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#284 そこに愛はあっただろうか? 7

「逆にお尋ねしますが、他の星には都市を覆うようなドームを建設する技術はあるのでしょうか?」


 カグヤに調べさせたところ小型のものであれば製作は容易だという。

 大きいものはと問われれば、宇宙は広いから絶対にないとは言えない、らしい。

 なんのためにこんなものをという気はあるけどな。


「宇宙は本当に不可解で不条理です」


 まあそれは同意だな。

 なにせあんな女神が作った世界だからな、まっとうなものであるはずがない。

 スペースオペラに関係なく生きている人類にとってどこに罠があるかわかったものではない。



 それはさておき、実は私も未知なるものを持っているのですよ。


「そうなのですか?」


 ええ、このカグヤとレーティアは一見すると人間にしか見えませんが、実は管理頭脳なのです。


「……ご冗談を。確かに人型の管理頭脳の存在は知っていますが、そこまで高度のものとは聞いてませんし、信じられません」


 ですが事実です。

 宇宙には未知が溢れています、俺のようなただ引きこもりたいだけの人間には本当に残念なことだが、事実です。


 こいつたちは人間そっくりな外観と人間以上の運動性を持った素体にそれを制御するハイスペックな処理能力を持った管理頭脳なのです。

 国家運営を行う管理頭脳でさえ凌駕する性能です。

 どうでしょう?

 もしよければ、その地上のドームを解析させてもらえないでしょうか?


「解析ですか? できるのですか? 我が国の管理頭脳が100年たっても解析できないというのに」


 コイツらは通常の管理頭脳と違い、個人が作った採算など考えていないハイスペックな一点ものです。

 一般の管理頭脳とは違うアプローチが試せるでしょう。

 特にレーティア――こっちの小さい方ですが、他の惑星で管理頭脳のシステムの穴をついて隠していたものを発見した実績があります。

 ちなみに私はその際、可愛い娘と出会うことになりましたがこれはまあ別の話です。

 私的には話したいのですが、長くなりますしウチの管理頭脳どもに蔑まれるもので。


 まあダメ元で試してみたらどうでしょうか?

 何か発見出来たらめっけもんですよ。


「……そうですね」


 マオ筆頭補佐官は半信半疑だが受け入れてくれた。

 ということでカグヤ、レーティア任せた。


「了解しました」

「やってはみるけどさ」


 と予定外に振ってはみたが、それでも解析を始めてくれるドラゴン&タイガー。


「もしも……ドームが開くのであれば自分は……許されるでしょうか」


 マオ筆頭補佐官が呟く。



 ……許されるとは?


 俺の問いに目を伏せ思い悩み、頭を振って俺と向き合う。


「先ほど出た狂人の名前はウィリアム・マオ。……私の祖父です。この星の人間なら誰でも知っていることですがね」


 それはアルゴのドラゴンの資料には書かれていなかったな。

 しかし祖父が犯罪者でも孫には責任はあるまい。

 しかもこの人は大統領の筆頭補佐官になっているのだから差別なども受けていないのだろう。


「それはどうでしょうか。犯罪者の身内だから責任をとらすために後始末をさせられているとも言えます」


 自嘲めいて言う。

 なるほど、普通でもトラブル対応などやりたくないのにそれが働かなくてもよい世界ならなおさらだろう。

 俺など生前トラブルだのクレーム対応でどれほど苦労したものか。


「宇宙を旅して解決法を探して来いと言われないだけましですかね。狂人が増えるとさらに厄介という判断かもしれませんがね」


 未曾有のトラブルの責任者に身内を当てるというのは子孫に罪を負わせているといえる。

 それは気の毒であり、……気に入らない。


 ということだ、カグヤ、レーティア、気合い入れてやれ。


「船長、こういう展開だと優しいですね、でもやるのは私たちなんですね」

「管理頭脳に気合いを求められても困るよ、自分は働かないくせに」


 俺の激励にやる気をだすドラゴン&タイガーをしり目にマオ筆頭補佐官と向き合う。


 

 こんなことを聞くのは失礼かもしれませんが、あなたのおじいさまはなぜそんなことをしたのでしょうか?

 よく宇宙での生活は過酷だと言います。

 閉鎖空間だったり孤独で精神を病むと。

 しかしそれにしてはおかしくないでしょうか?


「なにがでしょう?」


 宇宙で精神を病めば地上に降りたがるものでしょう?

 しかしながらこんな大掛かりなことをするのであれば、長期間宇宙で準備を進めていたのではないでしょうか?

 精神を病みながらそれでも行う、わざわざそこまでする動機が見えないなと思いまして。


「ですので『狂人』と申したのです」


 そういえばそんなことを言ってたっけ。

 狂人の起こした奇行。

 一般人に理解できないとその一言で片づけてしまうしか出来なかったのだろう。

 考えることを放棄した、もしくは考えてもこの惨状がどうにかなるわけでもない、狂人を理解しようというのは腹立たしい、そんなところだろうか。


「そうですね、正直言ってわからないのですよ。実際に事件後、拘束されたときに意味不明なことを叫んでいたと言います」


 そうなのですか?

 ちなみになんと?


 俺の質問にマオ筆頭補佐官は忌々しいことを思い出すような顔し、


「宇宙で女神に会った。そいつがこの星に厄災をもたらそうとしている。備えねばならない……と」


 ――――!!

 最悪だ!

 ヤツか!

 犯人はヤツなのか!


まあ落ち着け。

確かに犯人は「ヤツ」だ!

最悪の元凶だ。


だが安心しろ。

この章に「ヤツ」は出ない。


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