〜親子喧嘩の仲裁?〜
「はぁ・・・・どう言えば良いんだよ・・・・」
「なんじゃ?」
「ん?・・・・ベルブスにどういえばいいかなー?ってさ」
「そんなもの素直に述べればよかろう?」
「だけど・・まぁいいや・・」
ベルブス一家が泊まっている宿泊施設に着く。
呼び鈴を押すと、中から奥さんが出迎えてくれた・・・奥さん・・・目の周りが赤いんだけど・・・・
「いらっしゃいませ・・・どうぞ・・・」
「・・・はい・・・」
「うむ、入るぞ」
中に通され、席に着く・・・
「夫を連れてきます。」
「はい・・・」
奥さんが奥へ
俺と白氷だけの沈黙の時間が暫く続く・・・・・居心地が悪い
しばらくすると、奥さんに支えられ足を引きずるように部屋に案内されたベルブスが入ってくる。
「ニック殿・・・お恥ずかしい姿を見せてしまいすみません。」
・・・・ぇー・・・即行糾弾されんのかと思ったのに・・・・・
「ベルブス君・・・一応話は聞いてるよ・・・・当事者のカルキン君にはまだ聞き取りはしてないけど・・・それより・・足大丈夫か?」
「ん?・・・ああ・・これは、ちがうんですよ・・・・昨日カルキンとやりあった後に・・その・・・階段でコケましてね・・・足首を少しやってしまったんです・・・」
・・・・・マジかよ・・紛らわしい・・・・
「それで?カルキン君はなんと?俺は昨日連絡が来れば迎えに行くといったっきりでね・・・」
「そうですか・・・カルキンもそう申しておりました・・・・」
「で?・・その・・決闘みたいなことに成ったんだって?」
「ええ・・ただ・・私も軍籍から遠のいて久しい身ですので・・・やはり、小さいとは言え、それなりに訓練を積んだ我が子の一撃にも耐えれないとは・・・・お恥ずかしい限りです・・・」
「・・・・で?結局どうしてこうなったの?」
「そうですな・・始め夕方くらいにカルキンが兵士に送られ帰宅したのですが・・・」
「うん」
「其の際、何時になく思い詰めているようでしたので・・・・少し問い詰めたのです」
「なるほど・・・」
「ニック殿・・・カルキンは・・・・騎士を目指していたわけではないのです・・・・」
「そ~だろうとおもってたよ?」
「そうなんですか?」
「うん・・だって・・騎士に成りたいと言っては、武術の練習もそれほど進んでないようだし・・さらに親元を出ることもなかったでしょ?」
「騎士であれば・・貴族からのほうが有利だからと・・私は思っていたのですが・・」
「そうだけどさ?やりたいことが在って・・・それに向かって進むでもなく・・・足踏みしてるのは違うだろ?」
「・・・・そうですか・・・そうかもしれませんね・・・」
「まぁ・・・この後カルキンには話しきくけどさ?・・・正直親子間のもんだいなら俺は出たくないんだ・・でもカルキンがうちの兵士ないし・・何かに成りたいというのなら・・・話が変わってくるじゃん?」
「・・・・・・・・・」
「ベルブス君・・カルキンはなんて言ってたの?」
「・・・カルキンは・・・今まで見たことのある軍ではないと・・こんなに統制が取れて・・・作戦を遂行出来る力がある軍は今まで見たこと無いと・・・そして・・・自分も其の一員に成りたいと・・・」
「やっぱりかぁ・・・そーなっちゃったかぁ・・・・」
「あの・・やっぱりとは?」
「ベルブス君・・ウチの軍隊はさ?剣で正面からやりあったり、正々堂々みたいな事はしないんだ・・・夜襲だって奇襲だって・・・なんだってやるんだよ。非人道的なことはまずやらないけど・・・まぁ、人殺しはするんだ・・・そうも言ってられないけどさ?」
「・・・・騎士とは・・かけ離れてますな・・・・」
「そうなんだ・・・まず装備も違う・・・ハッキリ言うと・・・・・一部隊で数万を制覇できるんだ・・・」
「・・・・・・そ・・そんなに・・・・・」
「自分達の根城から離れた場所に陣地をくんで・・・そこから更に派兵してのっぱらでの多数対多数の戦闘なんて・・・しないんだ・・・それじゃ人を道具扱いだろ?」
「・・・・」
「それに・・・大隊を組んでの多数対多数の戦いでも・・・・・今の王国ないし・・この大陸の人間の文明レベルからすると・・・・近づくことすら無く・・・絶命するよ?」
「・・・・近づけぬと?」
「・・まぁ・・いいや・・カルキンの話だったよね?」
「・・・・」
「で?カルキンはウチの軍に入りたいと・・・・」
「はい・・・」
「ベルブス君は?どうおもってるの?」
「やはり・・家督の問題もあり・・・・・・・・怪我や死亡などは・・・・避けたいですから・・・」
「んー・・・そうか・・・まぁ、親としての配慮ってやつだな・・だが・・・カルキン君の気持ちを理解するのも親の勤めだろ?・・押し付けてばかりでは・・・互いに理解はできないだろうに・・・」
「そうなのですが・・・私は・・・今までそうやって生きてきたので・・・」
「まぁ・・この際だからハッキリ言っとくけど・・・・・・・家督と言ってるが・・・ウチの・・レムリアには貴族階級なんてものは排除してるんだ・・・農園もしかり・・もしウチに入るなら・・・貴族では無くなるよ。」
「・・・・・・それは・・聞いていました・・・・ですが・・・・」
「それと、家督と言っても農園の主は違うものがやると思う・・・・・ベルブス君はアレだったよね?歴史家に成りたかったんだろ?」
「!・・・・・・・・・・ええ・・・・・・・・」
「今からでも遅くないんだ・・・・ベルブス君・・・・今の人類の歴史ってのは、隠蔽されたり、途絶えて後を辿れなくされてるんだよ・・・・ちゃんとした歴史なんて・・・・きっと、無いのかもしれないが・・人類が持っている歴史より・・ウチのほうで学んだほうが正確なものが分かるはずだよ?」
「!・・・・・・・そ・・そうなのですか?」
「あれだろ?唯一神がこの世界を作って・・人間を作ったものも唯一神・・みたいなことなんだろ?」
「ええ・・まぁ・・少し違う点はあるのですが・・・そう教わっています・・・・」
「・・・・・・・・・・まぁ、それは全部ウソだからさ・・・・・・・・ウチの歴史の方で学んだほうが良い・・・」
「・・・嘘?・・・・・・・・なぜ言い切れるのですか?」
「いいかい?これは、ここだけの話しとして聞いてもらいたい・・・・・」
「・・・・・はい」
「そもそも、人類ってのは・・・・・・・・神様が作ったものではないよ・・・さらに今の人類は・・多分・・3回か4回目の人類だ・・・・」
「・・・・・・・はぁ?・・・・・3回?4回?」
「うん・・・もっと前に・・歴史以前にも人類はいたんだよ・・・・今よりも進んだ文明のね・・・」
「!・・なぜ?・・なぜそんなことが言えるのですか!?」
「・・・俺の制約に関わることだから言葉を濁すが・・・・・生き残りがいるからだよ」
「・・・・・・!・・・・・・・・・い・・生き残り・・・・・・」
「それに可怪しいとは思わない?ウチの国・・・・・・」
「・・・・そうですな・・・・こんなに魔道具がそろっていて・・誰も魔法を使っていない・・・・・」
「そうそう・・他にも明らかに文明レベル違うよね?」
「・・・そうですな・・・・・・・明らかに違う・・・・まるで、未来の世界のようだ・・・・・・ん!!?!」
「気づいたかい?」
「・・・・・・・では・・・・・・・・ニック殿は・・・・・・」
「俺はまぁ・・・・・違うんだけどね・・・・・・違うってことにしたほうが良いかな?」
「・・・・なるほど・・・・私が教わってきた知識や歴史は・・・・間違いだったということですな?」
「んー・・間違いってのも違うんだけど・・・・・まぁ・・・本当ではないね・・・・其のへんもさ?ウチならわかるんだよ・・・・正式にレムリアの一部になるなら・・・色々勉強も出来るし・・それに関する職にもつける・・・・・楽しくワクワクしてすごせるよ?」
「たしかに魅力的なお誘いです・・・・・・・・私個人であるなら・・即座に回答していたでしょう・・・ですが・・・」
「奥さんや子供かい?」
「ええ・・・・」
「・・・じゃぁさ?奥さん呼ぼうよ」
「!・・・妻は・・・・妻はあまりこういうことには・・・」
「ベルブス君・・・常識・・・常識は無いってことにしよう?ウチの国はさ?女性が強いんだw女性だって出来る仕事も有れば、男以上のことがいくらでもできるんだよ?」
「・・・・つまり・・男尊女卑は可怪しいということですね?」
「そうそう・・・人間、十人十色・・・なにが得意でなにが不得意かなんて・・・・其の人次第なんだ・・・だから・・奥さんの話も聞いてあげなよ?」
「・・・わかりました・・呼びます・・・」
そう言うとベルブスは立ち上がり・・・ドアの方へ向かった・・・そしてドアを開けると・・そこには奥さんが立っていたのだ・・・
意表をつかれたのか、ベルブスは少し硬直したが・・・気を取り直し・・・何も言わず奥さんを部屋へ入れて、座らせた。
「奥さん・・はなしは聞いてたね?」
「はい」
「ベルブス君はさ?家督と言ってるけど・・・・・家督が無くなる状況なんだ・・・」
「はい」
「そこで、ベルブス君はもともとやりたかった事・・歴史家になれる道が開かれたんだけど・・足踏み状態なんだよ・・・・・」
「はい・・・・」
「そしてその足踏みは・・・家族・・・・・・みんなが枷に成っている・・・・」
「はい・・・」
「そこで、俺はさ?奥さんの意見もききたいんだ・・意見じゃないな・・・奥さんのやりたい事は何だい?」
「?私ですか?・・・・・・・・・私は・・・・・」
奥さんはチラリとベルブスを見る・・・ベルブスはじっと腕組みをして目を閉じている・・・
「私は・・元々、廃れた貴族家の末席でして・・・・やりたいことと言われましても・・・・あまり思いつきません・・・」
「そうかい?なにか得意なことや興味のあることはないの?」
「・・・・・はい・・・・・・・・・・・」
またチラリとベルブスを見る・・・・
「ミィシャ・・・・お前は・・結婚以前・・・・機織りが趣味ではなかったか?自分の作った生地を使い・・・・タペストリーまで作っていたではないか・・・・・」
「貴方!・・・・・・・」
「奥さん・・・この場はちゃんと腹を割って話す場だよ・・・・恥ずかしいとか何だとか枷はないんだ・・・好きに喋ると良い・・・・気持ちを聞かせてほしい。」
「・・・・・・・はい・・・・」
「私は・・・・その・・・・・余り裕福では無い貴族家でしたので・・・近所の機織りのおばあさんより・・布の作り方・・・生地の作り方・・・・蚕の育て方まで・・・・教わりました・・・そして、自分で作った生地に刺繡を施すのが・・・・・日課になりまして・・・・・・好きなことといえば・・其のくらいでして・・・・」
「ほう!立派なことじゃないか!すごい!・・・・全部一人でできちゃうの?」
「!・・・ええ・・・できます・・・・蚕の飼育には・・・少し手が離れておりますので・・・・わからないことがあるやもしれませんが・・・」
「だってよ?ベルブス・・・・・どうだい?」
「・・・・・・」
「貴方・・・・」
「もしかして・・・ベルブスには話してないの?」
「・・・ええ・・蚕やその・・・・・・・余り貴族のやるような仕事ではなかったので・・・」
「なるほど・・・・ベルブスさ?・・どうだい?いままで知らなかったんだろ?」
「・・・いや・・・・知っていた・・・・・・・・ミィシャ・・・済まない・・・義理の父から・・色々聞いてはいたんだ・・・」
「貴方!」
「じゃぁさ?・・・・奥さん・・・・やりたいこと・・見つかったじゃん?」
「・・・・はい・・・・・」
「ベルブスもさ?・・・・こうなったんだ・・・・・・良く話したほうがいいんじゃない?オルキンだって学者に成りたそうなんだろ?ミリアはしらないけど・・・・」
「・・・・・そうだな・・・・・・・・一度しっかり皆と話すことにしよう・・・・・」
「うん・・・そうしてくれると助かる・・・・・じゃぁ・・カルキンの事は・・・・・取り敢えずもう一度家に返すからそん時に話なよ・・・ゲンコツ抜け出ね?」
「そうだな・・・彼処まで真剣なカルキンは初めてだった・・・・・しっかり話さねばなるまいな・・・」
「うん!・・・じゃぁ・・そういうことで・・・・・・・・奥さんとももう少しちゃんと話しておきなね・・オルキンともね・・・・」
「そうさせてもらおう・・・」
「じゃぁ・・これからカルキンとこ行くんで・・またね。」
「ああ・・・済まなかった。」
「じゃぁねー」
そう言って、俺はベルブスの宿泊施設からでて、其の足でカルキンの元へ・・・・・
終始、白氷は無言であったが・・・・・