね!」


「その、ひと……にあこがれた?の」


「ええ。憧れていたら機命者になってもっと憧れになっちゃった。

だから私も同じように生きたいって思ってこれを掴んだの。」


アフィーは小さくLIFEと呟くと両手から黄色に光り輝くオーブを出現させた。


「……き、れい」


「シロちゃんも綺麗よ♪……でも、ね?

その憧れの人、実はもういないんだ。」


「?」


アフィーは思い出す。

その憧れの人物は優秀でとても知性が高くていつも何かを考える人だった。

でもあるときから一切、骸機に対して戦闘行為は

行わずその資格を問われたときに笑って呟く。

意味のない残虐行為だ、と。それからその憧れの人物は

みんなにとって裏切者だと称されてこの街から、地中世界から追放されてしまった。

今は生きてるのか死んでいるのかすら分からない。


「生きてるか死んでるかは分からない、けれど多分先生のこと

 だからきっと生きているんだろうなぁって思うよ。

 ―――さてと!そろそろ本格的に見つかりそうね。」


「みつかる、って?」


「この洞窟、表上は出入り禁止らしくていつも丘の上で景色を見てるんだけど、

 それ以外じゃここに大抵はいるってバレてるからね。

 あとは……シロちゃんの姿を見たらきっと驚くだろうし。」


「わた、し?―――もしか、してこのはね?」


シロは羽を見てアフィーに振り向く。

アフィーはきっと勘違いして混乱する、と呟くとシロは

いきなり目を瞑ってしかめっ面になった。

そしてそのままふんばると、羽は動き収納するかのようにしてシロの身体に入る。

これでどう?と呟いた不安げなシロにアフィーは驚きつつも呟く。


「ええ!大丈夫よ、きっとこれでばれな―――?!!!」


と、その時洞窟内にも地震と轟音が響き渡りアフィーは

咄嗟にシロを覆い、庇うようにして守る。

シロはそんなアフィーに戸惑いを感じながらも小声で暖かい、と呟いた。

アフィーは緊急を要しそうな事態に思わず聞いてはいなかった。

そしてその轟音が近くなるとシロは呟く。


「来る」


「えっ―――」


轟音がさらに近くなってアフィーは外に出る。

シロも一緒に立ち上がって遠くの方に指を指した。

そこには忘れることのできない姿とそれの群れがあった。


「ま……さか……」


「……”複製姫レプリカクイーン”」


シロはそう呟く。

だがその言葉はアフィーには届いてはいない。

すると丘に上ったアフィーとシロに一人の人物が近づく。

いち早く気付いたシロがアフィーの服をぎゅぅっと掴むと

アフィーはそれに気付き後ろを見やった。

アフィーは見覚えのある姿に一度安堵しつつ、

シロが隠れようと服の裾を掴むのでアフィーはシロを丘から落ちないように後ろに隠す。


「ストレングス……?」


「いたいた!アフィー!

 心配したよ……ってもう見えてるかい?」


そう言うとその先にはもう既に形として見えてきている

巨躯な躰を目の当たりにできた。

むかし、目の前で先輩たちが死んだ原因。そして沢山の機命者が死んだ要因。

―――クイーンと骸機の群れを。


「むかしもそうだったように、全機命者に通達が入ってる。

 総力戦だ、街の人たちの避難は開始されてるから街の方からでも戦える。

 何が目的かは分からないけど全員生き延びること、

 そして持ちこたえることが最優先だ。

 ……?アフィー、そっちの子は?」


「!……えと、この娘は……」


アフィーが戸惑うと少女は裾を掴みながら具合が悪そうにストレングスを隠れながら見る。


「……シロ」


「シロ、ちゃんか。

 ここにいる、ってことは避難に遅れた子かな?

 一応今にでも避難させることはできる。

 でも、アフィーももう戦えないでしょ?」


「―――えっ」


アフィーは驚いて目線をシロからストレングスに変える。


「確かに現役引退の機命者にも手伝ってもらうけど、

 君の寿命を対価にしての回復はほとんど底を尽きてるんじゃないか?

 微小の回復も助かるかもしれないけど、それでもすぐ戦場に出てすぐに

 死んでしまうかもしれないのは無謀だ。いや、無意味だ……。

 それならそこのシロちゃんと一緒にいる方が良い。一緒にいて避難を開始するんだ」


アフィーは困惑する。

どうしてかシロは俯いたままストレングスは二人を街より

少し離れた方の避難先へと送ると、ストレングスは丘から

既に近づく骸機の群れとクイーンに集中して右手を胸に、左手をすっと下ろして呟く。


「―――展開しろ、”LIFE”!」


そして左手につかのようなモノが作られ、

ストレングスは意識をして刀身を上の方へと延ばした。

すると上向きに刀身が作られたビームサーベルのようなモノが形成される。

それにストレングスはふぅ、と落ち着きアフィーや避難民の

シロのことを念頭に置きつつ来る骸機の群れに備えた。




避難した先のアフィーとシロに既に街の人たちは混乱に陥っていた。

避難先は一種の洞窟に似たような場所で人が横に数十名いても大丈夫なくらい広い。

また天井も高く少しずつ地下の方に降りて行っているのもあるためか、

天井の方へは少し遠くなっているかのように感じる。

しかし混乱によりその場所は渋滞と化していた。

それはむかしに起きた災害と似たようなことが起こる、と

混乱した避難する人たちが我先にと移動し避難場所へと流れて行っているためだ。

端の方から移動するアフィーとシロはそれを目の当たりにして、思わずシロが呟いた。


「……あわれ」


「……?どうして?シロちゃん」


一切の濁りも見せない純真な青い瞳が


「……混乱してるのにこんなことでもっと混乱するのは意味がない。

 ……だから、憐れ」


シロの言葉は先ほどまでのたどたどしい口調ではなくはっきりとした口調で呟いている。

それにアフィーは一瞬驚いたがそれはそれとして話しやすいなとあまり深くは考えなかった。

すると轟音が更に響いて避難する人たちの数名が立ち止まり、

立ち止まったことでそれを追い越そうと踏み越えてでも先へと進んで行っている。

それに思わずアフィーは声を上げたがシロはただただ静かに


「だから、生きられないんだよ」


そう小さく呟いた。

しかし轟音は際限なく響き止もうとはしない。

アフィーが戻ろうとした刹那、轟音が避難場所で最も近くなり天井に光が差し込む。

光の先には骸機が群れをなし、それを必死に食い止める機命者達。


「えっ―――」


光が差し込んだこと、それは天井が崩れたことを示した。

しばらくたってアフィーはシロを抱えて秘密基地の洞窟内へと戻っていた。

近くに骸機はおらず一安心とも思ったが瓦礫が崩れたことで右足を挫いたこと、

そしてここに来る途中シロが襲い掛かる骸機に対して羽を広げたことで、

他の機命者に疑われたことでいくつか傷を負わされていたことを思い出す。

右足の太もも、左腕に投げナイフで切られた痕が残っていた。

痛みを持っていた止血剤で止めながら軽く包帯を巻くとシロが目を覚ました。


「……おねえちゃん……?」


「ああ、起きたのね。大丈夫?」


黙って頷くシロにアフィーは安堵して洞窟内の壁に腰をかけて座った。

そしてはぁはぁと息を漏らしながら痛む傷跡を触る。

するとシロが喋りはじめた。


「ねぇ、おねえちゃん。

 さっきみたいに治さないの?」


「!……そうね、治したいのも山々なんだけれど……」


既に寿命が尽きかけているのかは分からない。

でもこれ以上使えばきっと倒れてしまう。

そう感じてアフィーは力を使わなかった。

するとシロがアフィーに近づいて手を添える。


「ここは、あんぜん、なんだよね?」


「……ええ。」


「だったら、ねてもいいんだよ?」


「……それだったらあなたを守れないわ。」


「どうして、まもるの?」


「……どうしてかしら……でもあなたはまだ弱いから、

 もし戦えてもすぐに折れちゃいそうで……だから守りたいの。」


シロは唇を噛むと呟いた。


「おねえちゃん。わたしが、がいきだってことしってるの?」


「……。……ええ、多分そうでしょう?」


「でも、どうして?どうして……ころさないの?」


「……あなたが、悪い子に見えないから。

 あなたが人を殺した子には見えないから。

 あなたは……まだ……いきるべき、……だから」


とアフィーは眠りについた。

シロはアフィーの胸に思わず手を当てる。

ゆっくりとだが鼓動しているのを感じるとまだ生きている、と理解した。

未だ轟音が鳴り響く中でシロはアフィーを見つめる。


そして何かを考えた後、シロはアフィーの傍から姿を消した。







一方でストレングスは事態の急変に苛まれていた。

それはそのクイーン率いる骸機の群れの予測進路が依然とは違うということである。

今までは何かの目的があってそれを遂行したら帰還する、というのがどの骸機にもあった。

骸機にも知性がある。それはむかしまだ人間と争っていないときに分かった事実だ。

だが今回の襲撃、それの目的は不明瞭のままただ進んでいる。

機命者が近くにいれば群れの骸機がこれを殲滅、

母体となるクイーンは攻撃されてもなお進み続けているのだ。

だからこそ機命者は進行するクイーンに総攻撃をする作戦に変更、

そしてこれに当たっているがそれでも反撃はしない。

群れの骸機ですら何もしないのだ。

だからこそストレングスは悩んでいた。

他に何か目的があるのではないかと。

ストレングスは悩みながら進行を防ぐ機命者のみに反応する骸機を狩り続けていると


『―――通達。No.----- ストレングス

 何名かの機命者が丘の下方面にて同時に死亡が確認された。

 一番近い機命者としてストレングス、これに当たるように。

 何かわかれば本部へと通達をしろ。以上だ』


「げっ、本部かよ……って丘の下ってピンポイントだな。

 ―――行くしかないか。」


本部からの通信を受けてストレングスはそこへ向かう。

するとそこには数名の機命者が自身のLIFEが砕け散った状態で倒れているのを目撃する。

見て分かるように何かがあった。

ストレングスは慎重に足を進めるとそこには見覚えのある姿が立っていた。


「……おいおい、まさか―――!」


その姿に一直線に走ると何も言わず自身のLIFE、ビームサーベルをその者にぶつける。

ぶつけられた人物はよろめくがすぐに何か武器のようなモノで応戦した。

そしてその人物は紅いコートを揺らして眼鏡をくいっと上げる。

ボサボサの白髪が風で揺れ殺意に帯びた目がストレングスを睨んだ。


「―――ああ……ストレングス。お前か……」


「裏切者、ニコラス……どうしてお前がここにいる……!」


「俺はお姫様の警護に来ただけだ。

 だがその肝心のお姫様は見ての通りこいつらが襲撃してくれたもんでね?

 まぁ下がってなさいとか言ってたし多分避難民と勘違いしたんだろうさ。

 ……せっかくの白衣が台無しだ。」


白衣は所々が黒くなっている。

そしてよく見ると赤だと思っていたコートは外面だけで中は白かった。


「……それ、血か」


「ああ、こいつらの血だ。

 別にお姫様は食事をしたがらないのでね?

 俺は俺でただ機命者の頑丈さを体験したかったんだよ。

 で体験してたらこのざまだ……で。ストレングス?俺を殺しに来たのか?

 殺意丸出しだぞぉ……ま、俺もか」

 

はははと笑うニコラスは殺意の籠った目でストレングスを

睨み、ストレングスも同様に睨み返した。

ニコラス、彼は元々機命団に所属していた機命者である。

むかしクイーン襲来時も前線で活躍した元英雄だ。

今はある事件を受けて裏切者とされ地中世界から追い出された聞いてはいたが……


「まさか生きてるとはな。

 ……そんなことはどうでも良い。僕は……いや、

 俺は!お前を、お前だけを殺すために!!

 今も生き続けてたんだ!あのときに殺せなかった分、殺してやる……!」


「君は殺意の中で生きる方がより生きてるな。

 嬉しいよ、あのとき君にすべてを押し付けて

 君の家族を殺したのはナイスアイディアだったかな?」


ストレングスがニコラスに瞬く間に近づきビームサーベルを振り回し首へと薙ぐ。

だがその薙いだ刀身はニコラスのLIFEと思わしき短刀で防がれる。

そして弾いた瞬間ニコラスの短刀は風を文字通り切り裂き、

その風圧がガードするストレングスの腕を深々と切り裂いた。

腕は落ちなかったが次同じ攻撃を喰らえば落ちるだろう。

だがお構いなしにストレングスはニコラスに攻撃を仕掛ける。

そんな中、ニコラスはふと丘の上を見上げて笑みを零した。

そして何かを呟くとその隙に攻撃するストレングスの攻撃をするりと躱して攻撃を再開する。

攻撃を止まず両者汗を垂らしてもストレングスは依然殺意の中、対峙するニコラスはそれを余裕そうに躱していく。するとストレングスは何かに気付き後ずさって距離を取る。

ストレングスははぁはぁと息を漏らしながらハッタリだと自分に言い聞かせながら前を向く。




―――だが声がそれを消し去った。




「にっ、ニコラス先生……?」


「久々なアフィー。結構経ったんじゃないか?実に10年ぶりだ。」


その声に思わずストレングスは立ち止まり後ろを振り向くと

少し傷を負ったアフィーがそこに立っていた。


「どうして……ここに……!」


「……先生、あなたは……」


「感動の再会、と言いたいところだが俺もやることがある。

 ―――二人共々、死んでくれるね?」


そう言ったニコラスはアフィーとストレングスを捉え短刀を握り攻撃を再開する。

その攻撃に思わずアフィーはLIFEを展開し、ストレングスは舌打ち混じりに応戦した。

だが攻撃の一つ一つが重くそれを躱しきれず怪我をするストレングスを

瞬時に治していくアフィー、だが怪我の治りは一瞬で治ることはなく徐々に

といった感じで力の使いにも限界があるように見えた。

そのときアフィーは洞窟にいた女の子、シロが丘の上から下に来ていたことに気付く。

シロは戦う三人に近づくようにして歩いている。

するとニコラスがニヤッと笑って攻撃を止めてシロ目掛けて短刀を飛ばした。


「―――ちっ!てめぇ!」


ストレングスが気付き間一髪のところで弾くが飛ばした短刀は血管で繋がっているのか、

するするとニコラスの下へと戻る。

そのときストレングスに通信が入った。


『緊急通達!緊急通達!全骸機が機能を突如停止!

 至急機命者は全骸機を解体せよ!!』


その通信は大きい声だったせいかその場にいる四人に通達されたようなものだった。

するとニコラスは笑ってそれに気を取られているストレングスを他所にシロ目掛けて、

今度は短刀を薙いだ。


「―――!」


だけれどストレングスは瞬間的にシロを見る。

そしてその表情を見てストレングスは守るのをやめてしまった。

だがアフィーだけはそれをしなかった。


「―――」


「―――っ!おい!アフィー?!返事をしろ!アフィー!!」


「……あ……あの子は……?」


アフィーは息を絶え絶えにして呟いた。

アフィーが心配した子、シロは生きている。

ニコラスは驚き舌打ち混じりに攻撃を再開しようとして何かを見た後、

ははっと笑い闇に消えた。そこには何もおらず姿どころか気配すらも消えていた。


「ああ、大丈夫だ。生きてる。」


残念なことに、そう小さく心の中でストレングスは呟いた。

するとアフィーは朧気に良かったと呟く。

そして笑みを浮かべてそのまま両手が崩れ落ちた。

両手に展開していたLIFEは光を失い、そのままガラクタのように

コロコロと両手から離れてシロの近くに転がる。

シロがそれを拾った矢先ストレングスのLIFEがシロに向けられた。


「……」


「ビビる気もないか?お前は……なんだ?

 人間でもなければ骸機のようなあんな化け物にも見えない。

 ……もう一度言う。お前はなんだ?」


「―――私の名前はシロ・クラトラス・ノヴァ。

 ノヴァ一族の娘―――骸機よ」


「ニコラスとはどういう繋がりだ?

 ―――どうしてあのとき笑った?」


アフィーが庇う瞬間に見せた表情は笑いだった。

だからかその笑いにストレングスは嫌悪感を覚え守ろうとはしなかった。

そして今ストレングスはビームサーベルはシロの頬をかすめている。

だが依然としてシロは動じない。

睨むわけでもなく怒ることも悲しむことも憐れむこともなく、

ただストレングスを見つめた。


「ニコラスは私の友人。

 でもどうして私を殺そうとしたのかは分からない。

 きっと私とあなた達とは面識がない、そう思ったんじゃないかしら」


「……そうか。俺はお前を殺す。だけれどアフィーが

 お前を生かしたことにはなにか意味があるはずだ。どうせ気付かれてたんだろうさ。

 ……だからこの場では殺さない。次だ、次に会った時、俺はお前を殺すだろう。」


ストレングスはLIFEを仕舞いアフィーを抱える。

するとシロはアフィーのLIFEを戻そうと動くがストレングスは鬼の形相でシロを睨んだ。

シロはアフィーのLIFEを手に持つとストレングスに背を向ける。


「ねぇ、お兄ちゃん。

 一つ言ってもいいかしら。

 骸機のすべては人間を食べないんだよ?」


「……」


「私も食べたことがない。だって気色悪いから。」


「……」


「私は……私のやりたいようにする。もしそのときはお兄ちゃん、あなたに初手を譲ってあげる。」


ストレングスは答えずただそのままアフィーを抱え丘へ、

シロはその二人を見送ることなくその場から姿を消した。







「どうして俺にわざと攻撃を仕掛けろ、とそう言ったのですか?姫」


「……ただ私は純粋に人が、自分も死んでしまう状況なのに人を助けることがあるのか?

 それを観察したかった。だから私は何度も彼女が死なない限りは私は弱者を演じた。」


「怖いなぁ……姫、あなたは残虐性を秘めている。」


「違うわ、純粋に回答が欲しかった。

 だからこそ敵意もなければ味方するとも言わなかった。

 それにもしあのとき守っていなければ私の自動攻撃機能でみんな死んでいたわ。」


シロは背中から翼を生やしそのまま腕に機関銃のようなものをニコラスに見せ、仕舞う。

そしてすーっと地面に足をつけずに移動していく。


「でも、やっぱり複製機体レプリカは邪魔ね。

 考えついた骸機は死ぬべきよ。

 だって私すらも狙ってきたから隙を突かれて右足なくしちゃった。」


「じゃあその回復はアフィーに?……だとしたらあなたは残酷なお方だ。

アフィーの回復は寿命をそのまま対価にする。

それになくしたとなれば血の色も見られてたのでしょう?

だったら尚更あの娘は意味の分からない子だ。」


ケラケラと笑うニコラスにシロはいいえ、と首を横に振る。


「おねえちゃんはずっと純真なままだった。

 私を骸機だと知ってもなお放っておけなかった。

 それで回復して、自分は死ぬような目に合って……ニコラス、私決めたわ」


「何を?」


「……私は骸機の中のクイーンとして骸機と人間を結ぶ。

 おねえちゃんが見せた希望を信じていく。」


「あれが希望、ですか。

 笑わせる。姫、俺も人間ですけど人間は良いように使えればそれでいい存在だ。

 いつかあなたを裏切ると思いますよ……ストレングスのように。」


シロは青い瞳を瞑ってそして再び見開いてそれでも、と

ニコラスにその姿を見せるとニコラスはただ笑って呟く。


「骸機は元々人間の情報を読み取って作られた存在だ。

 だからこそ人間味があるというかなんというか……まぁなんにせよ、

 他人から与えられた希望ではなく、

 あなたが信じることにした希望ならそれは意味がある。

 お付き合いはしますよ、姫」


ニコラスはニヤッと笑って跪く。

それにシロは見て笑い、そして足を進めた。



途中途中カットして12000字も書いたのは流石にびっくりしちゃいました。

ちなみにカットせずにFullで載せると1.5倍になるかもですw


というところで話はどうでした、でしょうか?

結構長々と書く気もなかったんですが短編にしては長すぎたかなとも思っています。

ではここまで呼んでくださりありがとうございます。

下記キャラ紹介!(載せる前に書いたので少し違ったりするかもです)






ストレングス



性別:男 年齢:24歳前後 身長:170cm 趣味:武器の調整・改良

性格:楽観的、素直、利他的 

武器:ビームサーベル(刀身は上下逆のどちらか一方で出力可能)

容姿:茶髪、髪は長めだが束ねるほどではなく少しボサボサ、眼は黒色

体型:着痩せするタイプ、かなり筋肉質

概要:”失うモノはもうない”という理由で初代の男の機命者となり今もなお在籍している

   前回載せたLIFEの登場人物である、ユキの持った討滅者の称号を

   軽く超えた先にあるある役職と称号を得ているが本人は

   これをどうでも良いと一蹴している

   現在自分に課している目標はニコラスの殺害と何かしらの因縁がある模様

   6年前に好きだったパートナーであり幼馴染を失っている。


アフィー


性別:女 年齢:18歳 身長:150cm 趣味:

性格:前向き、ポジティブ、社交的 

武器:寿命を削りその分だけ回復可能なモノを回復するオーブ

容姿:水色の長髪、眼は藍色

体型:平均的、胸はCカップ程度

概要:ストレングスの幼馴染みで持ち前の支援武器を用いてほとんどの死傷者も出さずに

   戦線を維持していたが、寿命が尽きかけてきたことが老いとして出てきたことも

   ありその月の終わりで現役引退をしようと考えていた矢先に傷を負ったシロの姿を

   見て骸機と知ってもなお治療、その後ストレングスとニコラスが戦い

   その最中シロを庇い命が尽き果てた。


ニコラス


性別:男 年齢:40歳~ 身長:170cm程度 趣味:人間観察

性格:理性的、利己的、冷徹、執念深い

武器:空気の振動を刃の切れ味同様にすることのできる短刀

容姿:白髪、髪型は後ろで髪を束ねるほど長い、眼は青色、目つきが鋭い

体型:平均的ではあるが筋肉質(露出する肌から血管が少し浮き出て見える)

概要:骸機との平和を求めたがために裏切者扱いを受けて夜討ちに遭い

   骸機側へ亡命した歴代3人目となる男の機命者

   同胞である骸機にされたことと同じ報復を行い

   数々の機命者を殺し尽くしている実力者で骸機側で言う討滅者の扱いを受けている


シロ・クラトラス・ノヴァ


性別:女 年齢:14歳(first past時、8歳)身長:135cm 趣味:

性格:おっとり、温厚、甘えん坊、抜け目がない 

武器種:すべての骸機に対して絶対的権限を持つ、多数殲滅型骸機

    一点から球状型に区別可能(殺すか殺さないか)の攻撃を放つ。

    また1対1の単騎単独型に変化も可能で弱点がない


見た目:

通常時:透き通るほど白い髪にコバルトブルーの瞳、瞳は宝石のような輝きを放つ。

    幼少期はショートヘアー、現在はセミロング

敵対or警戒時:赤眼の人間

通常or回復時or無警戒時:白と灰色の機械の翼が背中から生える(通称、天使の羽)

敵補足時:両手が機械腕かつ幾つもの輪が何重にも重なる

敵戦闘時(多数型):全身に骸機をパーツごとに何体も合体させた所謂、装甲状態に

敵戦闘時(単騎型):人間型に加え瞳は青いまま、動きやすい装甲を身につける。



概要:

ノヴァ一族の娘、(クイーン)としての権限が与えられている。

性格はおっとり、温厚、甘えん坊…と些か子供だが情報の演算能力が高く抜け目がない。

そんな性格が功を奏して支持は熱く裏切りがほとんどない。


幼少期人間のいる地下へと落ちて怪我を負い、迷子になった経験がある。

その際に助けたのがアフィーという機命者だった。

彼女はシロが骸機であることを承知で自身の力を使い怪我を完治させ、友人となった。

しかしストレングスとニコラスとの戦いで自分を庇い死亡(寿命が尽きて死亡)し、

その後に死んだアフィーを埋葬するためにやってきたストレングスと邂逅。

だがアフィーが生かしたのには意味があるとして戦うことなく、シロは生還した。


以上の過去があったため自分たちを殺す者もいれば、

温厚な人物もいるということをその身で感じたシロは

人間達との調和をどうにかできないかと考えている。

真面目な性格で抜け目がないが少し天然である。


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