#88 三つ子星の優しい王女と愚かな影姫 6
今回はポーラ視点です。
「宇宙船って言ってもけっこう広いねぇ」
「そうですね、この船は40m級で宇宙船のサイズ的にも大きめですから」
私、ポーラはキャプテンの指示通りエクレアさんに船内を案内しています。
居住区を一通り見て、今は庭園に向かっています。
「ポーラ、宇宙って楽しい?」
「私が宇宙に出たのはつい最近ですから。いまのところ目新しい発見ばかりで楽しいですよ」
「そうなんだ」
「エクレアさんもいずれはイザベラさんについてゴールなりシールなりに外遊に行かれるのでは?」
「……ああ、どうなんだろ? 今回の試練で負けたら兄さまたちが王位継ぐだろうから、あたしたちはお役御免になるんじゃないかな?」
エクレアさんは興味のなさそうに答えます。
「皇位継承にあまり興味がないのですか?」
「う~ん、あたしはめんどくさいなあって思っているんだけど、お祖母様はイザベラの言う通りにしなさいっていうし、イザベラはやる気満々だし……まあなるようになるのかな~と」
頬に親指を当て、首をかしげます。
不満もあるでしょうがまるっきり他人事のようです。
影姫の立場ならそんなものでしょうか?
「お祖母様はどうしても今回は勝ちたいからって燃えてるし、イザベラはお祖母様が大好きだからもう大変」
「うわ、広っ! 何ここ。なんで宇宙船に外があるの?」
カグヤさんが丹精込めた庭園がエクレアさんに好評です。
いきなり走り出しました。
「すごーい! なんでこんなことできるの? 空まで見えるよ?」
映像を映し出しているのだと思いますが、ここにいると風も感じますし、技術の粋を感じます。
「エクレアさん、あそこの四阿で少しお茶にしませんか?」
「おお、いいねぇ。あたしがお茶入れてあげる。あたしお茶入れるのは得意なんだよ!」
大きな胸をさらに強調するように張って自慢なさります。
では白ウサギさん、ティーセットの準備お願いできますか?
「――本当においしいです」
「でしょう?」
エクレアさんは自慢げに鼻を鳴らします。
「あたし、他は全然ダメだけど、お茶入れるのだけはイザベラよりうまいんだ~」
納得のおいしさです。
でもイザベラさんは多才そうに見えますが、苦手なものもあるのですね。
「イザベラのもおいしいよ。でもあたしの方がもっとおいしいのだ」
エクレアさんの得意分野なのですね。
「そういうこと。……でもね、イザベラは何でもできるんだよ。勉強も運動もいっつも1番で。あたし、バカでどんくさいけど、いつもいっつもあたしが困ったときには助けてくれるんだよ」
なんかそんな感じがしますね。
「そうだよ、とっても優しいんだよ。自慢のお姉ちゃんなんだから」
まるで自分のことのように彼女のことを笑顔で語ります。
嘘偽りのない本心なのでしょう。
「あたしは曾祖母様に瓜二つっていうけど、イザベラだってお祖母様にそっくりなんだよ。背はイザベラのほうがまだ小さいけど、もう本当にそっくりなんだから」
「そうなんですか?」
「そうなの。もうびっくりするよ」
エクレアさんは楽しそうにイザベラさんとの思い出を身振り手振りを交え語ってくれます。
「……ホントは皇位継承なんて関係なくもっと過ごせる予定だったのになぁ」
ふと、現実に戻ったようです。
顔に少し影が見えます。
「あ~あ、でも仕方ないよねぇ。お祖母様に喜んでもらうためならイザベラなんだってするだろうし」
「イザベラさんはお祖母様が大好きなんですね」
「そうなの。あたしは普通なんだけど。でもあたしはイザベラが大好きだから協力しなきゃなって……思って」
「……エクレアさん?」
「あ~もう! やめやめ」
エクレアさんは大きく伸びをして立ち上がります。
「ポーラ、探検再開しよう! 今度は他の星のなにか珍しいものない? 見せてよ」
倉庫に行けばありますが。
本当はこのまま礼拝堂を案内したかったのですが……、礼拝堂の奥の倉庫への抜け道を使うことにしましょうか、近いですし。
せっかくですから蒼龍様の像も見ていただきたいです。
誤字報告、感想、ブックマーク、評価してくださった方ありがとうございます。
すいません、今回はすこし短いです。
プロットの段階ではイザベラがかわいかったのですが、書いているとだんだんエクレアがかわいくなってきました。
こういうキャラは初めて書きましたがこうなると厄介なものです。
思考錯誤の結果短くなりましたがご容赦ください。
現在このシリーズの12話まで書き終えました。
多分エクレアが変なことを言いださない限り16話で終わるかなと思っています。
一番怖いのは整合性です。
これ以上変な方向に動かなきゃいいなと思っています。
全部エクレアのせいですw
でもポンコツ海賊さんくらいに好きになり始めていますw
困ったもんですw