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#58 ドラゴンと宗教と巫女と魚を巡る狂騒曲 4

『そもそも我が星の住人は昔から闘争心というものがなくて、ドラゴンに対抗しようとか利用しようとかなく、ただただひれ伏して、我の与える試練を喜んでこなしていたんだよ』


 それはカグヤに対しての自慢か?

 はたまた地球人の俺が闘争心が有り余ってるからドラゴンに反抗的だとでも?

 

『いや、そういうつもりではないんだ』


 蒼龍は取り繕おうとして若干思考し、


『単に事実のつもりなんだがなぁ?』


 開き直った。

 カグヤがどうかは知らんが俺はいい、続けよう。


『でまあ、集落から国を形成するくらいまで人が増えていったんだが、その頃には我を神として蒼龍教という宗教ができて、みんな信者となって崇めるようになってな』


 反対勢力はまったくなく?


『さすがにゼロではなかったが、大きな戦争もなく小競り合い程度で結局統一されてな』


 それは立派というか多様性がないというか。


「微妙なところですね」


『宇宙に出るくらいまで科学は発展したんだが、宗教離れは起きず、与えられた技術は神の御業として深く感謝し、しまいには星自体が宗教国家となってしまった』


 まあそういうのもありなんじゃない?

 宇宙は広いんだし、一つくらいそんな星があっても。


『我もそう思った。マイタンの住民が他星に行ったとき、逆に他星の住人がこの惑星に寄ったときに価値観の違いからスペースオペラのドラマが一つや二つ生まれるのではないかと。そうすれば創造主もさぞお喜びになるのではと』


 喜びそうだな。


「喜ぶでしょうね」

『だろう?』


 よくやったと褒めるまであるな。


『そう思って我も慣れない神様業をやってみたのさ』


 永久機関や管理頭脳を神の御業として信者の生活を最低限保証し、信仰によって信者のランクを上げる。

 音楽や芸術は神にささげるもの。

 スポーツは神を喜ばせるもの。

 笑いは神を笑顔にし、創作物は神の退屈を和らげる。


『とまあ、そういう建前にしておけば、そこまで他の星より文化が劣るとかいうことはなくなるし』


 そういうものかね。


『そんなこんなで今となっては若干宗教離れが起き、熱心な信者が2割、普通の信者が6割、あまり興味がない信者が2割になっている』


 あまり興味がない2割は肩身が狭いのか?


『別に生活は保証されているし、信者のフリして働いてたりするから特には』


 この星の人間は義務教育として10年ほど蒼龍教の寺院に通う。

 そこで勉強と蒼龍教の教義を教わる。

 卒業して一般信者として生活する人間が大半で、普通の信者で週に一度の礼拝に行くくらい、興味がない信者でも冠婚葬祭は関わるという感じで、それ以外はどこの惑星と大差ない生活をしているらしい。


 厳しい戒律とかはないのか?


『あるにはあるが、それをするのは義務教育が終了し、さらに上のランクの高僧になってからだ』


 長寿である以上、上のポストはなかなか空かない。

 ゆえに偉くなるには厳しい修行に耐えるという試練が必要となり、その試練を受けるためには〇年宇宙港で勤務するとか、教師をするとか、何か創作活動で成果を出すなど多岐にわたる。

 

 そういったことを積み重ね、試練のクリアーを繰り返し、たどり着くのが最高司祭。

 他惑星の国家元首に相当する地位だ。

 その他大臣だの役人も高僧で構成されており、宗教惑星と呼ばれるゆえんである。

 

『一応言っておくが我が口出ししてこのシステムを作ったわけではないぞ。そこまで干渉はしてない』


 じゃあ蒼龍は何してたんだ?


『才能のありそうな子に神と称してお告げを』


 それもベラベラしゃべると威厳もくそもないので、厳かに数センテンスの単語で伝えたという。

 それがストレスになって俺との会話を喜んだようだ。


『ありがたがられるのと、ぞんざいに扱われるのってどっちがいいのかね?』


 知らねえよ。

 ただ言えるのは、いつでも会話打ち切ってもいいんだぞってことだ。


『話を続けよう』


 それは残念だ。

 話を戻すが、才能がありそうってのは何のだ? 

 似非神を信仰する才能ってわけでもないだろう?


『似非神って……、なんでもない。宗教惑星の神になったが、本来の目的はスペースオペラの世界を作る事だからな。宇宙空間に適性のありそうな子に試練として閉鎖環境適応訓練とかゲート突入訓練をさせて、行けそうな子を神の使命として宇宙に旅立たせている』


 なるほど。

 他の惑星のように宇宙に行きたいと希望を持っても才能がない。

 才能があるが、宇宙に興味がないではなく、宇宙に適性がある人間を試練だといって宇宙に出すほうが効率はいいな。

 善し悪しはともかく。


『実際のところ成功率は高くないのだよ。才能がある子をとりあえず定期便として宇宙に出させてみるが5年もしないうちに根をあげてな。場合によっては精神を病む。そうなるとこっちも無理強いはできないし、教団のほうも神の試練を5年も耐えたと褒め称え、高僧の階段を進むとなると定期便が試練の一つになってしまって、なかなかこの惑星から飛び立とうとしないんだよ』


 信仰があっても宇宙は厳しいのか?

 

『一人で飛び立たせるから悪いのかと数人で宇宙に出したこともあるんだ。もともと高僧になるには集団生活になるからね。でも地上でうまくいってるメンツでも宇宙に出ると途端に仲が悪くなるってパターンが多くてねぇ』


 今更だが宇宙船って基本1人乗りなの?


「国家の運営する定期便では数回の研修は2人でいきますが、基本は1人が多いですね。定期便の運転手が少ないのもありますが、航海中に喧嘩した場合、修復が難しいという理由が大きいですね。その後2人とも宇宙に出るのをやめる場合もありますので、一度に2人リタイアされるより、1人ずつリタイアしてもらったほうが費用対効果からしたらマシですしね」


 とカグヤの談。

 一人では精神を病み、複数だと喧嘩する。

 宗教でもその壁は超えられず。

 ……スペースオペラするのも大変だねぇ。


「そうですね。だからなぜ船長が大丈夫なのか? とすべてのドラゴンに注目されているんですよ」

『ついでに地球のドラゴンへの問い合わせも殺到しているわけだ』

誤字報告ありがとうござます

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