表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/316

#72 惑星マイタン、出港

「……どうも御見苦しいところをお見せしました」


 10時間きっかりに俺たちは惑星マイタンを出航した。

 ポーラは艦橋に用意した副操縦席で遠ざかる母星を見て大粒の涙を流していたのだが、ようやく落ち着いたようだ。


 カグヤが俺だけに見えるように文字でポーラを慰めたほうがいいのではないかと指示されたが、そっとしておく方が優しさだと断る。

 決して面倒くさいと思ったわけではない。


 あと蒼龍が絶えず連絡をよこしてきているようだが、創造主の与えた試練に俺が何かできるわけでもないので無視を続ける。

 こっちはマジで面倒くさいと思っている。

 

 出航までの間に惑星マイタンの教団やら入国管理局は何も言ってこなかった。

 今それどころではないのだろう。

 まあ頑張ってくれたまえ。


 さてここから次のゲートまでは18日かかるという。

 俺的には引きこもって今期始まったアニメの原作小説を一気に読みたいところだが、まだポーラをまじえて決めなければならない話があるのだが……その前に。


「カグヤ。今日の服装はどうした?」


 いつもは俺と同じくスーツのみの姿なのに、今日はふわっとしたケープを羽織っている。

 ちなみにいうとポーラも白い修道服に龍をかたどったロザリオを首から下げている。


 宇宙船では引っかかって危険だから上着を羽織るなって言ってなかったか?


「言いましたよ。でも惑星マイタンの感覚では、スーツのみで歩くのは水着で歩くような感覚だそうでして」


 ポーラを見ると顔を真っ赤にしている。

 なるほど、だから上着を着せたと。

 まあその辺はセクハラになるから深くは触れないでおこう。

 で、カグヤの格好の意味は?


「そんな価値観の少女が自分は服を着ていて、同性の姿の私が水着姿だとどんな気になると思います?」


 なるほど、特例とはいえ他が水着姿だと落ち着かないかもしれないな。

 自分もそうするべきか、でも恥ずかしい。

 そんな思いがストレスになるかもしれない。


 よし、そこまではOKだ。

 なら俺も何か羽織った方がいいのではないだろうか?

 ポーラもおっさんの水着姿を見たくはないだろう。



「そう思って一応確認しましたが、男性は高僧は常に修道服を着ていますが、一般の人はスーツのみで、冠婚葬祭とか改まった儀式のときだけ着るようです。ですので船長はそのままでかまいません」


 いや、前にも言ったが俺もインナーで動いているようで落ち着かないのだが。


「でも船長は宇宙船に不慣れですし、危険防止のためにその格好でいてください」


 俺のストレスはいいのか?


「今の今まで気にしなかった人が何をいまさら」


 俺もこれからは人の目が増えるから恥ずかしい、とかいうとセクハラ扱いされるだろうか?


「あと蒼龍教では義務教育は宇宙船のコンテナを教室に使っていますのでポーラは宇宙船には慣れています」


 宇宙船に義務教育から慣れさせる腹づもりか。

 そこまでやってもスペースオペラの人材が生まれなかったどころか、蒼龍教に、いや蒼龍に止めを刺す原因となった最高司祭が生まれるのだから世の中うまくいかないもんだな。


 まあそういうことなら仕方ない。

 人の服装に注文つけてセクハラ扱いされるのはごめんだ。

 また自分の姿がセクハラ扱いされるのもごめんだ。


 そんなのは支社長だけで十分だ。

 女性の作業服を新調する際に、女性に委員会を作らせ決めさせろと指示を出した。

 アンケートの結果、黒の作業服になったところを「女性がそんな汚い色を着るな、ピンクを着ろ」といって大声で怒鳴りまくり、ピンクにさせ大顰蹙をかったのを間近で見ていたもんだ。

 女性が着るのだから女性に決めろと言っておいて結局は自分で決める姿勢もそうだが、好みの押し付けは良くないよな。

 今更女性だからピンクというのは古いとしか言いようがない。

 セクハラでありパワハラである。


 ついでに言うと作業服の見本・試着品を手配して、ひっくり返されてまた手配したのは俺だった。

 ほんとあのハゲ、死刑にならないかなぁ、……無理だろうなぁ。



「私のわがままで申し訳ありません」


 ポーラが頭を下げるが、それには及ばない。

 服など好きに着ればいいと思う。

 何ならたまには修道服以外もチャレンジしてみるといい。

 

「修道服以外ですか?」


 セクハラ的な意味ではないぞ。 

 俺の星では女性はファッションが好きでな、いろんな服を楽しそうに着てたよ。

 宇宙船での生活に彩りがあるかもしれないぞ。

 ここまで言っておいてなんだが、カグヤ、服って用意できるのか?


「問題はありません。裁縫ユニットは稼働しています。船長の部屋着もいつでも新品に新調できますよ」


 ああ、それはよかった。

 ポーラも気が向いたら試してみればいい。


「そうですね、考えてみます」


 今までファッションには興味がないというか選択肢がなかったのでピンと来ないのだろう。

 これから他の惑星に行ったときに、そこの人たちを見て何か思ったときに選択肢を用意しておくのも船長の務めだろうよ。



誤字報告ありがとうございます。


ブックマークが2000を越していました。

評価もそうですが本当にありがとうございます。

皆様には毎日やる気をいただいております。


これからも頑張りますので応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ