#84 三つ子星の優しい王女と愚かな影姫 2
今回もポーラ視点です。
「……はぁ」
私、ポーラは大きくため息をつきます。
お魚が思ったように手に入りませんでした。
やはりこういうおいしいものは希少で取り合いになるから手に入らないものなんですね。
とても残念です。
ですが冷凍のお魚のストックはまだあるそうなのでいつまでも悲観してはいられません。
ならこの星で鮮魚を少しでもいただいておきましょう。
私は魚市場に併設されたお食事処に向かいます。
椅子に座ってメニューを見ますが……いつも船長に選んでいただいていたので何が何だかわかりません。
こういう時はお店の管理頭脳に聞きましょう。
お魚の、生で食べれる料理はどれでしょうか?
はあカルパッチョですか、じゃあそれをください。
魚には何にするか?
マグロ、サーモン、カツオ、タイ、タコ、ホタテがあるのですか。
うう、迷います。
……少しの量で全種類ってできませんか?
できる、ならそれでお願いします。
小皿で3切ずつ運ばれてきました。
どれもとてもおいしいです。
タコやホタテは戒律に触れませんが、やはり海のものということであまり食べられなかったのですが、こういう風にいただくととてもおいしいです。
やはりお魚を食べる文化のある星では食べ方も工夫されるのですね。
あまりのおいしさにもう少しいただきたかったのですが、私は店を後にします。
とはいってももう予定があるわけではありません。
しばらくは地上のホテルを予約してくださっていますので、観光しながら何かよさそうな商品を探します。
「まあそこまで肩ひじを張らず、観光を楽しんできな」
キャプテンはそうおっしゃいましたが、お魚が手に入らなかった以上、せめて良いものを仕入れて帰らなければと思います。
「足りなければ追加で資金を送りますので、遠慮なくいってください」
と、カグヤさんは私が見たことのない額を持たせてくれました。
使い切る自信はありませんが、せめていろいろ見てまわらなければ。
「あの、すいません」
ホテルのある街で歩いていると2人の少女に呼び止められました。
私に声をかけた方は小柄な方です。
長い黒髪が光に当たり綺麗に見えます。
「あなたはつい最近、宇宙から来られた船長でしょうか?」
いきなりそう知らない人に声をかけられた場合どうすべきでしょうか?
犬の形をした護衛用の管理頭脳を計4体従えていますが、私の白ウサギさんで対応可能でしょうか?
私的には同性の2人くらいならなんとかなりますので、とりあえず話を聞いてもいい気がしますし、直観ですが私に害を加えるなどの気はないように思います。
「いきなりすみません。私はイザベラ・P……この星ではファミリーネームはなく、このあと個人番号が続くので他星の方には名乗れません、すみませんがご容赦ください」
そういう文化もあるのですね。
「あたしはエクレア。よろしく~」
もう一人の長い金髪の方が能天気……元気よく自己紹介してくださいます。
どちらも綺麗な方です。
赤いベストのようなものを着ていらっしゃいますが、スレンダーなイザベラさんに対し、バストの大きなエクレアさん。
同じ服装とは一見思えません。
「私はポーラ・アラカルトと申します。隣の惑星マイタンの出身です。でも宇宙船の船長ではありません。縁があって同乗させていただいている臨時の乗組員です」
二人とも悪い人のようには思えません。
正直に名乗ることにしました。
「そうなのですか。……では船長さんは?」
「今、船で……待機しております」
引きこもっていますというのは言わないほうがいいのでしょうか?
「あの、船長さんとお話をさせてもらえないでしょうか?」
「それは私の一存ではなんとも」
この方は悪い方ではないとは思いますが、だからと言ってキャプテンにとって都合の悪い話をしないとも限りません。
そうでなくとも私はお魚購入で失敗しています。
これ以上キャプテンにご迷惑をかけるわけにはまいりません。
「え~、ちょっとくらいイイじゃん」
とエクレアさんが抗議します。
こちらは本当に悪い人ではなさそうです。
少々世間知らずな気がしますが。
「ああ、もうエクレアは黙っていてといったでしょう」
「え~、あたしはイザベラを助けようと思って」
「どうせできっこないのだから黙ってて、私がするから」
「むぅ、イザベラの怒りんぼ!」
頬をふくらませて抗議するエクレアさんを後ろに下げ、イザベラさんが、
「失礼ですけど魚の購入でお困りのようですね。私ならお力になれるのですが」
「――!! ちょっと待ってください。キャプテンと相談いたします」
誤字報告、感想、ブックマーク、評価してくださった方、ありがとうございます。
あと2日で年末年始の休みに入りますが、あと2日が忙しそうです。
今日中に金曜までの分は何とか仕上げようと思っています。
明日は主役に視点が戻ります。