#3 会話が成り立つ女性に出会う
「じゃあ早速宇宙船に送るから詳しい話はそこでウチの子に聞いてちょうだい」
「いやちょっと待って。心の準備が」
そんな俺の戸惑いを無視して女神は笑顔で魔法陣のような文様を手から出して俺にむける。
「大丈夫、超優秀な子だから。ではよいスペースオペラを!」
なんてやる気の出ない出立の言葉だろうか。
そんなことを思いつつ俺は光に包まれ、
「…………」
光が消えたら前面に大きなモニターのある空間にいた。
中心部分が半円にくり抜かれているようなレイアウトで、椅子もあるのでなんとなくここが宇宙船の操縦席かなと考える。
操縦稈も計器類も見当たらないが、そこは地球にはないシステムで後から出てくるなりそういったものすら必要のない操縦システムだといいなあと勝手に夢想する。
「っしょっと」
とりあえず立ちっぱなしもなんだしと、とりあえず座ってみる。
するとモニターから女性が現れる。
「初めまして、船長」
黒髪ロングの和服が似合いそうな美少女だ。
着ているものは女神さまと同じく宇宙服? のようなものだが。
「こちらこそ初めまして、私……」
思わず会社で初対面の人に口調で名刺を出そうとしてしまう。
染み付いた嫌な癖だね。
頭をふって言い直す。
「俺は日下部晃っていいます。女神さまにこっちに何の情報もないままここにきてるんだけど、……こう言って話が通じる?」
俺のことを船長といったからもらえる船の関係者なのだろう。
ただ話がどこまで通じてるかで俺の労力も変わる。
もう正直いっぱいいっぱいなのですが。
「大丈夫、通じますよ。現在地球のドラゴンとコンタクトを取って情報連結中です。なるべく地球……日本人の方に分かりやすく現状を説明させていただければと」
それはありがたい。
てかドラゴン?
女神さまもいってたけど地球にドラゴンいるの?
「まずそこからですかね。ドラゴンは各惑星に1体います。あなたが思うような姿・形ではありませんが」
モニターの少女が語りだす。
疑問に答えてくれる、なんてありがたい。
「ドラゴンというのは一言でいうなら神が与えたもうシステムです。その星に住む生物に試練をあたえ、それを成しえたものに恩恵を与える――まあ主に知識ですが。姿かたちは立体映像などで変化できるので一般的に日本人が想像されるドラゴン以外の形で試練を与えることも多いのですが……。」
「……神話に出てくるドラゴンとか幻獣とか神の使いや悪魔ってのは元が一緒で人に試練を与えるシステムってことなのかな?」
「それで問題ありません。日本人のオタクはそういう文化に触れてるせいでしょうかね、理解が早くて助かります」
スペースオペラ以外にもファンタジー系のラノベやアニメもよく見てて、そういう設定は触れる機会が多いとは思いますが……実際に自分がそういう立場になるとはねぇ。
正直30年いや、20年前だったら歓喜してたかもなぁ。
「その試練も『力を示せ』的なものもありますが『勇気を示せ』『知恵を示せ』等もあり平和裏に進めてもらえば3000年もあれば宇宙に進出できるのですが」
女性の表情が少し曇る。
「地球人に限ったことではないのですが、未知なる強大な力を持つものと戦いたがる人間ってのは一定数いて、恩恵をもらう途中でドラゴンを壊してしまいまして」
なるほど。それが戦うことを選択したか。
言われてみればドラゴンは強いイメージはあるがゲームやアニメ以前に神話でさえも倒されているか。
地球のドラゴン、申し訳ございません。
「いえ、コアシステムは無事なので今修復中だそうです。あと700年もすれば再稼働できるのですが、その頃に人類が残ってるかどうかは微妙なところですねぇ」
その言葉にはやけに実感をこもっているように感じる。
確かに第三次世界大戦で滅んだって不思議ではないけれど。
「まあコアシステムの状態でも地球の状況は把握しています。物質の転送は無理ですけどデータにはアクセスできますし、暇なときは地球のネットも見れますのでご安心を」
「女神さまもそんなこといってて、ありがたいけど」
「何かご不満が?」
「いやなんかすごいなって思って。宇宙って広いのにここがどこか知らないけど地球のネットが見れるってすごい技術だなあと」
俺の言葉に画面の女性はハッと思い出した顔をする。
「いえ違います。大体今の技術だと星系内での情報通信ができる程度ですよ。ただ私たちは技術体系が違いますので」
「技術体系?」
「ええ」
女性は笑顔で再度挨拶する。
「申し遅れました。私は惑星ワイズのドラゴンです」