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#90 三つ子星の優しい王女と愚かな影姫 8

「たっだいま~」


 元気よくエクレアが戻ってくる。


「ただいま戻りました」


 若干疲れ気味のポーラも続く。

 お疲れさん。


 高そうなものあったか?


「う~ん、黒真珠が一番高そうだったけど」

「エクレア!」


 イザベラの叱責にエクレアはびっくりして、


「何? そういう話してたんじゃないの?」

「あなたは失礼すぎるのです! こちらはお願いする立場なのにあれこれ物色していたら気を悪くされるでしょう!」

「え~、ドラパパが聞いてきたんだよ?」

「だからって何でもかんでも言っていいものではないのです。いつも言ってるでしょう、何も考えずに喋らないでって!」

「むぅ、別にいいじゃん」

「よくありません」


 何気なくカマかけたつもりがそれを発端に喧嘩が始まる。

 それとは別にカグヤがポーラに現状の説明をしている。


 さて、そこのお嬢ちゃんたち、そろそろ話をすすめようか。

 続けるなら俺は酒でも飲みに行くぞ。


「すみません」

「ドラパパ、ごめ~ん」


 さて状況を整理しよう。

 俺の所有物で一番高いのはこの宇宙船だろう。


「間違いはないですが、まさかそこを出されるとは思いませんでした」

「さすがにそれをいただこうなどとは言いません」


 カグヤとイザベラがすかさず口をはさむ。


「でまあ俺が購入したもので一番高いのが?」

「先ほど話に出た黒真珠のネックレスですね。天然ものですし一粒当たりの大きさも大きいです」


 記憶にないんだが、そんなのいつ買ったっけ?


「惑星Z3-Jの例のオークションですよ」


 ああ、ワインを売った金で買ったやつか。

 いや、そんな目で見なくてもワインが一番高いのは知ってるよ。

 その黒真珠はダメなのか?


「黒真珠自体は本来価値は高いのですが、この国では少々事情が違います」


 というと?


「我が星パールでは海洋資源、ゴールでは鉱山資源が豊富なのです。貴金属としての価値はもちろんありますが、他星ほどではないのです」

 

 なるほど、逆にここで貴金属を安く買ってよそで高く売るのが賢い交易か。


「そういうことになりますね、すでにリストを作っています」


 まあ後で確認しよう。

 それはさておき、となるとオークションで落札した他の貴金属も大したことはないのか?


「そうですね、ダイヤモンドやサファイヤもありますが黒真珠には劣りますかね」


 とはいえ、この船の高いものと言えばそれになる。

 ウサギが件の黒真珠を運んできた。

 実のところ購入していたことすら知らなかったので、見るのも初めてなのだが、高額商品に思える。


 これで勝てるかどうかは知らないが、こちらが譲渡するにはそれなりに高額だとは思うが?


「そう……ですね」


 イザベラは難しい顔をしている。

 他の星の宝石にどれだけの価値があるのか?

 他の候補者の状況はわからないが、眼前の黒真珠の価値がわかる分不安が募るのだろう。


 ならこういうのはどうだろうか?

 オルゴールがいくつかあるんだが。


「あったね、かわいいのあった」


 エクレアが頷く。

 そのなかに鏡つきのがある


「見たよ。でも安そうだったよ」


 オルゴール自体はな。

 あの頃は収入に不安がというか、どのくらい儲かるかわからなかったから、安くてかさばらないものを中心に買っていた頃だった。

 それはさておき、肝はオルゴールではない。

 その鏡にうつった三つ子星の民こそがこの世で最も価値のあるものです、ってのはどうだろう?


「おお、ドラパパ。深いね、それ、いいんじゃない?」

「浅いと言うかありがちです」

「神聖な試練をトンチで対応されても困ります」


 エクレア、カグヤ、イザベラの三者三様の返答。


「え~、いいじゃん。それで」

「バカ言わないで、それで笑い者になったらどうするのよ」

「あたしは気にしないよ?」

「お祖母様に申し訳がたたないと言っているのです!」


 おや?

 やっぱそんな感じかな?


「もうイザベラはいっつもそればっか」


 とエクレアは、頬を膨らます。

 まあまあ、落ち着け2人とも。


「ケンカの原因つくったのは船長ですけどね」


 カグヤ、それを言うな。

 そもそもエクレアにひとつ質問なんだが?


「なぁに、ドラパパ?」


 エクレアは皇帝になりたいのか?


「正直なとこ面倒かなっていうのが本音だけど……」

「エクレア!」

「うわぁ、びっくりした。何イザベラいきなりおっきな声だして?」


 キョトンとしたエクレアに激高したイザベラが詰め寄る。


「なんで言うんです!」

「何を……って、ああ」

「ああ、じゃないです! 何回も言ったでしょう、王女だってことは内緒だって!」

「でもドラパパが……」

「カマかけられたんですよ!」


 うん、カマかけた。

  

「どこかのタイミングで言おうとは思っていたんですけど、船長よく気が付きましたね?」


 イザベラとエクレアが言い争いを始めたので、こそっとカグヤが俺に言ってくる。

 

「ちなみにどこで気が付きました?」


 どこと言われても、イザベラみたいな王女はいてもおかしくはないが、エクレアみたいな影姫はちょっと無理があるかな?

 

「確かに彼女を影姫にするならもう1人か2人、お付きを用意してじっとさせるべきでしょうね」


 正直なところ、王女を初めて会ったおっさんの前に置いておいて、自分は探索に行くなどはさすがに影姫失格だろうよ。


「それはそうですね。……ところであの2人の諍いどうします?」


 とりあえずほっておいて打ち合わせしようか。



あけましておめでとうございます

本年はいつまで毎日更新できるかわかりませんが、応援してくださると嬉しいです。

とりあえず、このシリーズは毎日更新できます。


今年はもう少しSFぽいこと、スぺオペぽいことができればと思っています。

「もう少し」というのがみそですがw


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