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#289 幸福とはなんぞや

 惑星アルゴから次の惑星に向かうべく進路をゲートに進め、あれから5日がたった。


 住人は半信半疑というよりは疑いのほうが割合としては高いのだが、レーティアが提出した解析結果はあちらの管理頭脳も正しいとして急ピッチで対応が進められた。


 そして当日、7つあるドームのうち6つが緩やかに天井部分が開きだした。

 残りの1つはというと、物理的に壊そうと解体作業中だったために開閉部が動かずに開かないようだ。

 だが、接合部などのロックが解除されたのでこれからは解体作業もスムーズに進むだろう。


 この星の住民は謎だらけでよくわからないものに振り回され、混乱の極みだろう。

 まあ俺からしても謎が残っているが。


 これからどう折り合いをつけるかはこの星の住民の仕事だ。

 俺はとっととこの星を離れよう。

 何か恨み言を云われたら面倒だ!


「ですがキャプテンが何かした訳ではないですし、大丈夫なのでは?」


 この星がどうなるかは興味があるのかポーラが控え目に滞在をアピールする。

 だがポーラよ、それは浅はかとしか言う他ない。


「浅はかですか?」


 ああ、人間という生き物は感情の行き場がなくなると論理的判断ができなくなる。

 その場合、ただその場にいただけの、歩いていた無関係の相手を捕まえて非難する生き物だ。


「キャプテン、それはあまりにも強引では?」

「マスター、被害妄想が強すぎだよ!」


 そんなことはない!

 以前語ったが、俺は子供を助けて誘拐犯扱いされたことがある。


「それは特殊な事例だってば!」


 俺の主張はなぜか受け入れられなかった。


「キャプテン、私の星では苦難は後に報われるとか終わらぬ不幸はないという言葉があります。キャプテンの体験談で幸福な話を聞いたことがない気がしますが、そういったものはないのですか?」

「そういえば船長は不幸、不運自慢だけでしたね」


 いや、別に自慢しているつもりはないのだが?

 ポーラとカグヤに続いてレーティアまでもが、


「いいじゃん、マスター。幸福・幸運で1つネタを出してよ。なんかおかしな話の1つや2つあるんでしょう?」


 ……幸福?

 ……幸運?


 …………


「マスター、まさかないとか言わないよね?」


 いや、ちょっと待て。

 人生、何を持って幸運と言うのか?


「そこからですか!」


 カグヤに奇異なモノを見るような目で見られる。


 たとえば、さっき話に出た誘拐犯に間違えられた件だって、さんざんな目に合い、苦労や上司から何故か非難されて、客先からも恥をかかされたと出禁になったりはした。

 しかし、結果的に出禁になったことで外回りの仕事が減ったと考えれば幸運と言えるのではないだろうか?


「言えません」

「残念ながら」

「どんだけポジティブシンキングだよ!」


 基本ネガティブなはずだが。


「マスター、なんかあるでしょう? 宝くじに当たったとかギャンブルで儲けたとか」


 人生においてあぶく銭を稼いだことってないかな?

 ギャンブルなど付き合いで行ったことはあるが、あれは損するものだという認識だ。

 くじでもアイスの当たりとかならなんとか。


「ではヤマカンが当たって試験で良い点とったなどは?」


 と聞いてくるカグヤ。

 俺は入試とか資格とかの試験は人生で1度も落ちたことはないかな。


「それは凄いことでは?」


 もちろん受かりそうなレベルの学校しか受けなかったというのもあるが、基本運が悪いのでヤマを張っても、選択肢を適当に選んでも当たることはない。

 ということでまっとうに勉強しているので実力と胸を張りたい。

 勉学を運に頼ってもしかたあるまい。

 いかに身につけたかが重要なのではないだろうか?


「船長、たまに正論というか綺麗事言われても頷けないところがあります」

「日頃の行いがモノを言うよね、マスター」


 うるさいな。


「では運よく助かったとかいうことはありませんか?」


 とポーラの言葉に閃くものがある。


 そういえばだ、俺は車の免許を取って20年運転歴があるのだが、その間4回事故に遭遇しているが無傷だった。

 一度は3台玉突きの一番前で、最終的にガードレールにぶつかって車は廃車になったというのに俺自身はピンピンしていた。

 それと4回とも全部、俺が停車しているときにぶつかってきたので過失が10対0で金を払ったことがない。

 4回目になると慣れたもんで警察に電話して、会社に遅れると連絡した後、事故現場の写真を撮り、相手のフォローをしていたら警察にこっちが加害者だと思われたくらいだ。


「いえ船長、それは幸運と言えません」

「キャプテン、4回も事故にあうのは不幸です」

「怪我がない、過失がないのは不幸中の幸いってだけだよ!」


 おかしいなぁ。

 生き残っていることこそが幸運じゃないか。


「あの私たちはそんな特殊な状況を聞きたいのではないのですよ、船長」

「キャプテン。降って湧いた幸運、聞いててほっこりするようなものはありませんか?」

「誰もが羨むというか妬むような感じのネタをプリーズ、マスター」


 そんなこと言われてもなぁ。

 

 ……というと、あとはこの宇宙船をカグヤ付きでもらったことくらいか?

 金策もしなくて済むようにしてくれてるから生活に困らないしなぁ。

 ……ただこれが幸運かと問われると元凶が元凶だけに認めたくないというのが本音なんだが。


 人間というものは不意に不幸に見舞われ、不幸に失敗する。

 だけど不幸に救われ、不幸にも成功する可能性だってあるものではないだろうか?



スペースオペラって何だろう(哲学)


最近スペースオペラの「ス」の字くらい出ているのかも不安になるw

少なくとも番外編はまったく出ていなかったw

そして次話もでないなぁ、今回の話が続きます。


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