#スピンオフ 若者の海賊離れを嘆く女神様に変身できる眼帯をもらったけど、あたしにそんなのできっこない 2
本日4話投稿、2話目
「ねえ、ブロン」
あたし一人になった艦橋で管理頭脳に呼び掛ける。
「どうしましたか、船長」
モニターに昔のブリキで作ったような四角いロボットが現れる。
「一応聞くけど、今この艦橋に誰かいた?」
「カウンセリングが必要ですか?」
ブロンとはあたしが定期便をしていたことからの付き合いだ。
宇宙船は乗り換えたが管理頭脳は今までのをもらってきた。
なぜって?
これはあたしの私物だから。
惑星フィ=ラガの偏屈だけど変わった管理頭脳を作るって有名なヨミ博士に作ってもらったカスタマイズ品なの。
なぜそんなものが必要だったかというと、他の管理頭脳は私のことを病人扱いするの。
ブロンは特殊な作り方らしく、他の管理頭脳みたく従順ではないけれど、長い付き合いのおかげもあり、あたしが病気ではないと信じてくれているの。
「先ほどからぼーっとして立っていました。そのあとにその言動は幻覚が見えていたと推測します。カウンセリングが必要ですか? まだ耐えますか?」
うん、これでもまだましな方なんだよ。
「……あたしいつの間にか手に眼帯握っているんだけど、これってどうしたのかわかる?」
「艦橋に入る前から持っていましたよ」
監視映像をモニターに映す。
確かに持っている。
「カウンセリングが必要ですか?」
うるさいな。
こんな趣味の悪い眼帯、なんであたしが持っているのかと。
……あの人が本当に女神であるから、管理頭脳の記録の改ざんができるという言うのだろうか?
それにしてもああいう女神は想像外。
まだ私が頭がおかしくなったというほうが信憑性が……
「カウンセリングが必要ですか?」
だからうるさいっての!
ふぅ。
とりあえず頭を休めようか。
こういう時は寝て、起きてから考えよう。
とりあえず、ブロン。
今から99時間カウントして。
さてあれから4回ほど寝て起きたけど、どうにも夢か現か幻か、それの区別ができない。
いろいろグルグルと頭を悩ましたけど、もうどうにも訳がわからなくなった。
もういいや、とりあえずあの人のいう通りにやってみようと腹をくくったのがついさっき。
優柔不断ということなかれ、だってこれで変なことになったら死ねるでしょう?
「ブロン、これから私の行動を録画しておいて。それからあと1時間以内にあのゲートから宇宙船がゲートアウトしてくるらしいから、海賊をするらしいです」
「船長。本当に一度カウンセリングをしませんか?」
ああもう!
あたしだって変なこと言ってるってわかってるわよ。
とりあえずそういう風で動くの!
「……海賊、略奪。ゲートアウト後の進行方向に100秒後の地点に移動しておきましょうか?」
「なんで?」
「平均的なオーバーブーストの時間は100秒前後です。狙い撃つ気ならそこから追従するべきかと」
ああもしかして、それだと相手が100秒以上だとあたしの補助推進装置が試せる?
「可能性はあります」
じゃあそうしよう。
あと45分たったら教えて。
眼帯をしよう……本当にしていいのかな?
時間がきた。
もうこうなれば破れかぶれ。
どうにでもなれと眼帯を左目に装着した。
スッと身体に浮遊感がある。
何これ?
見ると幽体離脱っていうのか、自分の身体を見下ろす、そんな感じになった。
「ハッハッハ! 海賊ブラッディ・クイーン、爆誕!」
え、こいつ何いってんの。
いや、これ、あたしなの?
何?
どうなったの?
「ブロン! 戦闘準備は完璧だろうな!」
「イエス、マム!」
ちょっとブロン、何受け入れてんの?
しかもあたしの時より素直じゃない?
てかあたしの声は聞こえてない?
自分の身体に触ることもコンソールパネルにも触れない。
「一応警告してやるぞ、すぐコンタクトとれよ、できるな?」
「イエス、マム!」
「いい子だ」
彼女は獰猛に笑っているけど……これって本当にあたし?
「帽子とマントがほしいな、あるか?」
「ノー、マム!」
「……まあしかたないか、今度は準備しておけよ」
「イエス、マム!」
「あとスーツ切れるくらいの超音波カッターよこせ」
「イエス、マム!」
彼女はカッターを受けとると、……てかやめて何すんのよ!
「こんなの息苦しくてたまらねえよ」
胸の谷間が見えるくらいV字に切り込みをいれる。
胸が大きいことはコンプレックスなのに強調しないでよ、バカ!
「よし、こんなもんかな」
イヤー!
あたしの姿でこんな格好しないで!
あたしは自分を……ブラッディ・クイーンを叩こうとするけどすり抜ける。
こんなの聞いてないよ、やっぱりあの人女神じゃなくて悪魔だ。
「さあ、初陣だ!」
誰か助けて!!
3話目は14時から16時の間に




