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#8 食糧事情

 目が覚めると夢だった、というオチを少なからず期待していたのだが残念ながらそのようなこともなかった。

 この歳になって異世界(異星界?)に飛ばされるという幸運なのか不幸なのか?

 これから宇宙を旅するらしいが全く実感がわかない。


 なぜって?

 20年住んでる社員寮の俺の部屋そのものに今いるからかな。

 疲れが取れにくくなった5,6年前に寝具くらい奮発しようと買ったベット上でゴロゴロしながら周りを見る。

 家具の配置どころか天井のシミとか壁紙の汚れまで同じだよなぁ。

 こういうところが女神さまの力なんだろうか?

 しかしこれはSFではなくファンタジーの領域では……、ああSFはスペースファンタジーと訳すんですね。


 まあ俺は黒歴史さえ回収できたら内装はどうでもいいんだが。

 でもまあこんな状況でも落ち着いてられているのは見慣れた環境のおかげかもしれないと思うととりあえずこのままのほうがいいのかとも。


 とはいえ全く同じ間取りではない。

 窓がないことと出入り口が自動ドアになっているということだ。


 覚悟を決めて立ち上がり自動ドアから部屋を出る。

 するとそこには今までいた部屋の倍以上のスペースで新品の調度がそろっている空間に出る。


 カグヤの話だと俺に配慮して日本にあるものをイメージして製作したという話だが、ランクが高そうなのでこの配慮は逆に肩が凝りそうである。

 宇宙船では一般的な乗組員の部屋らしくリビングと寝室、あとはトイレ、シャワー、洗面台とそろっている。

 本当は船長室を案内されたのだがここより1部屋多い上に、寝室は社員寮の俺の部屋より大きいので荷物置いたらスカスカになり違和感があったのでこっちの部屋にしたのだという。


 というか、会社の社員寮と宇宙船の寝室が同じ大きさってどうなんだろう?

 宇宙船ってもっと狭いイメージなんですけど……いやこれが先入観ってやつだな。

 はい思考をリセット。

 こんなもんだ。


 自分の想像内のシャワールームで体を洗い、身体乾燥機というタオルを使わずに体を乾かす機械に興味を抱く。

 隣接した洗面台で散髪屋の椅子のようなものに座るとアームがでて顔を剃ってくれる。

 少々怖くはあったが終わってみると自分で剃るよりも綺麗になっていてさっぱりした。


 さて問題は服だが……。

 洗面台の横の壁が音もなく開き何やら出てくる。

 手に取るとカグヤや女神さまが来ているタイプのウエットスーツのようなものだった。

 きっと一般的な宇宙服だとあたりをつけるが着方がわからない。

 洗面所にある液晶モニターから内線でカグヤを呼び出す。

 サポートユニットがカスタマイズできたので送る? 


 すると来たのは1メートル大のデフォルメされたメイド服を着た白いウサギの着ぐるみ。

  

 なぜ?

 日本人は月と言えばウサギでしょう? 

 カグヤ、イザヨイと月繋がりってことね。

 ……まあそれでいいよ


 とりあえず背中の割れ目から着るのは予想がつくんだけど、パンツは? 

 はあ、裸でそのまま着る。

 

 インナー兼アウターだと? 

 はいはい着ますよ。


 ……思ったよりぶかぶかで着やすいけど生地は微妙に厚いな。

 着たら左手の腕時計のような液晶をいじれと。


 ……お、いきなり服が体に密着した。

 でもあんまり息苦しいわけじゃないな。

 それに動きやすい。

 中に人体維持の最適な調整機能があるから温度管理も適温になる?

 便利なもんだな。


 ただ足はともかく手まで覆われてるのは違和感があるんだけど?

 すぐ慣れる、それにヘルメットさえかぶれば真空にも耐えられる。

 ハイハイわかりましたよ。


 左手の液晶をいじれば着脱ができ、通信や艦内の情報とかが見れる。

 ……よしスマホみたいなもんだと。

 これが宇宙船で着る超高性能のスーツですか、了解です。


 食事はここで食べるか食堂で食べるか? 

 まあせっかくだし食堂行ってみるか


 無駄に広い通路を白ウサギに誘導されて10席ほどの喫茶店のような部屋にたどり着く。

 フリルのついたエプロンを着たピンクウサギがタブレットを持ってやってくる。

 見ると今注文できるメニューが映し出される。

 

 トースト、サンドイッチ、ホットドッグといったパンにドリンク、スープ、サラダと軽めのスナックやデザートと思った以上に豊富なラインナップ。

 とはいえ寝起きでそんなに入らないのでホットドッグとコーヒーで。


 どうも食堂はピンクの担当のようで白ウサギは入口の付近でちょこんと座っている


 ほどなくしてトテトテと朝食を持ってきた。

 日本のレシピで作ったが材料がまったく同じでないから味が違うかも? 

 普通にうまいけど。

 好みの味があれば教えてくれ?

 了解だ。


 食事が終わり、コーヒーをおかわりして飲み始めた頃を見計らってカグヤが食堂備え付けのモニターに現れる。

 一通りのあいさつの後に食糧事情を語りだした。


 俺はあえて今、昨日の件には触れない。

 相手の精神状況がわからないのであればあえて藪をつつくこともあるまい。

 俺が社会人時代に学んだ仕事だけの付き合いの女性社員との接し方だ。

 特に昨日会ったばかりの人間ドラゴンの沸点などわかりもしない。


「創造主は人類が宇宙に出る際に食糧が惑星ごとにあまりに違うと極度のストレスになると考え、生態系は似通ったものにしようとしていました」


 食は大事だ。

 慣れ親しんだものが口にあるというのは納得するところだ。


「とはいえ、地球でも同じ作物でも品種改良で味やら色が違うとか、絶滅した動物とか、国や民族によっては食べられてないものがあると思います」


 あるな。

 今簡単に思いつくだけでも両手で足りない。


「今、あなた1人なら5年以上は持つくらいの食糧があります。これは惑星ワイズが300年前に滅びる前に入手していたものがほとんどです。現在の技術では生鮮食品でも500年くらいは保存できますので賞味期限的には問題ありません」


 300年前と聞いてギョッとしたがさっき食べたものをおかしいとは思わなかったし、500年保存がきくというなら信じるよ。


「ありがとうございます。先ほど召し上がった小麦やらコーヒー豆も似たような品種を使ってますので若干の違和感で済むと思うのですが……」


 舌が肥えてませんのでそこまでわからないので気にしてくれなくてもいいんだが、本題はそこではないのかな?


「はい、まずわが惑星には米を食する文化がありませんでした。あと調味料として味噌がありません。醤油に似たものはありますが、製法がだいぶ違うので違和感があるかもしれません。卵はあるのですが生卵を食すという文化がないので消毒状況が不透明で現状では生では食べれません」


 他にも納豆がない、漬物がない、似たような魚はいるが干物がないなど。

 まあしょうがないよね。


「味噌、醤油の調味料や漬物干物などの材料があるものは生産プラントで至急作っています。ただ米に関しては種そのものがなく、ほかの惑星で入手するまでお待ちいただけませんか」

「仕方ないし、かまわんよ」


 ないものは仕方ない。

 だが、そんな俺のあっさりした反応が想定外だったのかカグヤがどころかピンクウサギまで驚いてますが。


「いいんですか?」

「いいも何も、どうしようもないんだろう?」

「それはそうですが……早く食べたいから早急に出発するとかは?」

「出発できるの?」

「その可能性が高いと思いまして無理すれば出発できる状態ですが」

「無理なんかしなくていいよ、安全安心に準備できてからで十分だ」


 なんか悲壮な覚悟漂っているカグヤにドウドウと抑えるように言う。


「……本当にいいのですか?」

「いいもなにも、……何十年も米が食えないとかいう?」

「いえ長くても半年以内には」

「そっか、1年くらい米食わなくてもいいから慌てず安全に出発できるように準備して」


 俺の言葉に信じられないものを見るように、


「人間は食べ物でストレスが増えも減りもする生き物と聞いていますが?」


 大げさな。

 そりゃあ慣れ親しんだものが落ち着くけど半年程度でどうにかなるわけでもないと思うぞ。

 それに米がないとなると主食はパン? 

 パンがあるなら小麦からパスタとかピザもできるよな?

 鰹節や青のりがなくていいなら焼きそばとかお好み焼きもできると。

 うどんはだしと醤油を製作中で1週間以内。

 ラーメンは味噌、醤油は無理だが、塩やとんこつぽいものなら今日にでも可能と。


 ……特に問題ないんじゃね?

 昼飯はと塩ラーメンを頼むわ。

 餃子は……タレが無理かな。

 じゃあ、から揚げを3つくらいつけて持ってきて。


 俺の言葉に了解と敬礼するピンクウサギをしり目にカグヤはいまだに俺を信用してないのか。


「お願いですから、我慢できなくなったら無理せず言ってくださいね」


 お前の中で俺はどういう扱いなんだ?


遅まきながらブックマークありがとうございます。

励みとなります。


これからも毎日19時台に更新していくように頑張りますので読んでくださるとありがたいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] きっと食べ物の好みでキレる船員達が過去に大勢いたんでしょうねえ。
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