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#48 密航少女はスペースオペラに必要か(アポイント編)

「ちょっとひどいじゃない! 話も聞かないでいきなり通報するなんて最低!」


 いきなりモニターに少女が現れ、けたたましく騒ぐ。

 明るい色をした髪をツインテールにしたギャル風の少女がつり目を上げているのだが、この子が誰なのかは察しはつく。

 が、なぜいきなり現れたのかは不明だ。


「カグヤ、この船のセキュリティはどうなっているんだ? この前のポンコツ海賊といい、通信に割り込まれすぎだろう」


 とりあえずカグヤを非難する。


「わざとです。一部侵入しやすいポイントを作って隙を見せておいた方がセキュリティ的にはいいんですよ。あまり強固だと悪目立ちしますから」


 だがカグヤは意に介さない。


「でもそれで侵入されたら意味がないだろう?」

「ご安心を。トラップ満載の隔離された回線です。通信くらいしかできませんよ」


 それでも何か言い返そうと思うのだが、


「ちょっと! 無視しないで! 私の話を聞きなさいよ!」


 と空気を読まないで割り込む密航少女にイラっとする。


「うるさい、黙れ」

「な、何よ、いきなり大声出して」


 密航少女は若干ひるむがそれでも従わない。


「黙れというのが聞こえないのか?」

「人を無視しておいて命令するなんて何様よ!」


 俺は大きくため息をつく。


「3度目。これが最後だ。黙れ」

「……っ」


 ようやく空気を読めたのか黙る。

 だが顔は不満タラタラでまだ言い足りないのを我慢している、と言った感じだ。


「第一声が謝罪なら話を聞いてやってもよかったが、ハナからこっちにクレームいれるとは頭がおかしいのか?」

「何……」

「黙れ」


 密航少女が何か言おうとしても言わせない。


「俺が許可するまで喋るな。一言でも発したら回線を切る」

 

 さあどうするかな?

 黙ったままだが俺をスゴい形相でにらんでいる。

 マーロン三世もそうだが、なんか面倒なやつばっかよってくるよな


「お前のせいで損害が生じた。よりにもよって食用肉の運搬箱に入りやがって。あんなことされたら衛生面から売り物にならない。肉の再発注、異物混入の対策、侵入経路への対策、入国監理局への対応とどれだけ金と時間がかかることか」

 

 まあ俺はまったく何もしていないが。


「こっちはせっかくの惑星だっていうのに、陸に降りる時間も惜しんでずっと宇宙船にいるっていうのに、そのトラブルの主が詫びの一つもなく、人を何様だとか最低呼ばわりするんだ。そりゃあさぞ立派な立場でご高説があるのかもしれないが、俺はよほどのことじゃないと聞く耳は持たないぞ」


 軽い態度と口調で、目だけは本気で睨みつける。

 そこまで俺の話を聞き、ようやく密航少女は自分の立場が分かったのか神妙な顔し、その後しばし悩んだ後、


「…………」


 両膝をつき、胸の前で手を合わせる。

 手の合わせ方も手の平同士ではなく手の甲同士で合わせ、その後目礼をする。


「――?」

「この国の最上位の謝罪の姿勢です。日本の土下座だと思ってください」


 何かと思ったらそういうことか。

 俺からしたら変わった謝罪方法だがところ変われば文化が違う。

 あれだけ噛みついてきた少女が、いきなり土下座したとするのであればようやく会話ができるというものだ。


「今日は忙しい。明日の同じ時間なら少し時間を作ってやる」


 だが急いで今日話をすることもあるまい。

 話の主導権をこちらに取る意味でも、相手を冷静にさせる意味でも時間を与えるに越したことはない。

 

 密航少女は何か言いたそうだが、返事を待たず通信を切らす。



「船長にしては珍しく……怒っていましたね」


 カグヤが言葉を選ぶように言ってくるが、


「いや、全然」


 俺自身は別に怒ってもいない。


「そうなんですか? あの子に高圧的だったからてっきり」


 悲しいことに生前、大声で自分の要求を言いまくったり、ごねたりする人間の相手は山ほどしてきた。

 上司や取引先もそうだが、総務に苦情や要求をいう従業員相手にもなだめすかしてやってきた。

 別に俺が悪いわけでもないのに、間に挟まれ対応してきた。

 楽な仕事ではなく、その後はイライラして酒量が増えたもんだ。


 そんなときいつも思ってたんだ、高圧的に対応したいと。

 その夢、一度くらい叶えてもいいだろう?

 相手は気を使わなくてはならない人ではないのだから。


「そうでしたか。それならいいんですが……すっきりしましたか?」

「うーん、どうかな?」


 支社長なんかは大声で高圧的に怒鳴りまくっていたが、実際何が楽しいのかなとは思うな。

 頭下げるのもしんどいが、大声で威圧するのもしんどい。

 相手に土下座してもらっても何の喜びもない。


「まあ時間の短縮になったのかなぁとは」


 同じ辛いなら短期間のほうがましなのか? 

 だが女の子相手にイキがってもなあ、という罪悪感もあり微妙なところではある。

 そんなこんなを考えるから人付き合いというのは非常に難しい。


「つまり人と会話しない、引きこもり最強説を唱えたい」

「ダメ人間的なことを言わないでください」

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