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#43 大翠の予習 2

「先ほどの海賊が進路を変え、Z3-Jのゲートに向かいだしました」


 2杯目のビールが空になり、3杯目をビールにしようか他に何にするかと考えていたときにカグヤが告げる。


「ああ、さっきの……ポンコツ女王?」

「だんだん扱いが酷くなっていきますね」


 正直ポンコツ以外の印象が薄くて。

 乳の谷間は憶えているがもう名前が出てこない。


「ブラッディー・クイーンと名乗ってましたが、まあ偽名ですしね」


 そりゃあ本名で海賊なんかしないか。

 よし、ピンク。

 バーボンをロックで。


「一応大翠のコンテンツは購入してたようですね。長く宇宙で定期便していると、そういう最低限の基本は外さなかったようです」


 そりゃあよかった。

 彼女がZ3-Jで長逗留している間にこの惑星を離れようかね。


「てかふと思ったんだが、前の惑星ではコンテンツ買うときに販売履歴から買われてないのを買ったけど、今回あのポンコツ女王が買ってるなら検索で出てこないことないか」

「Z3-Jでは大翠方面にしかゲートがありませんからその買い方で問題がないのですが、大翠のように2方面ある場合は一度買われているコンテンツも検索して、それの購入を検討するという形になりますかね。入国管理局に問い合わせると、前来た人がどっちのゲートに行ったかは教えてはもらえますので、それほど気にしなくてもいいですよ」


 進む方向が一緒なら、1回買われているものは次の惑星でもう売られている可能性があるから、避ければいいとなる。


 そもそも俺の場合はワイズのコンテンツがあるから基本惑星の商品は買わなくても生活できるのだが、ポンコツ女王でさえやってるくらい船乗りとしてその惑星のコンテンツを買うのは普通のことだそうだ。

 あまり奇異な行動をして目立つこともあるまいということだ。

 ポンコツ女王より悪目立ちしても仕方あるまい。


「そうはいいますがポンコツさん、意外と大翠では普通に行動してたようですよ」


 カグヤ、俺には文句言う癖にお前だってひどい扱いじゃないか?


「船長にあわせました」


 さよですか。

 ピンクからグラスを受け取り、ちびりと飲む。


「まっとうに入国して、普通に自分が通ってきた惑星のコンテンツを売って地上生活を満喫してたそうですよ。ただ思ったより売れなかったのと、資材が高かったせいで無一文になって地上でのバカンスを早めに切り上げる羽目になったようですが」


 その後、俺が現れるまでゲートで立ち往生か。

 なかなか素敵な経緯だな。

 彼女には幸せになってほしいと願うよ、俺のかかわりのない遠い星で。



「ワイズのコンテンツのほかにZ3-Jのコンテンツとそこで買った物品もサイトのほうにアップしましたので売れ行き次第になりますが、船長にはまたコンテンツと物品を選んでもらいます」


 面倒くさいな、つい先日したばかりなのにな。


「普通は惑星に数か月滞在しますからね。1週間で出航したらそうなりますよ。大翠では地上に降りたらどうです?」


 そうはいってもまだ大地が恋しいとか、日光浴したいとかの欲求がわかないが。

 まだ宇宙船乗って2か月たってないんだったかな?

 もうしばらく宇宙船に引きこもろうと思います。


「なんと言いますか、……こんなに引きこもってる船長の精神状態がずっと安定してるって方が不思議なんですけどねぇ」


 むしろ快適ですがね。

 


「話は戻るが大翠は芸術が盛んという話だが、そういうものを持ち出してよその惑星で売れるのか?」

「微妙なところですね」


 惑星によって価値観などが違うので、大翠のコンクールで金賞を受賞したとして、他の惑星で確実に評価されるというわけではない。

 高い金を出して購入したものが、どの惑星でも1割に満たないというのはよくある話だそうで。

 この星で一財産するくらい価値がある壺が、他の惑星では量産品の安物と同じ価値しかないとしたら作った人間より、評価した人間のメンツがないだろう。

 それをするくらいならこちらで売れていない安い絵画や写真、彫刻を買ったほうがチャンスがあるという。

 逆にそういった売れない芸術家が評価されないのはこの星が悪い、他の星なら評価されるはずだと売りつけてくる場合もあるそうだ。


「日本でも無名の画家やら映画とかが海外で評価されるという話も聞いたことがあるけど、そんなのは一握りの例外だろう?」

「おっしゃる通りです」


 限られた空間を割いてまで買う必要もないかね。


「写真のようにデータで運べるものは他の惑星では芸術としては価格は上がらないのですが、大翠では写真に値が付きますのでワイズの風景写真や動物の写真集などは売れるかもしれませんね」

 

 なるほどね。


 さて話をまとめると安物だけど、こじゃれた皿とか壺といった陶芸品やガラス細工を、高級品として他の惑星で出品するのが無難かね。


「無難ですね。あとは芸術が盛んということで道具などもいろいろありますので、この惑星にしかない便利な道具などあるかもしれませんので探してみては?」


 そもそも芸術に素養がない俺が道具なんて見てわかると思うのか?


「そこは船長の詐欺技術でなんとかなりませんか? 大翠の名だたる画家が愛用している筆とか言って」


 だから俺は詐欺師じゃないって!

感想や評価ありがとうございます


そこでふと気が付きましたが#39、#40のサブタイトルは「ブラッディー・ジョーカー」ではなく「ブラッディー・クイーン」でした。


本編には影響ありませんが訂正しておきます。

言い訳は活動報告でしていますので興味がある方はご覧ください

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