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#61 ドラゴンと宗教と巫女と魚を巡る狂騒曲 7

 魚?

 海や川にいるあの魚のことだよな?

 ……蒼龍教って魚を食べることが戒律で禁止されてるってことか?


『うむ』


 まあ地球でも宗教によっては牛とか豚とか食べれないものがあった。

 魚もあった気がするのでそれほど驚くことではないが。


『蒼龍教では蒼き海には龍神が住む。ゆえに海にいる魚は神の眷属であるので食してはならない』


 お前、魚が眷属なのか?


『我が言ったわけではない。なぜか昔からそう人間が思い込んでいる』


 まあ宗教だからな。

 とはいえ緊急処置ならしょうがないとは思うんだが、神聖なものなら食べ方さえわからないのではないのか?


『戒律でも海の魚がダメだけど淡水魚ならOKとか、貝やエビ、タコ、イカ、カニは食べてもOKとかあり、そこまで厳密なものではないんだ』


 人の解釈によっていろいろあるよな。

 まあ日本でもウサギは鳥とこじつけて食べてたという。

 それくらいの抜け道はあってもいいとは思う。


『嵐で浜辺に打ち上げられた魚を調理したという』


 よくそんな嵐の時に浜辺まで行けたな?


『管理頭脳は警告したが、小さい子は限界が近くて見てられなかったのだろう』


 なるほど。

 でまあそれをみんなに食わせたのか?


『勿論、戒律で禁止されているので川魚だと嘘をついて皆に食べさせた』


 とはいえ、それが嘘だと気がつく子もいたのでは?


『上級生はな。だが空腹なことでポーラの優しい嘘に甘え、下級生は気にもせずに食べた』 


 まあ仕方ないわな。


『そうして飢えをしのいで救助を待ち、翌日全員無事助かった』


 ありがちだが、いい話ではないか。

 まあ問題はここからなんだろう。


『救助された後、ポーラはまず先生に戒律を破ったことを告げ、下級生には嘘をついて食べさせたので罪の免除を嘆願した』


 正直なことで。

 川魚だと言い張ればわかるまい?


『危険回避のために管理頭脳が見張っているので、調べれば海のものとすぐにわかる』


 見張るだけで食料の調達もできない管理頭脳が、ここで足を引っ張るわけか。

 まあ安全のため、また学校行事と考えれば採点も必要だし、監視されるのはある一定の理解はしよう。


『学校側は緊急避難のための措置としては決して最善ではないが仕方がない、と不問にする予定であった』


 最善だと思うけどな。

 悪天候の中だと食料の調達もままならないだろうし、年少者が空腹で弱っていくのを見ていられない。

 16歳の少女が他にできることがあるのだろうか?


『うむ。学校関係者も、その上の教会の人間も同情的で、子供のしたことだからという意見が占めていたのだが、そこに異を唱えたものがいた』


 まあそんな空気の読めないバカはどこにでもいるわな。


『蒼龍教の最高司祭だった』


 トップか。

 俺の前職と一緒だな。

 社長や専務や支社長を思い出す。


『自分が食べただけならまだしも、なにもわからない年少者に嘘をついて戒律を破らせるなど言語道断の悪辣卑劣な行為である。神への背信行為で、他者の信仰を妨げる行為である。断罪せねばならないと』


 ちなみに蒼龍は背信行為だと思っているのか?


『まったく』


 それはよかった。

 当の本人がそう思っていたらこの話を打ち切るとこだったが。


『魚なんか好きに食えばいいのにとは思っているのだが、信者たちはそうは思ってくれない。勝手に決めた戒律なのに面目だのキャリアに傷がつくと騒ぎたてる』


 子供だからでは済まないのか?

 子供でもたった一度の過ちで終了って狭量すぎだろう。


『今回問題になったのは、魚を食べた最年少の少年は最高司祭の実子だったということだ』


 ああ、理解した。

 そんな偉い人間の子供は幼少期から立派であるとしなければならないのに、初の課外活動で魚を食べたのは汚点なんだな。


『そういうことだ。しかも悪いことに最高司祭の子供が遭難したと報道もされていて注目度が高く、最初は一人だけ戒律を守って食べなかったというシナリオにしようとしたが、救助されたときは一番元気で、何も食べていなく衰弱しているには無理があり、魚を食べたことを隠しきれなかった』


 それはなんとも言いがたい。


『で、ポーラを悪人に仕立てあげ、被害者とすることで面目を保とうとした』


 生前の社長や支社長を思い出すクズっぷりだな。

 部下に責任を押しつけるために無理を通す姿勢が非常に腹が立つ。


『宗教裁判では最低でも破門になり、異端者の集められた特区に送られることになるだろうと』


 罪人の流刑地的な意味合いだが、聞けば神に祈ることが許されないだけで生活の保障はあるらしい。

 教義に不満があっても生活を保障してくれるなどどういう理屈かなと思うのだが、この国の信心深い信者にとっては神に祈れないのは苦痛らしい。


 トップの一言で一人の人生を狂わせていいものかと思うんだが?

 人が集まって権力が生まれると結局腐っていくものなのかね。


 と俺的には憤りもあるのだが、だからといって神たる蒼龍が首を突っ込むようなことか?

 世界全体から見たらよくある出来事だろう?


『それはそうなんだが、閉鎖環境適応テストで彼女はこの星の始まって以来の、数値を叩き出していて、卒業してからゲートシミュレーションさせて、将来的には宇宙に出る逸材なんだと期待していた。ここで破門とかになったら計画が水の泡だ。だから日下部船長に宇宙に連れていってもらいたい』


 寝言は寝て言えよ、バカドラゴン。


総PVが10万超えていました。

皆様ありがとうございます。



連載開始時はあまり読まれないようならこのシリーズで辞める予定でしたが、まだ続けてもいいのかなと勝手に判断しております。


ちなみに今シリーズは来週日曜までかなと思っています。

その後はしばらく日常編に戻ります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 意味合いとしては『海亀のスープ』に近いのか……。
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