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#40 海賊ブラッディー・クイーン 2

「2つ方法がありますが、とりあえず正攻法で追い抜き時にルートを変更します」


 追い抜くときに現在ゲートから惑星への最短ルートを選択しているが、別に角度を変え、遠回りしても問題はない。

 その際相手もこちらの軌道に合わせて船首の向きを変えるだろう。

 だがほんの少しの時間を稼ぐだけでいい。


「見たところ海賊船は加速装置を用意して一時的にオーバーブーストほどの速度を出せるような改造を施していますが」


 画面に映し出された海賊船は円柱の外装に3か所補助推進装置が設置されている。


「見たところ設計が甘いですね。20秒もオーバーブーストすることはできないでしょう」


 おそらく海賊船の切り札をそう評する。

 まあこっちは現在1500秒のオーバーブースト中だ、相手が同等の出力で航行し速度の速いレールガンで攻撃しようとも当たるはずはない。



『ちょ、ちょっと待て! お前ゲートにいくらで突入したっていうのよ!?』


 すれ違って15秒、追いすがろうにも離れていく海賊船から音声だけをカグヤが流す。

 まあ答える義理もないので黙っておこう。

 というかあまり関わりたくないタイプだよなあ、見た目は好みなんだがなぁ。


『40m級で4基もあってその長さってありえないってば!』


 らしいねぇ。

 でも見たものを信じなさい。


『ふざけんな!』


 苦し紛れに砲撃するが距離が縮まることはない。


「で、なんだアレは?」


 いまなおオーバーブースト中だが、安全圏だそうなのでカグヤに問いかける。


「何と言われても海賊としか」

「海賊って割りに合わない仕事だからやるヤツがいないとかいってなかったか?」

「言いましたけど、何事にも例外があるとしか。40m級で出力60%でゲートインできる人間がいるというより、今時海賊に遭遇したっていう方がまだ信憑性があるというものです」


 さらっと俺をディスるな。

 海賊以下かよ。


「質問2。Z3-Jはめったに宇宙船がこない辺境で、本当ならさっき通ったゲート以外発見されていない。俺が今日ゲートアウトするなんてわからなかったはずでは?」


 通信は星系をある程度離れても繋がるがゲートを越してまではつながらない。

 海賊が先程のゲートからZ3-Jに進入して、俺がいることに気がついて大翠に戻り待ち構えていたのだろうか?


「その場合は私がゲートアウトに気がつきます。情報収集は基本ですから」

「ならなんで?」


 画面はメインにカグヤ、サブ画面に小さくブラッディー・クイーンが表示されている。

 そのクイーンを指さしながら、


「どうも彼女、大翠で無一文になったらしく」

「ほう?」

「それならさっさと次の惑星に行けばいいようなものなんですが、そのお金を使いきった原因が外装に取り付けられた補助推進装置を造る資材を購入し、自分で作って取り付けたまではよかったのですが、そのせいでゲートインできなくなったそうで」

「ゲートの円よりデカイ改造になったのか?」

「いえ歪ですが一番大きいところでも40mほどですか」


 ……………………


「……単に下手くそってことか?」

「まあ身もふたもなく言えばそういうことですが、船長が特殊なだけで35m級から40m級に乗り換えるとゲート突入できなくなるなんてよくある話です」


 そうかあのお姉ちゃんはそこまで残念な子ではないというのか。


「補助推進装置は簡単に取り外せるのでそうすればよかったのですが、有り金はたいたものを捨てるのはもったいない。せめて一度くらいは使いたいと思い、それが使える状況はゲートの前で海賊かと思いついて待っていたようです。1か月待てども2か月待てども来る気配がなく、寂しさで打ち震えていたようです」


 前言撤回。

 とても残念な子だ。

 残念でポンコツな子だ。

 画面でなにか叫んでいるのは相手してほしいのか。

 ……無視しよう。

 できれば二度と会わないことを祈っています。


 

「ちなみにもう一つの手段は?」

「海賊船の管理頭脳をハッキングして砲撃やら追撃を止めさせます」


 ああ、宇宙船の管理頭脳もハッキングできるんだ?


「さっきからのブラッディー・クイーンの情報はどこから手に入れてたと」

「ああ」


 言われてみたらそうだな。


「でも俺にはマーロンの時に派手にならないかって言ってた割にカグヤだって地味じゃね?」

「そうはおっしゃいますが、オーバーブーストが100秒前後ならこっちだって砲撃応戦とか回避とかの腕を見せれたんですよ!」


 俺のせいかよ。


「じゃあ何か他に手が思いつきますか?」


 体当たりなんかどうかな?


「オーバーブースト中に正面衝突したら、いくら前面にシールド集中してても衝撃でこっちも壊れますよ」


 ジト目で見る。

 いや別に正面衝突することもないだろう?

 ちょっとかするような感じで相手を弾けないかなと。


「……進入角度がシビアですね。できなくもないけど……派手だけど……。さっきのだと……」


 何やら計算を始めた。


「そうですね。前面にシールドを集中してるからそこをかすらせれば、相手ははじかれそうですね」


 あ、できるんだ。


「確かに相手には派手な衝撃が与えられますね」


 まあ今回、満足にゲートに突入できない海賊にも1500秒のオーバーブーストは精神的に衝撃だったと思うけどな。


「しかしよくこんなえげつない方法思いつきますね?」


 ゲームで加速中に前方の車を弾き飛ばすのは一般的なんですがね。

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上手く丸め込めれば都合の良い女が手に入ったのにw なう(2025/08/04 23:43:31)
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