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#スピンオフ 若者の海賊離れを嘆く女神様に変身できる眼帯をもらったけど、あたしにそんなのできっこない 3

本日4話投稿 3話目


 

「アタシの名はブラッディー・クイーン。海賊だ」


 そうあたしの顔と声でゲートから出てきた宇宙船に通信する。

 てか本当に100時間でゲートから宇宙船が出てきたよ。

 あの女神のふりした悪魔すごい。


「その海賊が何か用かい?」


 画面に映っているのは一人の男性。

 この人、うちの星の俳優になんとなく似てる。

 惑星パールで父親役ばっかりしていた国民的な父親役俳優。

 ドラパパ、ドラゴンパパの愛称で親しまれていた名優に。

 あたし、あの人のファンだったなぁ。

 あんなお父さんがいたら、もうちょっとましな性格になってたと思うんだ。


「単刀直入に言う。積み荷をさしだしな!」


 遠慮会釈もなしにブラッデイー・クイーンは言う。

 

「断ったら?」

「砲撃して奪い取る」


 獰猛に笑う。


「すでにゲートから100秒先で照準合わせて待ってるぜ」

「よく考えられた位置に待機してますね。宇宙船は平均的に100秒前後で加速が終了しますので、通常加速に戻るところを狙い撃ちされれば対応が難しいですね、本来なら」


 向こうの管理頭脳かな?

 冷静にこちらの意図を読み、ドラパパに伝える。


「そういうこと。100秒以上の加速だって背後から狙い撃ちしてやる」


 なんか威勢のいいこと言ってるけど、100秒でそんな悠長に考える余裕ないよね?

 その辺のこと考えてる?

 てか撃つ気満々なの?


「じゃあ、できるもんならやってみな、で」

「へえ」


 ドラパパの何気ない口調での返事にニヤッと笑う。

 

「いい度胸じゃないか、カスタマイズしたアタシの海賊船は速いうえに砲撃距離も性能も半端ないぞ。それに……」


「ハイハイ、そういうのいいんで。カグヤ、打ち合わせだ。こっちの音を消せ」


 とドラパパに一方的に話を打ち切られる。

 でもドラパパ、逃げたほうがいいよ。

 こういっちゃなんだけど、あたし結構頑張ってカスタマイズしたんだよ。

 暇と金をつぎ込んだんだから。

 ……いえ、こんなことする目的でやったんじゃないんだけど。



「ブロン、奴の大きさは?」

「40m級コンテナ4基です」

「でかいな。大口叩いててもそんなに長時間オーバーブーストできないだろうが、念のためだ距離を稼げ」

「イエス、マム!」


 ゲートというのは変な特性があってゲート直径50mと差が少なければ少ないほど、長さが長ければ長いほど、速度が速ければ速いほどゲートアウト後に長時間オーバーブーストできる。


 あたしの船が35m級でコンテナ4基。

 これでも少し大きめなサイズだ。

 あたしはこれで調子がいいと出力25%で突入できる。

 このとき100秒以上でオーバーブーストしたので、ブロンの話だと平均が100秒なら、あたしはどうにか平均のようだ。

 まあ、今現在ゲートを飛べずに立ち往生しているけど。

 だって仕方ないんだよ。

 直径50mの円の中に40m近い大きさの宇宙船をコンテナ1基50mで4基+メインユニット1基で計250m。

 それを手動なんて難しいんだから!


 でもドラパパはその大きさで今飛んできたのだからできたんだよねぇ。

 運転上手い人なんだなぁ。



「ブロン! 加速開始だ、逃がすなよ!」

「イエス、マム!」


 あたしの作った補助推進装置が初めて稼働する。

 オーバーブースト中の赤い宇宙船に並走して進んでいく。

 その姿を見てあたしは感動する。

 作ってよかった。

 ちゃんと予想通りの加速してるよ、……こんな目的に使用するつもりはなかったんだけど。

 ……あれ? 


「ちょ、ちょっと待て! お前ゲートにいくらで突入したっていうのよ!?」


 すれ違って15秒、あたしの補助推進装置は徐々に出力が下がっていく。

 長時間の稼働は難しいと思っていたんだけど、問題はそこじゃない。


「40m級で4基もあってその長さってありえないってば!」


 赤い宇宙船はいまだオーバーブーストが終わる気配が見えない。

 徐々に差が開き始めていく。

 そしてそこで3つある補助推進装置の1つに異変を示すアラームがあがる。

 ああ、無理をしすぎたんだ、止めなきゃ。

 あたしと同じ判断をブロンがクイーンに伝えるが、


「かまうもんか、このまま進め!」


 かまうわよ!

 どれだけアレにあたしが手間暇かけたと思ってんの!


 ――ボン!


 そんなあたしの悲痛の叫びが届かず、1つが爆発する。

 するとバランスが崩れ、宇宙船の挙動がおかしくなる。


「くそ、全部切り離せ!」


 やめてよ、バカ!

 まだ直して使えるんだから!


 やっぱりあたしの言葉は届かない。

 ブロンは指示通り補助推進装置を切り離す。


 もうやだよ、助けてよ。


「ふざけんな!」


 あちらは今も加速中、こちらは通常走行だ。

 差が開く一方だ。

 苦し紛れに砲撃するが距離が縮まることはない。


「チクショウ! あの野郎! 覚えてやがれ!」


 そういいながらクイーンは船内で地団駄踏んで癇癪を起こしている。

 あたしはそんな彼女のことより補助推進装置のほうがショックで崩れ落ちる。


「くそ! 初陣にケチがついた。ブロン、ワイン持ってこい! 上等な奴だ」

「イエス、マム!」


 運ばれたワインをテイスティングもせずに飲み始める。

 てかあれって、いつの日か友達と飲もうと思っていた私の誕生年のワインなんですけど!

 もう最低!

 いったい何がどうなったらこうなるのよ。


「まあいい、まだ次がある。今度はうまくやるさ」


 ひとしきり飲んでそうつぶやくと……。


「へ?」


 いきなりあたしの視点が変わる。

 ていうか戻った?

 今まであった浮遊感がなくなり、重力を感じる。

 あれ、左目が見えない……ああ眼帯か。

 眼帯を外して見えるのは、飲まれたワインの残骸、モニターに映る補助推進装置の残骸、宇宙船の破損状況、ついでに大きくあいた胸元。


 あたしはショックで床に倒れこむ。


「カウンセリングが必要ですか?」


 うるさい!




 

4話目はいつもの19時頃に投稿します。

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― 新着の感想 ―
[一言] もうやだよ、助けてよ。・・・端的に言って・・無理デス。メガミサマニハカテません。、、、、、(*_*)(*_*)(*_*)(*_*)
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