#57 ドラゴンと宗教と巫女と魚を巡る狂騒曲 3
『さて何から話したものか?』
なるべくわかりやすく頼むよ。
俺は基本的にそっちのことはおろか、宇宙の一般常識さえまったく知らないからな。
『そうなると簡単にマイタンの歴史となるが、……長くなるが』
手短に、って言いたいところだがどうせ時間はあるんだ、のんびり行こうぜ。
『いや、こちら的にはそれほど時間があるわけでは』
そうはいってもこっちは今、出航したところだ。
ゲートまでの1週間は通常航行で早くならないわけだし。
『まあ……それはそうなんだが』
まあ1日2時間としても14時間はあるぞ。
『え? 2時間?』
俺もアニメとか漫画とかゲームで忙しいからな。
今日は2時間くらいで切り上げさせてもらえれば
『……えっと?』
慌ててもいいことなんてないからな。
毎日少しずつでいいだろう?
『いや、でもな……』
なんなら酒飲みながら話すか?
俺も普段はあまり初対面の人と飲むのは好きではないんだけど、話が長くなるようならそれもありかなと。
『いや、我は飲食はしないって』
それは知ってるよ。
飲むのは俺だけ。
話すのは蒼龍。
時々わからない単語を解説するのがカグヤ。
うん、これっていい感じじゃね?
『……おいカグヤ、いつもこんな感じなのか?』
「そんな感じですよ。今日はまだ艦橋で座っている分、話を真面目に聞こうとしている感じを受けますね」
『これでか?』
俺的にはせめて喫茶室でコーヒー飲みながらと思うのだけど、初日くらいはと自重した。
明日以降、話が2時間超すぐらいに長くなるようなら酒飲みながらとか、ネットしながらとか、ゲームしながらという方法をとらせてもらいたい。
『それはあんまりじゃないか?』
「いえ蒼龍、うちの船長はお酒を召し上がっていても話だけはちゃんと聞いてくれますし、翌日もちゃんと全部覚えてるんですよ。ネットしながらも大丈夫です。ゲームしながらはまだ経験がないですので、私の代わりにチャレンジしてみてください」
『なんかひどくないか? お前はそれでいいのか?』
「それは価値観の違いですよ。誰もがあなたみたいに神として人間に敬われているのではないのですよ」
そういった意味ではカグヤは人間に滅ぼされたドラゴンだからな。
さぞやいろいろあったことだろう。
「現在進行形ですけど」
そこはあえて気が付かないふりでいこうと思っている。
で、蒼龍。
どうしようか?
ゲームしながらでいいか?
ちょうど、ユニット育成が失敗してやり直すところなんだよ。
念のため育成前にセーブとっておいてよかったよ。
今度は武器はブーメランじゃなくて短剣でいくようにスキルを振り分けようと思うんだよ。
『申し訳ないが、久々の会話のキャッチボールは楽しいのだけど、……あまりぞんざいに扱われるとちょっと虚しくなるのだが』
残念だな。
「ええ、本当に残念です」
『お前ら少しひどくないか?』
「これでひどいというなら私なんてどれだけ過酷な状況にいると思うんですか?」
ちょっと待て、カグヤ。
俺はお前をそんなに過酷な状況に追い込んでるつもりはないんだが?
「客観的にみてください。第三者がひどいっていうくらいですよ」
いや待て。
よく考えてみろ。
その第三者の目が当てになるとでも?
惑星の住人に神様扱いにされて、敬われて当然と勘違いしているドラゴンの言葉が何の保証になろうか?
「……まあそれはそうですけど」
『いや、そこは否定してもらいたいが』
しょんぼりするなよ。
そりゃあ敬ってほしいとか、敬語使ってほしいというならするぞ、それくらいはできる。
やりたいわけではないがちゃんとできるはずだ。
ただその後、精神的な疲労の蓄積でしばらく引きこもることになり、蒼龍の抱えたトラブル対応はできないかもしれないが。
……待てよ。
そもそも話を聞いてくれといわれただけだから話を聞くだけでいいのか?
……なんだ、トラブル対応することもないのか。
身構えて損した。
なら敬語で話しましょう。
おお、惑星マイタンの神、偉大なる蒼龍。
私のような下等な引きこもりに何か御用でしょうか?
『申し訳ない。冗談です。気楽に、ため口で話を聞いてくれると助かります。我もえらそうな感じがするけど、単なる1つのドラゴンシステムだから』
頭を下げ、へりくだる蒼龍。
『あとできれば力を貸してください』
残念だ。
このまま敬語を使った精神疲労で引きこもる作戦が。
そして何食わぬ顔で逃げ切る予定が。
「船長って、そういう姑息な手段がよく一瞬で思いつきますよね?」
姑息っていうな。
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