#81 酒と肴、鮭と魚
ピンク、生中。
ポテトサラダとアスパラのベーコン巻きを頼む。
「キャプテン、お魚も」
この子は魚を食べることに関しては我が強いな。
とりあえず椅子に座る。
俺的には座敷でもいいんだが、ポーラは座敷に座る文化がない国だったので、彼女と食事を一緒にするときは4人掛けのテーブルを使用する。
俺の対面にはポーラ、横にはカグヤの立体映像と一見女性に囲まれた華やかな飲み会である。
さてポーラには何を食べさせるか。
今のところ魚は何でも美味いと言って食べている。
昨日などはナイフとフォークで器用に秋刀魚の塩焼きを幸せそうに食べていた。
じゃあ今日は鮭にしよう。
ムニエル……より、ホイル焼きなんかどうかな。
キノコ食べれるか?
「大丈夫です」
じゃあキノコ多め、バターも多めで。
ポン酢でもかけたら最高だろう。
「よくわかりませんが、それでお願いします」
この子の凄いところはとりあえずチャレンジするところだな。
よくわからないものをよくわからないまま出されるのは俺的には怖いがな。
「そこはキャプテンを信頼しています」
信頼が重い。
「キャプテン、今日のもおいしいです!」
アルミホイルで包まれたまま出てきたときには一瞬怪訝な顔をしたが、開いて中身が出てきては目を真ん丸にし、食べてまた目を丸くする。
そこまで喜んでもらえれば魚も本望だろうよ。
「本当ですね」
カグヤが同意してくれる。
「ピンクウサギもいろいろメニューを考えていますので、あとで相談にのってやってください」
俺の相談いるかな?
この子なんでも喜びそうだが。
「否定しづらいですが」
それはそうとポーラ、ふと思ったんだが、蒼龍教では鯨とかは食べていいのか?
「鯨は蒼龍様の盾と言われる神聖な魚です」
ポーラは小首をかしげる。
なぜそんなことを聞くのだろうという顔だ。
鯨は哺乳類だから魚とは違う認識なのかなと思ったのさ。
エビやイカがいいなら鯨もいいのかなと思ってな。
ちなみにお隣の大翠では鯨は肉扱いだったから。
「……そんなこと考えたこともなかったです。哺乳類ってことは知っていましたけど、魚ですから食べようなんて思ったこともないです」
まあ試しに聞いただけだ。
気にするな。
しかし鯨が哺乳類って知っているということは、魚の研究もある程度されているんだな。
「一応は。3D水族館で魚の種類や生態などは見たことがあります」
神聖なものをよくもまあ調べたんだな。
保護する名目ならわからんでもないが、蒼龍を崇めていて、それの眷属と思っているなら捕まえることも不遜じゃないのかなあと思っただけで。
「……言われてみればそうですね」
俺の疑問にポーラは答えることができない。
となるとカグヤ、出番だ。
「これをポーラに聞かせてもいいのかという気もするんですが、……いまさらですかね。国家の管理頭脳には星の生態系の維持というのも仕事でして、惑星マイタンでは魚という海洋資源は手付かずですからね、ある一定の魚が増えすぎないように、減りすぎないようにと、間引いたり保護していまして」
なるほど。
地球の海と同じと思ってはいけない。
人間が手を入れていない以上、海は魚が生きやすい世界なんだろうな。
管理頭脳が海を適度に管理して、魚の情報をフィードバックしているのか。
「ちなみに間引いた魚はどうなるのでしょう?」
「やっぱり気になります?」
ポーラの質問に口ごもるカグヤ。
あまり愉快な答えではないのだろうか?
「供養ということで蒼龍教の高僧が食べています」
……おい!
信者には食うなといっておいて上は食うのかよ!
「魚がおいしいというのは高僧では公然の秘密で、それを公表すると食べつくされると考えていたようです。でも少しは罪悪感があるのか、貝、タコやイカ、エビ、カニ、あとは淡水魚はOKというようにしたみたいです」
おかしな戒律だと思ったんだよ。
なんで中途半端に海のものを食ってもいいのかと思ってたんだが、そういう理由か。
……ちょっと待てよ、そうなるとあそこの最高司祭は自分は魚食ってるくせに、ポーラを断罪しようとしたのか?
「……まあそういうことになりますね」
「――――」
あまりのことにポーラに言葉がない。
宗教って怖いな。
いや、人が怖いというべきか。
おい、ピンク、こちらのお嬢さんに鮭のちゃんちゃん焼きをお出しして、大至急だ。
累計PV数が100万を突破していました。
応援してくださっているかた、ありがとうございます。
明後日12/25から「三つ子星の優しい王女と愚かな影姫」編を開始します。
詳しいことは活動報告に書いておきます。