#44 常識の時間 7(異星人)
急な残業で投稿が予定より遅れました
今月いっぱいは突発的に残業がありそうで、投稿が遅れるもしくはできない可能性があります。
ご容赦ください。
大翠到着まであと1週間。
購入リストの作成をしつつ、運動をして、カグヤに現状と常識を学ぶための雑談をこなす毎日。
ブラック企業勤務に比べたら天国のような環境だ。
睡眠に6時間当てても10時間以上は自分の時間を持てる。
こんな幸せなことは他にないだろう。
「普通の人は、毎日10時間も自由な時間があると持て余すものなのですがね」
その辺が異星人と俺が相いれないところではある。
働かなくてもいいのになぜ働くのか?
女神さまから設定を受け入れるタイプの人間と評されているが、俺はこの一点だけは受け入れられない。
「創造主もまさかそんなことで激怒されるとは思ってもいなかったでしょうよ」
モニターに映し出された青く丸い惑星、大翠を見てふと思う。
「基本的に宇宙にある移住可能惑星って地球とほぼ同じって言ってたよな」
「ええ、大きさや酸素濃度、重力などほぼ同じですね」
「自転とか公転も?」
「はい。恒星からの距離とか一緒ですね。ちなみに衛星の数も一緒です。違うのは星系内の非居住型の惑星の数くらいでしょうかね」
「じゃあ住んでいる環境というか気候とかもほぼ一緒?」
「それは船長の知る地球とはやや違うかもしれませんね」
ほう?
「だいたい地球より住みやすい気候ですかね」
なんで?
「ドラゴンの恩恵、知恵を授かってませんからね。環境破壊をあれだけすれば異常気象も止まりませんよ」
またドラゴンに行きつくのか。
「まあ私たちは人を宇宙に旅立たせるために導く存在で、人をそのレベルまでもっていくには星の環境維持も仕事のうちですから。……壊されなければですが」
申し訳ございません。
「もちろん異常気象はありますし、土地によっては酷暑・極寒の地もありますが、人が生活する場所は過ごしやすいはずですよ」
土地によっては一年中温暖な場所、避暑地的な場所、四季がある場所などあり好みの環境で過ごせばいいという。
「なら人類の姿ってのも惑星によってあまり変わらないのか?」
地球のSFなどでは、ファンタジーで言うところの獣人とか異形種的な知的生命体がよく出てくるがそういうのはないのかな?
「人種以外の知的生命体は現在確認されていません。また進化の過程、もしくは結果として見た目が著しく変わることはありません」
じゃあいきなり入国管理局で人以外が現れてびっくりすることはないな。
スペースオペラの世界だから、少しくらいそういう知的生命体にあってみたいという気もなくないのだが。
「いえ。少数ですがそういう人たちもいますよ」
え?
でもさっき。
「続きがあります。どこの惑星も出生前に遺伝子操作を行い、不老長寿の処置を行います。惑星によってはそれ以外の遺伝子操作が当たり前の星があります。病気になりにくい体や、身体能力の向上、あとは外見等になります」
出生前の遺伝子操作と聞くとSFぽいが、倫理的な問題とかでもめそうな単語にしか。
「そうですね。星によっては禁止されているところもありますし、自由な星でも反対派と揉めたりとあります。賛成派の星では見た目を地球でいうところのエルフにしている星や天使のように羽のある星、獣人的な耳、尻尾、目、牙、角のある星もありますね」
そんな星もあるんだ?
「星によってはファッションだったり宗教上だったり罪人の証だったりしますが」
……はて?
遺伝子操作って出生前って言わなかったか?
「言いました」
宗教はわからなくもない。
親がそうなら子もってやつだろう。
ファッションや罪人の証っておかしくないか?
「ファッションにいたっては子供はおもちゃやペットではないと批判もありますが、星によっては猫耳の子供がかわいいとか、ウサギ耳がかわいいとか、尻尾がとかの流行り廃りで改造を施す親がいるそうです」
ひどい話だ。
まさかまだ日本のキラキラネームはかわいいもんだなと思う日が来るとは。
「罪人の証ですが、惑星によっては犯罪を犯すのは遺伝子がおかしいとして、生まれてくる子供には罪を犯さないようにと遺伝子調整が義務付けられます。その区別として例えば目がオッドアイであるとか、牙が生えているとか親の犯罪によって外見が変わるそうです」
それって差別の温床にならないのか?
「その子供を差別したら罪となり、差別した人の子供が遺伝子操作を受けます」
それは犯罪の抑止力になるのか?
「禁固刑が非人道的すぎるということで始まった制度のようですね」
生まれてくる罪のない子に罪を擦り付けているように見えるが?
「生まれてくる子供をこんなにしたのは親の罪だ。キチンと反省して子供を幸せに、まっとうに育てれば孫は普通の外見になるぞ、的な考えだそうです」
それはなんと言っていいものか。
文化の違いだ、お手上げだ。
「もっともこの例は特殊でほとんどの星では地球人と似た種族が出てきますよ」
カグヤが慰めの口調で教えてくれる。
宇宙は広いな。
正直納得はいかないが、俺はファンタジー世界で言うところの勇者でも英雄でもない。
チートの宇宙船を持ってるだけの引きこもりだ。
そもそも、その星がどこにあるかも知らない。
納得はいかなくとも、まあそんな星もあるのだと受け入れるだけだ。