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#39 海賊ブラッディー・クイーン 1

「こちらが隣の星系、大翠へのゲートです」


 正確に隣の星系ではないらしい。

 普通に飛んでは隣の星系にはたどり着くことができないので、ゲートを介して行ける場所を隣というらしい。


「今回は何も制限は致しません。どうぞご自由にゲートインして記録更新してください」


 いやまあ、ハイスコア出したところで何の意味もないのじゃないかなって気がしてきたんだが?

 確かにスピードは出るんだろうけど。


「今更ですね」

「まさかわざわざゲートインのために禁酒させられるとは思わなかったからな」


 飲酒運転はダメ、絶対。

 腐っても元運送会社の事務員。

 なぜダメか、ということはいまさら聞かないでもわかります。


 でも24時間酒を飲むなってのは過剰ではないだろうか?


「普通は手動操縦するって一大イベントなんですけどね。緊張で手が震えるたり胃が痛くなったりとか、ゲートアウト後は疲労困憊で医務室に運ばれるとかそういう話は珍しくないんですけどねぇ」


 俺としては通勤の運転の感覚どころか、酒飲みながらゲームやってる感覚ですがね。


 俺も40日以上宇宙に出ている。

 文化や風習の違いがあるということは納得している。

 単に愚痴が言いたいだけだ。


「じゃあさっさとゲートインして酒盛りしよう」

「そういう言い方もアレですけど……お願いします」


 ジト目で見るそのカグヤを画面の端に追いやり、ゲート突入画面に切り替える。

 神経がいるのは最初だけ。

 ラインを読む。

 ちょっと左右に揺れ幅が大きいが、……まあこんなもんだろう。

 微調整が終了したらあとは速度を徐々に上げていく。



「ゲートイン、成功! 進入速度60%です!」


 ちょっと助走距離が短かったのか、はたまた俺が加速の切り替えのタイミングが悪いのか。

 もう少し行くかと思ったんだが。


「何言ってるんです! すごいことですよ! 1500秒の加速です」


 25分の加速か。

 今回はゲートから惑星まで20日ほどの距離があるのですぐに通信ができないという。

 オーバーブースト中は念のため立ち上がるなということなのでとりあえずすることがない。

 ぼーっと画面を眺めているとカグヤが慌てて画面にでてきて、


「船長。海賊から通信が入っています」


 はて?

 海賊なんて割に合わない仕事じゃなかったかな?



『アタシの名はブラッディー・クイーン。海賊だ』


 いきなり画面に魅力的な女性が登場する。

 ウェーブのかかった金髪。

 二十歳そこそこの元気な笑顔。

 改造された宇宙服は豊満な胸の谷間を強調している。

 もう一度言おう、魅力的な女性だ。

 ドクロの絵が付いた眼帯をしていなければ、だ。


 その海賊がこっちの回線に割り込んでいきなり通信をしてきた。

 カグヤならブロックもできたのだが、とりあえず話ぐらい聞かないと俺がわからないだろうということでそのまま流したのだという。

 正直関わりたくないのだけどね。


「その海賊が何か用かい?」


 まあ海賊の要件なんて想像がつく。


『単刀直入に言う。積み荷をさしだせ!』


 田舎のコンビニ前に座っているようなヤンキーにカツアゲされているような感覚だ。

 もしくはオヤジ狩りか。

 

「断ったら?」

『砲撃して奪い取る』


 獰猛に笑う。


『すでにゲートから100秒先で照準合わせて待ってるぜ』


「よく考えられた位置に待機してますね。宇宙船は平均的に100秒前後で加速が終了しますので、通常加速に戻るところを狙い撃ちされれば対応が難しいですね、本来なら」


 とカグヤが相手の狙いを教えてくれる。

 なるほど、本来ならね。


『そういうこと。100秒以上の加速だって背後から狙い撃ちしてやる』


 物騒な話だ。

 さて100秒なんて会話しているとすぐだ。

 さっさと対応を決めなければならない。


「じゃあ、できるもんならやってみな、で」


『へえ』


 ニヤッと笑う。

 

『いい度胸じゃないか、カスタマイズしたアタシの海賊船は速い上に砲撃距離も性能も半端ないぞ。それに……』


「ハイハイ、そういうのいいんで。カグヤ、打ち合わせだ。こっちの音を消せ」


 何か言い足りなさそうなブラッディー・クイーンを無視する。


「で、カグヤ。何か問題あるのか?」

「相手はすでに方向転換し、私たちの前を先に飛んでますね。こちらが100秒以上の加速と予想して、抜かれても追撃する予定ですね」


 オーバーブースト中は前方にシールドを集中しているので砲撃は防げる。

 ゆえに後方から砲撃を受けたらイチコロである。

 

 では追い越すときにこちらが海賊船を砲撃すれば?

 オーバーブースト中は砲撃ができないのだそうだ。


「普通の宇宙船だとオーバーブースト中は管理頭脳の機能が航行維持に使われますので非常にうまい手ではありますね。加速終了時は特に機能が集中しますし」


 『本来なら』『普通』という言葉を先ほどからカグヤは使っている。

 まあつまりは安心していいのだろうと。


「ええ問題ありません」


 宇宙のこと、異星のことは未だにさっぱりわからない。

 ただカグヤというドラゴンを搭載した宇宙船イザヨイはチートである、それだけは知っている。

 やろうと思えばゲートだって自動突入できるくらいの宇宙船がチートなのである。

 俺が何を心配することがあろうか?

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お?海賊いるんか! 主人公も海賊になれよw なう(2025/08/04 22:46:10)
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