#87 三つ子星の優しい王女と愚かな影姫 5
「魚の購入をお求めと聞いております」
魚自体はストックがあるんだよ。
ただ購入した惑星が生食しない国でな、念のために鮮魚が欲しかったってだけだよ。
「そうですか。わが国では魚を生で食べる風習があります。ですがもうご存知と思いますが、ある程度の余剰在庫を国庫に蓄えておく法律があります」
らしいな、王族の許可があれば売ってもらえるとか聞いたが。
「はい。もうお気づきかもしれませんが私はパール王国の王女です。私なら融通がつけれます」
そうでなければいいなとは思っていたんだよ。
面倒くさくなりそうだから。
それはさておき、そうなると後ろの子はなんだ?
「エクレアは私の影姫です。我が星では未成年の王族は存在を隠されます。ですがそうはいっても生活は王宮になりますので気が付く人には気が付きます。そういった目をそらすために近親の同世代の子供を影武者、身代わりとして一緒に育てられます。エクレアは私の1つ下のいとこです」
まあそういうのもあるのだろう。
でもあれが影姫で役に立つのか?
「この子はちょっとあれですけど、顔が曾お祖母様にそっくりなんですよ」
やっぱり、あれなんだな。
でも顔がそっくりなら役に立つのか?
「曾お祖母様は5代前の皇帝です。ですのでその映像は未だに検索できますので見てもらえればよくわかります」
その言葉にカグヤが映像を表示する。
そこに映し出されたのは何かの式典の映像。
エクレアそっくりの女性が着飾って何やらしている様子だった。
「そっくりでしょう? エクレアだって黙っていると、黙ってさえいれば立派な皇帝に見えるんですからね!」
「イザベラ、それなんかひどくな~い」
残念ながら正論に聞こえるのがよりかわいそうだ。
「ドラパパもひどい!」
とエクレアは頬を膨らませて抗議するが、仕方ないよな?
「むぅ、二人ともひどい! さっきからお話ばっかでつまんない! せっかく初めて宇宙船乗ったんだから見て回りたい!」
「もうエクレア! 私たちの目的が先でしょう!」
「やだやだ! 宇宙船見てみたい!」
「エクレア!」
「なによ、イザベラのけちんぼ! ねぇ、ドラパパ、宇宙船見せてよ」
さて何だろうこの子たちは?
なんかおかしい気がするが……。
まあいいか、ポーラ。
「はい、キャプテン」
エクレアを案内してあげて。
「わかりました」
「日下部船長、いいのですか?」
まあ話をとりあえず進ませよう。
ただ機関部とか管理頭脳の本体とか生命維持装置は近寄るなよ。
「わかりました」
「は~い!」
神妙に頷くポーラとどこでも軽いエクレア。
「じゃあ行こう、ポーラ」
ポーラの手を引いて艦橋を出ようとする。
「エクレア、アイとスチルを連れて行って」
「オッケー、おいでアイ、スチル」
そういうと4体いた犬型の管理頭脳の2体が後をついていく。
「すいません、この船も船長も疑うわけではないのですが、どこに行くにも護衛がいる身分でして」
そりゃあかまわんよ。
まあ姫様ほっておいて遊びに行く影姫より、姫様のほうがより護衛はいると思うがね。
「同等の護衛数にしておかないとどっちが本物かとすぐばれますので」
それは道理だが、影姫があんなのでどうかと思うがね。
「エクレアが天真爛漫の世間知らずの王女っぽい、と考えれば影姫としての役目は果たせます」
イザベラの言い分は……まあなくもない。
まあいい、話をすすめようか。
「はい、魚の購入をできるように手配しますので、こちらのお願いを聞いてもらえないかと」
まあただより高いものはない。
何か条件を示してくれた方が安心はする。
とはいっても対応できるとも限らないがね。
「それは承知しております。まず話だけでも聞いてもらえればと」
まあしょうがないな、魚がらみとなるとポーラが面倒くさいしな。
一応この場から体よく追い出したとはいえ、最初から没交渉だと恨まれるだろう。
「ありがとうございます。三つ子星の皇位継承のことはご存知ですか?」
30年に1度、3つの星の王家から代表をだして、なんか試練をして勝者が皇帝になるって話は聞いた。
「大体そういうことです。他星の方にはおかしなことをすると思うかもしれませんが、この星では伝統的な行事となっています」
まあ宇宙は広いんだしそういう国家があってもいいんじゃないかと。
俺の星だって他の星から見たらおかしなことをするという行事や祭りもあるだろうからな。
その辺のことを口だす気も権利もないよ。
「ご理解ありがとうございます。それで今年がその皇位継承の儀式の年となります。わが国には王位継承権を持つものが兄2人と私の計3人いるのですが、今回は私が惑星パールの代表に選ばれたのです」
それはおめでとう、でいいのかな?
「名誉なことです。が、私が選ばれたのは試練の内容のおかげでした。もともと今回の継承の仕切りはお祖母様がしていました。我が星では曾お祖母様以来5代、皇帝が出ていません。お祖母さまは娘である自分がふがいないばかりに皇位を引き継げなく、子供たちもダメだったと恥じております。孫の代にはと長兄には運動能力を、次兄には勉学をと集中してほどこし、試練の内容でどちらかに代表をしてもらう予定でした」
ということは試練内容がそれではなかったと。
「はい、どちらかというと運や交渉力を試されるものとなり、……私が選ばれたのです」
運と交渉力ねぇ。
感想、誤字報告、ブックマーク、評価してくださった方ありがとうございます。
昨晩はストックたまりませんでした。
そのせいでしょうか?
前職のクズノミヤのモデルになった会社の支社長に糾弾される夢を見ました。
前職の時は頻繁に仕事中のみならず夢でも怒鳴られてたものですが、退職しても現れるとは本当に恐ろしい人です。
その効果か今日でこのシリーズの9話まで書きました。
何が悲しいって実話で話を盛ってないことです。
このあと今日は夢を見ないようにもうちょい頑張りますw