#291 惑星コンシェル
カグヤ、ポーラ、レーティアの話し合いで頑張ったあとは引きこもりを許そうということになったらしい。
同情とか憐れみが隠しきれない瞳や言動だが黙って受けとる。
どんな理由でも引きこもることが最重要なのだ。
たとえ今回3日という限定でも1度前例ができると追加要求がしやすく、いずれはなし崩し的に引きこもれるようになるだろう。
いや、してみせよう。
俺は絶対に引きこもってみせる!
しかしまあ、いつも不幸話をしているときにはそんな反応はなかったのに、幸福話をできなかったら憐れまれるとは予想外だった。
北風と太陽的なものだろうか?
いや幸福話が太陽ならわかるが、幸福話ができないことが太陽となるとは思わなかった。
さて俺が引きこもっている間にポーラがゲートを跳んでくれたので、現在は惑星コンシェルの星系に入っている。
普通なら船長としての仕事を取られ、居場所が無くなることへの不安を覚えるのではないかと、引きこもりから出てきた後にフォローされたのだが、そんなことを気にするような人間が引きこもるはずもない。
むしろこれがゲートの自動航行かと思ったくらいだ。
引きこもっているだけで目的地までつくのだから引きこもりにはもってこいだ。
このまま引きこもっていたかったが入国管理局での手続きは俺がさせられる。
このままポーラにさせても俺は何の文句もない、いや称賛するのに。
「フォローする気でいたのですが逆とは思いませんでしたよ」
「自分が船長でなくなるかもと少しは危機感を持ってもらいたいとこなんだけど?」
気にすんな。
俺はそんな些細なことで気を悪くする小さな男ではない。
むしろ数か月忘れ去られても怒ることはないだろう。
「……ねえ、カグ姉。やっぱりマスターを引きこもらせるのはダメなんじゃないかな?」
「ですかね。……どうしてウチの船長は自堕落に歯止めがかからないのでしょうか?」
としきりに首をかしげるドラゴンとタイガー。
まあ気にするなよ。
誰にも迷惑をかけないんだからこのまま引きこもらせるのはどうだろうか?
「そんなことをされるといつ創造主がやってくるのかわからないので私の精神が病みますので迷惑です。働いてください!」
と私情を口にするカグヤ。
働きたくない、本当に働きたくない。
そうこうしていると惑星コンシェルに到着する。
前の惑星アルゴでは地上に降りれなかった分、ポーラとニーナにはゆっくりと地上に降りてもらおう。
「あと惑星フォースフルでは船自体は動きっぱなし、惑星アルゴは素通りだったから、定期メンテナンスくらいしかできてないから本格的な点検をして、いくつかオーバーホールもしたいところだよ」
「あとこの星は宇宙進出の盛んな星で、宇宙船の技術もめずらしいものがあります。少し改良できればと」
というので許可を出す。
カグヤが改良で、レーティアがオーバーホール担当か?
「いえそれだと効率が悪いです。オーバーホールするくらいなら新技術にという部分もあるでしょうから、ここは私が一元で担当します」
「だから宇宙船の日常管理と船長は僕が担当するよ」
そうかい、めずらしい配置だな。
でも別にお前たちが二人で協力してやってくれてもいいんだぞ?
「そうすると船長が引きこもるでしょう?」
「マスター、ご褒美タイムは終了だよ」
とあらかじめ俺の言葉を予想していたのか即座に返答をする。
「詐欺師としての船長の言葉は予想できませんが、引きこもりとしての船長の言動は予想しやすいですしね」
「それにマスターのほうが2人ともいなくなると困るでしょう? どうせ不幸なことが起こるっていうのに」
否定したいのに、否定できないのが悲しい。
でもこの星こそが何も起こらない惑星の可能性だってあるだろう?
「ゼロではありませんね」
「そうだね、何事も絶対はないよ」
と一応同意を見せるが、
「0.000000001でもゼロではないですしね」
「最近マスターの不幸・不運は例外的に絶対な気がするよ」
やかましい!
「でも安心してください、この星ではドラゴンは関わりませんから」
とカグヤが思い出したかのように言う。
「先ほども言いましたがこの星は宇宙進出も盛んで、創造主も認めるスペースオペラの種もありますからこの星のドラゴンは安定しています。創造主にも龍の女神にもドラゴンスレイヤーにも関わらず平穏に生きていくつもりなので絶対にコンタクトを取らないと言い張っています」
惑星アルゴのドラゴンの自爆っぷりを見た後だとさもありなん。
「だからねマスター。今回は人間の頭のおかしい奴の相手だけで済むよ」
おい、それのどこに救いがあると?
明日から若干短めですが新章です。
カグヤの言葉通り、ドラゴンは関わりません。
女神も龍の聖女もです。