表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/316

#89 三つ子星の優しい王女と愚かな影姫 7

 イザベラの話は続いていた。

 祖母の悲願である皇帝になりたいという熱意や5代にわたる挫折や苦難を俺に語られても困るところではある。

 そろそろ本題に入ってほしい。


「失礼しました。今回の皇位継承の試練は、『各国の代表者が金銭を使わずに三つ子星以外の星の物を手に入れてきて、それの価値が一番高い人間の勝者』となります。」


 またわけのわからん試練だな?

 金銭を使わずってタダでもらって来いってことか?


「そこは解釈の違いです。金銭以外に価値があるものを差し出して、それと引き換えに何かを手に入れるという趣旨と理解しています」


 今回は俺に魚の購入権をくれると?


「そうなります。私が差し出せるものと言えば、あとは皇帝になればという前提ですが爵位を授けることもできます」


 口約束を信じろと?

 それも勝てるかどうかわからないというのに?


「そうです。そこがこの試練の難しいところだと思います。試練の補足として『手に入れたものは勝敗を問わず国の所有物となる』です」


 勝っても負けても差し出すほうはその物は戻ってこない。

 金銭の保証もない。

 勝者になった時にもらう予定の爵位なり優遇措置は敗者になられたらご破算。

 その条件下で高いものを手に入れろ?

 それなんて無理ゲー?


「知力も体力でもなく運任せの試練です。ここまで極端なものも珍しいです」


 まあ運よく他星の宇宙船が来たもんだな?

 その宇宙船が魚を手に入れたいとしている。

 それくらいの手配は楽勝だということだな。


「ぶっちゃけていえばそういうことです」


 確かにそういう意味では運がよかったんだろうが、もしも俺らが来なかったらどうする気だったんだ?


「他星の物は別に他星の人からもらわなくてもいいのです。この星の住人のコレクターと交渉することになります。事実何人かめぼしはつけていましたが……」


 まあうまくいかないだろうな。

 わざわざ他星の物を買う人間というのはそれなりにいるだろうが、それが高額な価値があるものというのであれば少数だろう。

 せっかくの手に入れたお宝をタダでやるというお人よしはそういまい。

 爵位がもらえるといっても勝てるかどうかもわからない口約束だ。

 王家と懇意になれるチャンスではあるが、価値があると思ってもらえるかどうかはわからないと。


「ある人などは絶対に勝てる高額商品を出す代わりに『皇帝の威光』を差し出せと」

 

 皇帝の威光?

 差し出せるのか、そんなの?


「横から失礼します、イザベラ様。うちの船長にはまだ『皇帝の威光』の説明はまだでして」

「そうでしたか」


 カグヤが俺に説明を開始する。


「船長。簡単に言いますと皇帝には在位中1つ特権がありまして、1度だけ自分のどんな願いでも叶えることができます」


 うん、それがどうした?

 皇帝って、ひいては君主制ってある程度自分の好きにできる職業じゃないのか?

 一つと言わずわがまま言いたい放題だろうよ?


「それは船長の星ではです。今大抵の星は管理頭脳が幾通りかのプランを出し、皇帝なり大統領がそれを選ぶのが通例です」


 自分のやりたいようにはできないのか?


「そんなことをすると国家運営が成り立ちません」


 ふむ、そこをなんとかするのが管理頭脳の腕の見せどころかと思うんだが?

 てかトップは意に沿わなくても反発しないのか?


「国家運営とはそういうものです。管理頭脳のプランに逆らっていいことはありません」


 飼いならされた人類には無理ということか。

 つまりはこの国の皇帝もその例外ではなく権力がないのだが、なんの見返りもないとなり手がいなくなる可能性もあるから特典があると?


「だいぶ曲解されてますが、……イザベラ様、これくらいの認識でよろしいでしょうか? うちの船長は少々特殊な国の出身でいろいろ疎いところがありまして」

「……そうなのですか? いえ、それでけっこうです。こちらも無理を言うのですから国策や理念などわかってもらう必要もありませんし」


 どうにも軽くバカにされた気もするがまあいい、進めよう。


 その『皇帝の威光』を担保にするような論外しかいないから困っていた。

 そこへ俺たちが来た。

 魚売ってあげるからなんかください。


 ということだな?


「少々直截的な言い方ですが、そういうことです」


 一応聞くが、魚購入権の見返りに身ぐるみ剥ぐなんて言わないよな?


「言いませんし、言えません。私どもは厚意に甘えることしかできません」


 イザベラはまっすぐ俺を見て言う。

 ……まあいいだろう。

 協力することにはやぶさかではないが、期待に沿えるかどうかは保証しないぞ。


「ありがとうございます!」



誤字報告、ブックマーク、評価してくださった方、ありがとうございます。


本年最後の更新となります。

このシリーズ、今日書き終わりましたので明日以降も更新していきます。


ただ毎日更新はいつまでできるかなという不安はありますが、できる限り頑張りますので来年も引き続き読みに来てください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
エクレア倉庫で何か盗むつもりだろwww なう(2025/08/05 20:41:45)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ