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#33 正しいワインの使い方(後編)

 朝起きて、着替え・洗顔の後に食堂に向かう。

 最近朝食は部屋に軽食をデリバリーなのだが、今日はイザヨイにて初の米が食卓にあがる日なので感想を聞きたいということだ。

 よく考えたらピンクウサギが俺のとこにくればいいのではとも思うが、まあたまにはと食堂に向かう。


 テーブルに運ばれてきたのは炊きたてのご飯とすでに割られた生卵の入った器、醤油と味噌汁だ。

 寮の生活では米を食べるのは弁当かパックご飯だったので、茶碗に盛られただけでなんかうまそうに感じる。


 さて卵を軽くといて、……何? さきにご飯を食べて固さの確認をしろって?

 了解。

 うん、いい感じ。


 味はどうかって?

 特に違和感ないけど。

 てか弁当温めて食ってた人間なんだからそこまでこだわりがない。


 さておまちかねの卵と醤油をかけ一気に食らう。

 ディスイズTKG

 口直しに味噌汁を飲む。

 上品な味だな。

 もうこういう朝食には少し家庭的な方があうと思うが、具体的にどうすればとは説明できるほど料理に詳しくはない。

 その辺はレシピや味噌の改良で対応してくれるのか、じゃあ頼む。

 でもこの味噌汁も旨いのでレシピとしてはとっておいてくれよ。


 おかわりはいらないよ。

 しかし生食用の卵なんて何個入荷したのか知らんが、次の惑星にあるかどうかわからないから節約した方がいいのか?


 有精卵さえ手に入ったらあとは食糧生産プラントで数は確保できる。

 すごいな。


 居住区減らして生産プラントを大きくしたおかげって。

 ただ魚を生産するには手狭らしい。

 まあ魚の種類も多いしな。

 刺身を早急に食いたいわけではないので気にするな。


 まあ米も急いではなかったが一ヶ月以上ぶりに食べるとほっとするな。

 日本の主食、万歳。


 生産が開始された緑茶を飲み人心地。

 昼御飯はどうするかって?

 最近昼食は他星料理にチャレンジしている。

 Z3-Jについてからはこの惑星のメジャーな食べ物を食べている。

 米があるわりにメジャーな主食ではないらしいが、米を使った料理にしてくれ。


 そんな感じで朝の時間を過ごしていたらカグヤが報告があるというので艦橋に向かう。



「マーロン三世が逮捕されました」


 複数のワイドショーの画面を表示して教えてくれる。

 マーロン三世が拘束用ロボに取り押さえられているが激しく抵抗し、怒鳴っているというなかなかに派手な捕り物劇だ。


「もう動いたのか。予想以上に早かったな」


 とは言いつつもそんなものかなという気もしないでもない。


「ちなみに罪状は?」

「銃刀法違反と違法管理頭脳所持の疑い、あとは強盗未遂です」

「殺人未遂にしてほしかったが、まあ温情かねぇ」

 

 俺が首相に送り付けた映像は一言で言えばマーロン三世の犯罪の証拠。

 俺との会話で脅迫しているところを見せ、その後カグヤがマーロン三世の家の管理頭脳をハッキングして録画した俺の殺人計画の内容。

 そしてマーロン家にある護衛というには過剰な兵器を有した戦闘用ロボの映像。

 法廷でも証拠として提出できるグレードらしく、それを見た一国の首相の気持ちはいかほどのものだろうか?


 高等遊民は数おれど、国でもトップクラスの財を持ち、各方面に顔が広いマーロン三世のスキャンダル。

 大きな騒ぎになることは間違いない。

 その際に自分の立ち位置によるメリット・デメリットにさぞや頭を使ったことだろう。


 放置した場合。

 マーロン三世が成功しようと失敗しようと、戦闘用ロボの宇宙港侵入ならびに宇宙船への攻撃は隠しきれるものではない。

 その収束をマーロン三世は確実に首相に要請する。

 マーロン二世と親しくしていた間柄でその関係での知り合いではあるが、あまりのドラ息子ぶりと自分の立場から遠ざけてはいるのだが、マーロン三世にそんなことが理解できる頭がない。

 むしろ助けるのが当たり前、要請する前に助けろというはずだ。

 宇宙船の攻撃が成功していた場合はワインの1本でも見返りにくれるかもしれない。

 だが一度でも要請を受けると自分が特別なのだとさらに勘違いし、無茶をするたびに尻拭いする、そんな未来が目に見えている。


 介入する場合。

 マーロン三世は明らかに犯罪行為をしている。

 相手が他惑星の人間といえども殺人・強盗行為は犯罪である。

 それ以前に護衛用のならいざ知らず、過剰な装備を搭載されたロボを持つことは違法である。

 付け加えるなら一般人が持てる管理頭脳には護衛用までであり、戦闘用になると国から認可を受けた特殊な管理頭脳でないと兵器は扱えないようになっている。

 つまりは管理頭脳の違法改造か戦闘用管理頭脳の横流しか、どちらにせよ重罪である。

 そんなものを誰でも持てるのであれば平和に暮らすことができない。

 マーロン三世は確かに富豪ではあるが戦闘用が持てるほど優遇はされない。

 かねてより黒い噂があったが金とコネで乗り切ってきただけで、叩けば埃がいくらでも出てくるだろう。

 ここで関係を切ってしまったほうが後々のことを考えると正解かもしれない。

 Z3-Jのセレブでも公平に断罪する首相は選挙受けがいいのではないか?

 ついでに試飲用のワインがもらえるという。



「どちらもワインがもらえるメリットがあるとしても、デメリットを考えるとどちらが得かっていうのはすぐにわかるんだよ。でもかといって自国の民を、それも知り合いの子供を逮捕するとなると少なからず反発もあるからな。しばらくは悩むかと思ったんだが」

「最終的に警察庁長官に直々に連絡して、大掛かりな捕り物劇となったようです」


 宇宙港襲撃は今晩の予定だったらしく、準備の最中に警察の戦闘用管理頭脳搭載の特殊部隊が突入。

 とたんに戦闘になったが、さすがに私兵と国家権力では抵抗は長くは続かなかった。


 そんな戦闘画面と取り押さえられ呪詛を吐きながら抵抗するマーロン三世の映像を、こぞってワイドショーのネタとして扱われている。

 なかなかセンセーショナルな話題でしばらくこの話題で持ちきりだろう。

 これから続々と過去の犯罪歴も出てくることだろう。


 俺なんか自分的には悲惨な死に方をしたはずだが、あまり盛り上がらなかったから良くも悪くも一般市民の扱いを思い知る。


「それじゃあ、首相にワインを……そうだな、試飲用とオークションに出す予定だった1本送っておいて」

「よろしいのですか?」

「ワインは山ほどあるんだろう?」

「一万本以上はありますが、……大損ですよ?」


 最低300年、最高は450年物さえあるという


「いい経験をさせてもらったから授業料がわりにこの星においていくさ」

「……船長がよろしいのであれば」

「それにこの捕り物劇の一人の警察長官も首相とワインを共同購入しようとするくらい好きなんだろう? 開封済みと未開封が送られてきたら首相も分け与える気になるだろう」


 1本なら独り占めして醜い争いになるかもしれない。

 まあ関係ないからそっちでもいいんだが。


「了解です。が、試飲用の方、船長結局飲んでませんが一杯分とっておきますか?」


 鑑定用に開封して、さも飲んだ様に語ったが結局未だに飲んでいない。

 昨日まではワインは好きではないが、珍しいものなので一杯くらいはと思っていたのだが。


「やめとくよ」

「よろしいのですか?」

「言ったろ、いい経験させてもらったって。きっとこの惑星では今回の件でワインを使った格言が一つや二つできるのではないか? って思うほど大の大人がたかが酒1本で犯罪やら醜態をさらしたろう?」

「まあそうですね」

「俺が飲んで仮に美味さにはまったら、ありもしない難破船を探し始めるかもしれないだろう?」

「それもそれで困ったものですけど、今回の件、……もうちょっと何とかなりませんかね? 官憲に頼らずにもうちょっと派手に解決したほうが創造主が喜ばれると思いますよ」


 それは俺の担当かね?

サブタイトル、正確には「正しくないワインの使い方」だったかもしれません。


後日談を含め、あと4,5話この惑星に滞在する予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の出来るだけ楽に敵を排除する姿勢が好きだなぁ 楽に!しっかり!キッパリ!納得できる解決法でした
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