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#297 その背中は何を語る 6

「どうしてそんなつれないことを言う。君発案のアイデアではないかい?」


 俺は問題点を述べたのみだ。

 そこからそういう発想になったのはあなたの閃きだろう?

 俺は無関係である。

 というか巻き込むな!


「しかしこれはギャラクシーキャノンボールのみならず全宇宙の未来が変わる。宇宙に名を刻める! こんな栄誉なことはあるまい」


 誰もが栄誉を求めているわけではない。

 しかも労力にあわないことをやりたいとは思わないな。


「なぜだ? 話している感じ君は利口な人間だ。発想力も素晴らしい。そんな君が協力してくれたらうまくいくはずだ」


 なるほど、無能のイエスマンしかあなたの元に集まらないわけだ。

 利口な人間はね、あなたのような独善的な人間には関わるものじゃないと判断するもんだよ。


「私のどこが独善的だと?」


 ポカンとした顔で俺を見るヘンダーソン。

 そもそも自覚がない時点で関わるべきではない案件だ。


 

 言わせてもらえば自分が少しいいアイデアを思いついて、それをろくに検証せずにすぐやろうと、いや援助するからやってくれというのはいかがなものかと。


「何を言っている? 素晴らしいアイデアは即行動に移さないでどうする? 拙速は巧遅に勝るだろう?」


 雑でザルな計画を進めても時間の無駄であろう。

 それが明らかに失敗するとわかっているものをやれと言われて利口な人間は従うものか。


「ちょっと待ってくれ、どこに失敗する要因が?」


 おいおい、俺が今思いつくだけでも4つ致命的な要因があるぞ。

 それすら吟味どころか思いつきもしない人間とは一緒に仕事したくないものだ。

 社畜時代なら選択肢はなかったが、今となっては自由である。

 これ以上関りを持つ気はないぞ。


「――――!」

 

 ヘンダーソンは絶句する。


 あなたは金儲けには才能があったのかもしれないが、宇宙のことに対しては無知でありそれゆえに無謀だ。

 あなたが口先で言うだけなら実害もないが、それを金にものをいわせて実行しようとするから迷惑がかかる。


「なぜ君はそんなひどいことを言うんだ! 私はただ協力を求めただけではないか!」


 では断ったんだから無理強いしないでくれるかな。


「私はそんなことはしていないだろう」


 してるよ。

 技術者集めの協力を要請された。

 その前はギャラクシーキャノンボールの問題点を出せと言われた。

 そもそもギャラクシーキャノンボールに参加しろとしつこく勧誘された。

 さあどうだろう?

 これでも無理強いをしていないとでも?


「……やり方が強引だったと勘違いさせたかもしれない、そこは謝罪させてもらう。だが決して君が一方的に損するという提案ではなかったはずだ」


 金も栄誉も求めていない人間に自分の思うように働けと言うのは一方的な損だと思うがね。


「……わかった」


 俺の怒りがようやく通じたのか若干顔が強張った。


「だが、せめて先ほどの4つの致命的な欠陥を教えてくれないか?」


 その展開はギャラクシーキャノンボールの問題点を出せというのと同じ展開ではないか?

 そこから発展してまた手伝えと言うんだろう?


「そんなことはもうしない。教えてくれるだけでいい」


 信用できません。

 そういうのは後に部下とやったらどうだい?


「今わかるものを後回しにしてどうする?」


 さっきも拙速だのなんだの言っていたが、俺に言わせれば急がば回れだ。

 大きいことをするというのならばしっかりとした土台を作るべきだと思う。

 だいたいこの4つの欠陥を自分で気がつき、対応できなくてどうする。

 他にも致命的ではないがトラブルの種は山ほどある。

 そういうのに対応するためにも自分たちで気が付くべき案件だよ。



 あとあなたはどうにもトップとしてはカリスマに劣る。

 周りにこの人について行こうだとか、この人を盛り立てようだとか思われていないのではないか?

 大きいことをするのにあなたのようなタイプがトップではうまくいくものもいかないだろう。


「……私にどうしろというのだ?」


 しっかりとした行動力を部下に見せるべきではないだろうか?

 ギャラクシーキャノンボールの英雄を求めるのならばまず自分が英雄を目指したらどうだろうか?


「できることならやっている! さっきも言ったが私にはゲートを跳ぶ才能がない」


 そんなことはない。

 ゲートなんて練習すればできる。

 できないというのであれば練習量が足りないのだ。


「私がどれほど練習したかも知らないくせに!」


 それは知らない。

 見てもないからな。

 だけどそれを口で言われても説得力があるだろうか?

 寝食を忘れ、血のにじむような努力をしたと口で言いつつも、実際は十分な休息をとりながらやっただけではないのだろうか?

 

「そんなことは……」


 ならばそれを証明するためにこれからもう一度訓練をしてみればいい。

 それも記録映像をとりながら。

 いっそドキュメントのようにしてもいい。


「……そんなことをしてどうする?」


 一代で財を成したヘンダーソン氏が、宇宙への夢をあきらめきれないので再チャレンジと銘打ってのドキュメント。

 その努力に感動する人間も出てこよう。

 口先だけの金持ちの道楽というのと、すべてを投げうって血反吐を吐きながらチャレンジする男ではどちらが共感を得ると思いますか?

 その姿に優秀な人が協力したいと申し出るかもしれない。


 ヘンダーソンさん、あなたに足りないのはそういう姿勢ではないでしょうか?

 他人に何とかしてもらおうではなく、自分で何とかしようという姿勢。

 その背中に人はついて来るのですよ。



この話はあと1話です。


「宇宙船移動中に遠く離れた母星に通信できるようになれば宇宙での孤独が解消される可能性があり、宇宙船乗りの人口が増え、ひいてはレース参加者も増えるかもしれない」


という考えもあったのですが、この孤独を感じない引きこもりではそんなことを思いもしないよなあと本編にかけず。

通信技術の発展こそが宇宙の発展に通じるのかもしれないなという裏設定

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― 新着の感想 ―
[気になる点] いや、主人公が話に付き合い過ぎでしょうこれ。何でこのギャラクシーボールの話だけ、こんなに対応してるの?別に何の義理もないし理由も無いから、一切話なんてせずに会話を打ち切れば良いじゃない…
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