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#287 そこに愛はあっただろうか? 10

「さすがの詐欺師と言わざるをえません」


 呆れ顔で言うカグヤ。

 いや、言わなくてもいいからさ。



 複雑な表情で泣くマオ筆頭補佐官に別れを告げ、通信を切り自室に戻る。

 すぐさま酒を持ってカグヤがやって来て、ねぎらい言葉より先に蔑まれる。

 本当にひどいヤツだ。


「誉めているんですよ」


 カグヤは涼しい顔で言うが騙されるものか。


「嘘も方便と言います。船長の詐欺で人が救われたのならばいい嘘、いい詐欺だったと思うのです」


 やっぱり誉められたような気にはならない。


「船長はひねくれすぎです」


 やかましい。

 というか救えたかどうかはわからないしな。


「まあそうですね。それでこの後はどうします?」


 予定通りこの星は素通りで。


「これでやめるのですか?」


 とカグヤは驚くが、一体この後何ができよう。

 レーティアの解析通りドームが開くかどうかは別に俺が確認すべき案件ではなく、その後この星の住民やマオ筆頭補佐官がどうするのか、どんな風に気持ちを整理するのかは後の話だ。


「マオ筆頭補佐官についてはもう少しフォローした方がいいのでは?」


 この手のは時間をかけて自分のなかで整理すべきだと思うけどな。

 いきなり情報過多だと思うからな。

 これから数日で俺の仮説を反芻し、5日後にドームが開き、それから人の反応を見て、今後の展開に巻き込まれてようやく結論が出ることだろう。


「……結局船長お得意の問題の先送りですか? 誉めて損しました」


 肩をすくめるカグヤ。

 そもそも俺は誉められた気にはなっていないがな。


「マオ筆頭補佐官の件はまあいいです。ですが龍の聖女からの依頼はどうするのです?」


 そこは解釈の持って行きかたではないかな。


「と言いますと?」


 何とかしてあげてと言われたが具体的にどうしろとは言われていない。


「まあそうですね」


 今回の件でこの星の鎖国がどうなるかはわからないが、結果としてこの星の問題はそこではなかったということだ。

 そもそも鎖国になった原因が女神だ。

 どんなふうにマオのじいさまと接触して、どんな風に話したのかは知らんが、結果このありさまである。


 となると鎖国している星もスペースオペラっぽいからOKという意味ではなく、自分の失敗でこうなったのだから見逃していたのではないだろうか?


「……もしくは自分の手柄と言うのでは?」


 それならば大々的にアピールするだろう。

 そうしていればアルゴのドラゴンあたりは安心していただろう。


「なるほど」


 つまりは何か負い目があったから黙認しただけではないだろうか?

 あの女神でも負い目を感じるのかよと思うべきか、さすがにこうなっても負い目1つ感じないようなら本当に手におえないと思うべきか。


「何とも言い難いです」


 と苦渋の表情のカグヤ。

 まあそこはとりあえず置いておこう。


 結局のところ龍の聖女の依頼の「なんとかして」はアルゴのドラゴンが調整室に放り込まれないようにしてくれということだ。

 さて、俺が何もしなくて鎖国されたままでも実のところアルゴのドラゴンは安全だったと言える。

 今回の件で結果この星は鎖国を維持するか開国するかはわからないが、原因が原因だけに当面何かのペナルティーを課すこともなかったと考えられる。


「つまりやるだけ無駄だったのですか?」


 いや原因がわかって、結果自分の身は安全だったと知れただけよかったのではないか?


「……まあそうですね。いつ創造主の気が変わって開国させろと命令されると怯えるよりはずっといいですね」


 つまりは俺は何とかしたと言えるのではないか。


「……そうなんですかね?」


 そうだよ。

 ということで、ここまでの情報を龍の聖女に送っておけ、ああ、返信がてらこっち来るなとも言っておけ。

 この案件は女神が関わっているから見られているかもしれないとかなんとかうまいこと言ってな。


「了解です」



 カグヤが作業している間、ハイボールをちびちびと飲む。


「……船長、アルゴのドラゴンから通信が来ているんですが」


 だろうな。

 まあ放っておけ。


「火急の用件だと言ってますが」


 そりゃあそうだろうよ。


「……船長は何の用なのか知っているのですか?」


 怪訝な顔をするカグヤ。


 そりゃあまあ、現状に怯えて、龍の聖女につくことを選択したからな。

 龍の聖女から俺を動かし何とかしてもらおうと。

 今後女神と敵対することになっても、目先の恐怖に耐えられなかったというのだ。


 何もしなければ平和にこの星のドラゴンとして生きていられたのにな。


「――ああ!」

 

 策士、策に溺れる、……違うな。

 雉も鳴かずば撃たれまいかなぁ。


「……船長はもしかしてこの事を予想していたのですか?」


 原因が女神と気がついた時にな。

 それから俺を利用したアルゴのドラゴンが自爆して後悔するのだと気がついてからは溜飲が下がったよ。

 あと、行く先々で龍の聖女に付くから助けてくれ的な要請を回避するためにも何とかせねばならないと思っていたから助かったよ。


「さすがはドラゴンスレイヤーです」


 カグヤが肩をすくめる。


「ドラゴンも策を練らねば自爆すまい。……違いますね。ドラゴンも鳴かずばドラゴンスレイヤーに討たれまいですかね」


この章は一応ここで終了ですが、次話もこの星でもう少し続きを

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