#9 タバコと酒と嗜好品
「喫煙の習慣は?」
「ないよ」
40年の人生で吸おうと思ったことさえない。
「今後気が変わって吸いたくなったら教えてください」
「てか宇宙船でタバコ吸ってもいいのか? なんか空気が大事なものかと」
「もちろん大事ですよ、ただ空気清浄機も地球のモノよりはけた違いに高性能ですから喫煙ルームで吸われるのであれば問題ありませんし、どうしてもどこでも吸いたいというのであれば煙の出ないものもありますのでそれを使ってください」
白ウサギがさっさとサンプルを持ってくる。
文字が読めないのでたぶん惑星ワイズのものだろうが手で押し返す。
「別にいいよ、いまさら吸おうとも思わん」
「今はそうかもしれませんが、長い航海だといつ気が変わるかもしれませんし、一応あるということと、吸っても問題がないことは憶えていてください」
嫌煙というほどではないが、そこまでタバコに良い思い出もないから手を出すことはないと思うが確かに長い航海だとどうなるかわからない。
かたくなに拒否することもないだろうと頷いておいた。
「お酒は飲まれますか?」
「強くはないけど好きなほうだな」
正直に答える。
仕事終わってから缶ビール。
飲みに行けば居酒屋では同じくもっぱら生ビールとハイボール。
スナック行けばウイスキーの水割りがいつものパターン。
いろいろ飲んでみたけど給料との兼ね合いでこうなった。
「地球と同じ銘柄はなく、とりあえずワイズで生産された似たようなものが酒蔵に保管されております。水代わりに飲まれても食糧以上には持つと思います。もちろん生産プラントもありますのでしばらく待っていただければビールなど同じ味で生産も可能です。ただこれも食糧と同じ問題で米がないので日本酒が作れません」
それはまあそうだろうな。
「ブドウからの醸造酒や麦やサトウキビ、芋や栗から作られた蒸留酒はいろいろな種類がありますが」
麦はいろいろあるよな、ウイスキーとか焼酎とかジンとかウオッカは麦だったけ?
サトウキビはラムかな、芋と栗は焼酎しか思いつかないが。
「醸造酒はビールが好みで、それ以外はブドウから造る地球でワインと呼ばれるものはいまいち苦手で、それよりは蒸留酒が好みかな」
「そうですか。ワインなどは最低300年寝かしてますので味わいに趣があるかとは思いますが」
ワインって寝かすほどよかったんだっけ?
寝かしすぎても問題ないんだろうか?
「そこは保存方法、熟成方法が違いますので」
まあよくわからんので言葉通りに受け取ろう。
とりあえず銘柄にさえこだわらなければ酒には不自由しないと、ならOKです。
夕食はウイスキーと炭酸水をあと氷。
つまみにさっきホットドックあったからソーセージあるよな、それを焼いてマスタードと一緒に。
あとフライドポテトを部屋までもってきてくれる?
ピンクウサギが俺の言葉にOKと出す。
彼(彼女?)にはいろいろ面倒をかけそうだ。
いや、白ウサギ、おまえにも面倒かけるよ、知らないことが多いから。
洗濯はお前の担当かな?
普段はこの宇宙服でもういいが部屋では楽な服がいいのでさっきまで着てた服をTシャツ短パンを洗濯しておいてくれるか?
あとカグヤ、ワインは船に積んどいてくれるか?
飲む飲まないは別として使い道があるかもしれないから……そもそもその予定、ならOKです。
「コーヒーかな」
好みの嗜好品と問われるとペットボトルのお茶もよく買っていたがコーヒーのほうがより多く買っていた気がする。
休日にコーヒーを飲まずに引きこもった際、頭痛が生じたときには慢性カフェイン中毒を疑ったくらいだ。
「コーヒーは種類・量ともに問題なく提供できます。紅茶緑茶ほうじ茶麦茶等もご用意できますし、清涼飲料・炭酸飲料も似たようなものはすぐにでもご用意できますのでなんでもご遠慮なくおっしゃってください」
それはありがたいが、ジュース類はそこまでいらないけど……はいはい、長い航海にはってやつね。
ありがとう、気分が向いたらいただきます。