〜決着なんだけどねー〜
(姫さん!・・マーリンが侵入した!気をつけろ!・・今・・一階を進んでるようだ!)
(ふむ・・・やはり一筋縄ではいかぬか・・・わかった・・・マーリンとはそれほどの者か?)
(ああ・・恐らく・・導師級・・・其処イラの魔法使いとはわけが違う・・・かなりやると思うが・・・)
(ふむ・・相わかった・・・であれば、妾が対処しよう。)
(済まない!・・すぐに追いつく!)
(まぁ慌てるでない・・・気をつけて向かってくるのじゃぞ?)
(ああ・・)
・・姫さん・・アンタは、分かっちゃいない・・・・導師級は一人で、戦場を死の海に出来るやつのことだ・・・人間兵器・・簡単に言えばそういうことだからな・・・・姿を隠すのも朝飯前・・・ぬかったわ!
ボークスは持ち前の機敏さを生かし早急に走り出した。
庭は広い・・・ボークスの足でもそれほど直ぐに追いつくわけではない。
・・姫さん・・やばくなったら逃げろよ!・・・ニックがもうすぐ着く・・それまでは・・・
「ふんw・・馬鹿めが、分かっている待ち伏せに付き合うほどワシは愚かではない・・」
「マーリン様!・・待ってください!・・・」
「・・・お前は、もういらぬ・・そこで固まっておれ・・・・・【ペトロ・アイ】」
「!・・マーリンさ・・・ま・・・・」
ゴトン・・・
ふん・・この程度で音を上げるとは・・・・最近の若者はだらしない・・全く・・
・・さて・・・【エコー・ロケーション】
ふむ・・・ベルブスは二階か・・しかも何人か一緒に居るようだな・・
反応からすると・・男が・・三人・・女が三人・・か・・・ふむ・・・
まぁ、物の数ではないな・・・直ぐに済ませるとしよう。
「白氷様・・・いかがいたしましょう?」
「案ずるな・・・・ヤツは今一階に居るようじゃ・・・此方を探しておる・・・・ん?エコーが放たれたのう・・・・・ほう・・これは、特定されたか」
「エコー・・ですか?・・・それは・・・」
「なに、音は物にあたると反射するのじゃ・・それを聞き分けると物の位置、質量、色までわかるのじゃ」
「・・・・・」
「じゃが・・これは・・・魔法による音の発生じゃな・・・・ふむ・・・おもしろい・・」
「白氷様・・・」
「案ぜよ・・・問題ない。」
「ん!?・・速いな・・・ベルブス殿・・下がって居られよ・・・来るぞ!」
「!・・・」
「貴方!・・」
ドォン!
「フェッフェッフェ・・・探したぞ・・ベルブス子爵殿・・・」
「マーリン!・・・・・・・・」
「さて・・この度は、ご愁傷さまってことろじゃの・・・・」
「キサマ!・・・なぜ、此のような・・・」
「・・・ワシも好きでやっているわけではないのですよ・・・趣味は入っているかもしれんがの・・シシシ」
「!・・・・」
「ふむ・・・そうか・・其の方も誰かの差し金・・ということじゃな?」
「お嬢さん・・・見かけない子だねぇ・・・・ふむ・・それに人間でもない・・・・」
「そうじゃな・・妾は其の方等の様な醜い存在ではないゆえ」
「ほうほう・・・して?お嬢さんは、どうしてここに居るのじゃろうのう?」
「そうじゃぁ・・・あえて言うのであれば、其の方を心胆を寒からしめる為に居るののう?」
「ほほぅ・・・ワシを前にしてよう言うお嬢さんじゃシシシw」
「まぁ、良かろう・・・其の方も大体の予想はついておろうに」
「そうじゃな・・・・姿から察するに・・・悪魔・・いや・・此の場で言うならば南の魔物・・・ってとこじゃろう」
「ふむ・・ニックは毎回此のような気持ちだったのじゃな・・・・よう耐えておるのう・・・」
「?・・・・まぁよいわ・・・お嬢さん此の場に居たのが運の尽きじゃの・・・・・死んで悔やむと良い」
「ふむ・・・・では、妾も参ろうかのう」
白氷の言葉が合図になったのか・・・マーリンの手に光る玉が浮かび上がる・・・・
玉は高熱を発しているようで、玉の周りの空気が揺らいで見える。
「お嬢さん・・・では、さようなら」
マーリンが其の言葉を発すると同時に白氷が火柱に巻き込まれる。
火柱は天井を突き抜け、さらに床も突き抜ける・・・・・・
「白氷様!」
「ほうほう・・お嬢さんも運がない・・・・あっという間に消し炭じゃてシシシシw」
火柱が落ち着き、残滓を残し、消えるとそこに白氷の姿はなかった・・・・・
「まぁこんなもんじゃろうて・・・・・さて・・・・ベルブス子爵殿・・・・・お命お覚悟くださいませ・・・」
にじりよるマーリン、後ずさるベルブス
・・・・・後ろの家族が・・・・ここは、盾に成る他無い・・・
マーリンの手にまた、光の玉が灯る・・・・
・・・くっ!・・・・・・家族だけは・・・・・なんとかして逃さねば!・・・・・
意を決したのか、腰に帯びているレイピアを引き抜きマーリンへ挑む。
「シシシw・・無駄なことを・・・・・」
「家族には指一本触れさせん!」
「なんとでも言うが良い・・・・お前の家族はここで消し炭じゃ・・・お主は・・ワシの傀儡となり・・・何時までも踊ってもらおう・・・・シシシw」
マーリンの光る玉の輝きが、より強くなる・・・
・・・だめか・・・あれをくらっては・・・・家族も巻き込む・・・・・・
そんな中、破壊されたドアへ、ボークスがやってくる。
「マーリン!許さん!」
「ほうほう・・待ち伏せの小僧か・・フェッフェフェ・・・・間抜けな奴よ・・・・どーれ・・先にお前を始末してやろう・・・・・後ろからざっくりってのもこまるでのう・・・シシシ」
マーリンの光る玉がボークスを襲う・・ボークスは盛大に火柱の中へ・・封じ込められる・・・・天地を貫くが如き・・・・火柱に
「・・・ふむ・・・・・お前さんは、頑丈じゃな・・・消し炭には出来なんだか・・・」
火柱の中から衣服が炭化し、金属性の物が赤々と成ってもなお平然としているボークスが出てくる。
「おいおい・・此の程度か?導師ってのは・・・・・・これじゃ、ウチの大将の方がずっと火力あるじゃねーか・・・」
「!・・・・なんじゃと!・・・なぜなんとも無い!?」
「マーリンとやら・・・其の方・・・・導師とやらではなかったのかえ?」
「!?・・・なぜ・・お前が生きている!?・・・・消し炭になったではないか!」
「ふむ・・・・人間の知覚能力の限界というやつじゃな・・・勉強に成るのう・・」
「ぐぬぬぬぬぬぬ!おのれぇ!お前ら!なにものだ!・・・・なぜワシの魔法が効かぬ!?」
「じゃ、そうじゃが?ボークス・・其の方・・まとも受けたのかえ?」
「ああ・・一度、導師級ってやつの戦力を見てみたかったからな・・・」
「ふむ・・じゃが、大概にせよ・・・その着るもの装備品・・全て金がかかって居るのじゃろ?」
「ああ・・帰ったら・・カーシャにどやされる・・・」
「そうか・・・覚悟はあるようじゃな・・・なれば良い・・・思う存分やると良い」
「ああ・・そうしたいんだが・・ニックから言われてんだ・・・コイツを生け捕りにしろってね・・・」
「ふむ・・そうか・・・であれば・・妾が拘束させてもらおう・・」
「姫さんが!?」
「なんじゃ?其の方・・・妾がただ漫然とニックの側に居るとでも、おもおておったのかえ?」
「いや・・政中心な人だと・・・・」
「ふん・・妾とて、ニックの伴侶じゃ・・ある程度は出来ないでどうするのじゃ・・まったく・・・」
「・・そうかい・・・なら・・たのむわ・・・」
「うむ・・まかせよ」
「ぐぬぬぬぬ!聞いていれば図にのりおって!・・・・もうよいわっ!・・・・ワシ以外此の場の全てを灰も残らぬようにしてくれようぞ!」
マーリンが、何やら呪文・・詠唱を始める・・・・
「・・・ふむ・・・詠唱かえ?・・・・・・中々面白い内容じゃのう・・・ふむ・・・」
「姫さん!」
「案ぜよ・・・・では、妾もまいろうかのう・・・」
”おいでませ・・・・・・妾の可愛い眷属共・・・・・おいでませ【傲慢の子】よ”
「がぁっ!・・・・・え・・詠唱が!・・・・・魔力が・・霧散しよった!?・・なぜじゃ!?」
「どうした?自慢の魔法は?詠唱を続けよ」
「くっ!・・・・深遠なるマナよ・・・水底に集う魂よ・・・・・・!・・・・」
「フフフ・・・・無理じゃろうのう・・・・・そもそも此の場には其の方に力を貸す魔素は存在せん・・・全て妾の思うがままじゃ・・・」
「な!・・・・なに!・・・・・・・・き・・きさま・・・・・大魔道級だとでも言うのか!?」
「大魔道?・・・ふむ・・・其のような階級は知らぬが?」
「くっ!・・・・・なれば・・・・・・」
マーリンが懐から何やら赤い宝石を取り出す。
「シシシ!・・魔石による魔素の代行だ!・・・行くぞ!・・・深遠なるマナよ・・水底・・・・・なぜだ!?」
「言うておろう?・・・其の方に力を貸す魔素は無いと・・・・そもそも此の場の魔素は全て妾の配下じゃ・・・」
「・・・・・そ・・そんなバカな・・・・・ありえない・・なぜ?・・・・理さえも・・支配しているということか!?」
「ほう・・・中々頭の回るやつじゃのう・・ふむ・・じゃが、少し外れじゃ・・・妾は魔法を仕えぬ・・いや使う気がない・・・・そもそも、遊び程度の物じゃしな・・・」
「!?・・魔法が遊び!?・・だと・・・・・・・・・」
「そうじゃのう・・・妾やニックは既に其の方が言う、理を理解しておるでのう・・・直接操作したまでじゃ」
「・・・・・・・・・・・」
「姫さん・・・・出来るんなら最初にしたら良かったじゃないか・・・・屋敷に穴もあかなかったはずだ・・・」
「・・ボークス・・無理を言うでない・・・妾とて、ニック程の腕前ではないのじゃ・・・・使うためには準備も必要でのう・・・・」
「・・・・そうか・・わるかったな・・・」
「うむ・・・。しかし、・・・・どうするのじゃ?マーリンとやら・・・其の方に掛っていた身体能力の付与効果も掻き消えて居るはずじゃが?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ほれみよ・・・其の方・・もうただの年寄りではないか・・・・・・無理はするもんではない。」
「く!・・・・・くそおおおおおおおお!」
マーリンが懐からダガーを取り出し・・白氷に突き立てる・・・・・・・が・・・・服までしか・・貫通しない・・・・
「どうしたのじゃ?もう少し気合を入れないと、妾の柔肌にさえ傷がつかんようじゃな?」
「・・・・・・な・・なぜ・・・・・・あ・・悪魔・・・・・これが・・悪魔か!」
「ふむ・・どうやら、終わりのようじゃ・・・・・ボークスよコヤツを縛り上げよ・・・魔法の使用権限は剥奪してある・・・・ただの老人じゃ・・丁重にあつかうのじゃぞ?」
「・・ああ・・任せろ・・・・」
「さて・・・・・そういうわけじゃ・・ニックよ・・・早う出て来やれ」
「・・なんだよ・・もう終わり?」
「其の方が、妾の危機に来ぬわけがなかろう?」
「まぁね・・・しっかし・・白氷は強いなー?・・完全に対魔法兵器じゃんか・・・良く大罪系の眷属作れたね?」
「・・・妾とて、じっとしていた訳ではないからのう・・・・」
「まぁ、良かったよ・・・火柱にやられるかと思ったけど・・・・ありゃ、見掛け倒しだったしね」
「・・・・そじゃのう・・・・じゃが、受けておったら・・服がのうなっておったのう」
「・・・・・それはそれで・・・・・見たい気もするけど・・・・・・」
「ふぅー・・・ほんにニックは、話の腰を折る天才・・天災じゃな・・・・」
「・・・・自覚してます。・・・・ごめんなさい。」
こうしてマーリンの襲撃は終わった・・・・・
翌日、壊れていない屋敷部分で、ある程度の話し合いを設け・・・ジャミルとマーリン・・・それぞれには、拷問も含んだ、自白を強要することに成った。