#80 運送業の闇
「まだ伝えたいことはありますが、休憩しましょうか」
そうだな、ゲート突入からかれこれ数時間ここにいたしな。
そろそろゲート突入のためにしていた禁酒を解禁してもいいだろう。
「たった24時間じゃないですか」
たかが24時間、されど24時間。
「じゃあキャプテン、ご一緒しても」
いいけど、たまには魚以外も食いたいです。
嫌いじゃないが毎日は飽きるので。
「では私に今日のおススメを教えてください」
ポーラは食べるんだな。
まあその辺が無難だろうか。
今日は何にするかね。
「ああ船長すみません。こっちから言っておいてなんですが、今入国管理局から通信がきたもので。ちょっと対応してもらえますか?」
あれ?
なんか不備があったのか?
まあいいや、つないで。
「どうも日下部船長」
画面には先ほどの職員と違う人がでてきた。
宇宙局の課長だそうだ。
宇宙局とは宇宙船運航に関わる業務をする組織だそうだ。
まあ定期便の管理が主な仕事らしい。
「いえ、入国に不備はありませんよ。ただ惑星マイタン方面から来られたということで宇宙船クリスタを見なかったかなと思いまして」
さて初耳の単語だが?
この宇宙にきてから90日程度で宇宙船なんかに……あ、あれか?
「正解です。あの船の名はクリスタでしたよ」
カグヤはハッキングしたときにそこまで情報は得ていたそうだが、特に必要がないからと伝えてなかったという。
「えっと、惑星Z3-Jから大翠にゲートアウトした時のオーバーブースト中にすれ違った船がありまして、……もしかしたらそれかな?」
正直あの子とはあまり関わりたくないのでぼやかすことにした。
知らぬ存ぜぬでやり過ごしたいのだが、
「船の特徴とは憶えてます?」
そんな質問されてもな、なんかいびつな補助機関をつけてましたがね。
俺をフォローするためにカグヤが写真を出してくれる。
「……ああ、マルチダの船ですね」
あの子マルチダっていうんだ?
「あの子がやりそうな感じの改造ですね」
てかやりそうなんだ?
あれを?
「いえね、この子はうちで長く定期便の船長してくれててね。操縦の腕はいいし、宇宙船の改造するのもうまい子だったんですよ。ただ、ちょっとなんていうか人付き合いが下手でね、独立して宇宙に出てからうまくやっているか心配で」
人付き合いが下手か。
そうだな、そんな感じはしたな。
人付き合いがうまい子はあんなことしないだろう。
ただ「ちょっと」だろうか?
「できれば残ってずっと定期便の船長してもらいたかったんですけどね」
あんなんでもいいくらい人手不足なんだろうか?
……まあ彼女がトラックの運転手だと考えよう。
少々奇行がすぎるが、腕がよいのであれば……ああクズノミヤでは採用だな。
客先に迷惑をかけないのであれば使い続けることだろう。
ああ宇宙船といえども運送業。
同種の闇を感じるとこである。
「じゃあ今Z3-Jの次って言ったら……、行き止まりか。じゃあ今こっちに帰ってきてるのかな」
だよなぁ。
どれくらいのんびりしてるか知らないけど、結局こっちに来るんだよなぁ。
俺はここまで惑星に降りていないからだいぶ距離は開いていると思うんだけど、もう会いたくないなぁ。
彼女が里帰りしたらまた定期便に誘うのでしょうか?
「一応そのつもりでいるんですけどね。少し変わった子なのでどうなることやら」
少しかなぁ?
まあ課長さん、ぜひ頑張ってあの子を再就職させてください。
まずはお礼を。
ブックマークが3000、評価ポイントが8000超えていました。
応援してくださっている方、ありがとうございます。
予想以上の数字に驚きつつ皆様には感謝しかありません。
続いて今回の話で名前が出てきた女性は今までもちょいちょい出てきている海賊の子です。
以前スピンオフとして彼女の話を書き始め、3話で諸事情により断念しました。
この度番外編として復活させようかと思っています。
呼んだ方もおられるので明日中に以前投稿した3話+新規の1話の計4話投稿しようと思っています。
時間は明日の私の段取り次第となりますので予告はできませんが読んでみてやってください。
詳しくは後ほど活動報告に書いておきますので興味のある方はそちらをご覧ください。