#45 寿命と健康についてのアレコレ
「昨日の遺伝子操作の話でふいに気が付いたのだが?」
日課の艦橋での雑談の時にふと思い出す。
「なんでしょう?」
「生まれる前に遺伝子操作するのなら俺は不老長寿にはなれないのか?」
長くブラック企業で働いてたせいで辞めたい、むしろ死にたいと思っていたせいか長寿には興味がないのだが、宇宙船で一人で生きるなら、これ以上歳をとるとウサギたちに介護されるようになるのではと。
まあ今も若干介護されているような気もするが。
「聞いてないのですか?」
カグヤがびっくりした顔で俺を見る。
その展開、前もあったな。
女神さまからは何一つ聞いてないぞ。
「失礼しました。船長はすでに不老長寿になっています」
いつの間に?
「こちらに来た時には」
何かされた記憶もないが?
「それは創造主ですから」
生まれる前の遺伝子操作が必要なんだろう?
「ですから創造主ですから」
つまりは何でもありなのですね。
SFよりファンタジーの世界なのではないのか?
「ですからスペースファンタジーを許容してくれる人を求めたのでは?」
迷惑な話だ。
「船長はもうこれ以上老化することはありませんよ」
とはいえ40も過ぎたらいろいろ衰えてますがね。
「健康面では医療技術が発達してますからそこまで心配することはないかと思いますよ。船長の持っている生活習慣病くらいならもう完治してますし、青ウサギのいう通りにトレーニングすれば肉体改造も可能ですよ」
俺、生活習慣病だったのか?
てか治療受けた気がしないけど?
「いつぞや酔いつぶれて医務室に運ばれたときについでにしておきましたよ」
健康にしてくれて文句も言えないが、いつの間にって感じなんですが。
すると俺は今健康体で、寿命が100年以上伸びた状態?
「そうですね、寿命で言うなら200歳近く生きられると思いますよ」
思いがけず地球で一番の長寿になったもんだ。
まあ唯一の救いは働かなくてすむことか、……いや宇宙船での貿易は仕事のうちかなぁ。
てか宇宙生活は何か体に悪影響とかないのか?
「宇宙線は悪影響がありますけど、恒星間飛行する宇宙船ですよ、完全に対処できます。無重力が身体機能を損なうこともありますが、それも重力発生装置で地球と同じ1Gですのでそちらも問題ありません」
言われてみれば宇宙船で普通に重力あるな。
「今更ですか?」
いやなんか何の違和感もなく生活できるので無重力とか考えてなかった。
「人間は地上の上で立って生活する生き物ですので、無重力だと心循環器などの影響もありますし、筋肉や骨も衰えるものですので、艦内は地上と同じ重力にしています。もしも無重力や低重力が体験したければ倉庫のコンテナ部分へ行ってみてください」
重たいものを保管するなら重力が軽いほうが運びやすいからか。
「そういうことです。月と同じ重力にしていますが、無重力にもできますので」
月の重力は1/6だったかな。
もうちょっと体が動くようになったら一度行ってみるのもいいかもしれない。
ただまだ衰えきった体なのでそんなところに行くと怪我するようにしか思えないからな。
「慎重なのは結構ですけど、後回しにして結局行かない気がしますが」
後回しにするのは確かだが、行くとは思うぞ。
それが1年後になるか5年後になるか10年後になるか。
人生200年になったことだし、慌てることもないだろう。
「まあいいですけど」
カグヤはあきらめた顔で肩をすくめる。
「宇宙生活における最大の健康被害も船長には今のところ問題なさそうですし。そう考えると長い人生で長い付き合いになります。時々勧めさせてもらいますよ」
まあそうしてくれ。
てかなんだ?
宇宙生活における最大の健康被害って?
「何度も言ってますよ。閉鎖環境によるストレスや、娯楽の少ない環境での精神異常等の心的要因です」
ああ、確かに何度も言われているな。
でもまあ何度も平気だと言ってるのに信じてもらえてないしな。
「同じく何度も言ってますが異常ですもの。人間って長く個室にこもれる生き物ではないはずなんですけどねぇ」
不思議そうな顔で俺を見ないでくれるかな?
しかしそういわれると引きこもりってすごいスキル持ちなんじゃないのか?
「地球は惜しいことしましたね。ドラゴンと共存さえしてたらスペースオペラの逸材がゴロゴロしてたのに」
いやどうかな?
宇宙船の生活は耐えれるかもしれないけど、スペースオペラになったかどうか。
俺だっていまだに王道なスペースオペラらしいことしてないしな。
「船長は変則派として期待されているのでは?」
まあそう思うことにしますか。
俺に王道は厳しいしな。
感想ありがとうございます
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今後の予定を活動報告に書いています。
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