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#42 大翠の予習 1

 若干最短ルートから外れたとはいえ、1500秒もオーバーブーストすると20日の行程が6日ほど短縮できるという。

 よくわからんがそうらしい。

 ちなみにダントツの新記録らしい。


「その辺はおいとくとして長時間のオーバーブーストによる船体へのダメージは大丈夫なのか?」

「警報もなってませんし大きなことは何も。現在整備用の赤ウサギたちが総点検をかけてます」


 そうかい。

 船のことはさっぱりわからんから任せるが、問題があれば安全最優先で頼むよ。


「了解しました」


 その後、大翠への入国管理局に手続きをする。

 ワインのくだり以外は似たような会話なので割愛するが、カグヤからは相変わらす詐欺師を見るような視線を感じるがきっと気のせいだろう。


 さてこれから今度は大翠の物品選びか。

 その前は大翠の情報を聞いておこうか。


「まあそれはお酒を飲みながらでもいいですよ。そろそろ船長にも休息が必要でしょうし」


 人をアル中のように言うなよ。


「ならこのままやりますか?」


 いやせっかくだからお言葉に甘えます。



「大翠は芸術が盛んな惑星です。絵画、写真での風景を題材にしたものが定番になっています」


 ピンク、生中。

 あとホルモンが食いたい、焼いてくれ。


「こんな感じの作品が今のトレンドですね」


 どこか富士山に似た山のいろんな角度や時間での絵画や写真を表示してくれる。


「山の名前は万里。大翠で一番の雄大な山として人気があるスポットです。ただ近年は人気がありすぎて絵画はともかく写真家は場所取りでトラブルが多数あるようですね。カメラマン同士のいざこざから、写真を撮るために邪魔になるものを取り除くといった器物破損が問題になっています」


 撮り鉄か!

 てか人間結局やることは一緒なのかねぇ。

 ビールを飲みながらしみじみ思う。

 

「ちなみに船長、芸術に造詣は?」


 まったくない。

 学校の授業でやったなってくらいしか。

 美術館だって会社で強制でいけと言われた、聞いたことのないその県出身の画家の絵を見に行って、出口まで最短ルートで駆け抜けて帰った記憶があるな。


「了解しました。大体わかりました」


 みんな、そんなもんじゃないのかなぁ?



「じゃああんまりワイズのコンテンツは売れないのか?」

「いえ、芸術が盛んと言っても全員が芸術家ではありません。日本でアニメというものが盛んでも見ない人はいますし、見ている人でも他の例えばスポーツをするとか、釣りをするでしょう」


なるほど、なら金の心配はしなくてすむか


「Z3-Jほど劇的に売れないかも知れませんが、どこの惑星でも新コンテンツは一定数の需要がありますよ」


 まあ暇潰しに働くような人間ならそうなんだろう。


「根に持ちますね」


 人類から貧困が消えたのは素晴らしいことだ。

 それは素直に評価すべきではある。

 その恩恵を地球が享受できていないのは嘆かわしいことだ。


「地球人はともかく船長は享受してるではないですか」


 俺が今ここにいることには選択肢はなかったけどな。



 プリプリのホルモンが一人用の鉄板にのせられ差し出される。

 たまにこういう油っぽい濃いものが食いたくなるな。

 おかわりはいくらでもある?

 もう歳なので一皿あれば十分です。


「購入予定としては、食糧・調味料共にこの星でしか食べれないものはありません。在庫も十分ですので今回はスルーしようかと思っていますが、もしも欲しいものがあればおっしゃってください」


 白ウサギがタブレットを手渡す。


「この星の特徴は肉食でしょうか。いろんな動物の肉を様々な調理で食べてますね」


 それは地球でも似たようなもんだと思うが。

 ……猪か、ボタン鍋しか食ったことないがこの星ではメンチカツ風なのが人気なのか。

 猪はあるから作れるって?

 今日はいいよ、また頼む。


 馬があるな。

 そういや研修で熊本行った時に食った馬刺、美味かったな。

 地元の居酒屋で解凍されきっていない、程度の悪いものしか食ったことがなかったから、あの美味さには感動した。


「生食用の在庫に馬肉はないですね。こちらの落ち度です。購入リストにいれておきます」


 なんか魚にしろ玉子にしろ生食ばっか購入しようとしているな。

 生で食べるのは宇宙的にも珍しいのか?


「現在は生食の場合、鮮度や寄生虫対策はほぼ完ぺきにされています。もしもの時でも医学の進歩で対処できますので問題ないのですが、昔からの風習でしょうね。過去に衛生面がネックとなって死亡する事例が多ければ生食は忌避されます」


 さもありなんと言ったところか。

 どんなに大丈夫、美味しいといったところで固定観念はそう簡単には覆せない。

 俺だって生で芋虫がうまいと言われても食う気にはならない、そういった感じなのだろう。

 それに管理頭脳が応急処置を施しても、本格的な治療を受けるまでになくなるケースも0ではない。

 不老長寿で医学が発達しても人は不慮の事故で死ぬ。

 不死は人にはたどり着けない領分だそうだ。


 ……それはさておき、そうなるとこの星では牛のレバーを生で食べられるだろうか?


「馬刺しほどメジャーではありませんが、そういう食文化はありますね」


 ああ、レバ刺しが規制されて幾年月。

 食えないと思うと妙に食いたくなるんだよな。

 支社長が行きつけの焼肉屋に行ってこっそり出してもらったと聞いた時にはそのまま当たって死ねばいいのにと願ったもんだが、逆に俺が殺されることになるとは世の中無常だねぇ。


「じゃあ生レバもよろしく」

「牛だけでいいですか? 豚、鳥、馬、熊などもありますが?」


 さて、鳥のレバーは焼いたのは食べたことがあるが他は食べたことがない気がする。

 チャレンジすべきだろうか?

 そもそもレバ刺しも少量でいいんだが。


「……生以外の食べ方に応用が利くようなら」


 別に日和ったわけではない。

 生が必ずしも美味いとは限らず、生以外にも美味い食べ方はある。

 食べたことがないものを食べるのだ。

 そして食糧を無駄にしてはいけない。

 だから保険は必要。

 そういうことなんだからね!

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