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#283 そこに愛はあっただろうか? 6

「確かに我が国の鎖国は対外政策とは言えません。むしろ逆とも言えます」


 マオ筆頭補佐官は口を開く。


「我が国の住民は宇宙を忌避しているのです。ゆえに鎖国をしています」


 忌避ですか?

 それも国民すべてですか?


「毎年、開国するか否かの国民投票は行われています。9割以上は鎖国を支持しております」


 圧倒的だな、おい。

 少数を切り捨てるのかと言う意見もあるが、毎年国民投票しているのであれば民主主義の多数決の原理を採用するのはごく自然な流れであろう。


「ほとんどの国民は宇宙に関わりたくないと考えています。ゆえにその対策としての鎖国なのです。他星からの宇宙船を受け入れなければそれが叶うのですから」


 なるほど、それは道理だ。

 問題はそこまで国民を宇宙アレルギーにした原因だ。


「…………」


 マオ筆頭補佐官は口を閉ざす。


 俺はアルゴのドラゴンより情報を受け取っているのでこの国で何が起こったのかは知ってはいる。

 だがそのことをマオ筆頭補佐官は知らない。

 俺が原因について言うとなぜ知っているのかと問題になりかねない。

 彼女から聞かないと聞けないとこれ以上進めないのだが、言いたくなさそうではある。


「鎖国というのは今はいいかも知れませんが、将来、次世代の子供たちが宇宙に出ようとした場合弊害があるのでは?」


 とポーラが俺の意図を汲み取ったわけではなく、本人の純粋な疑問を口にする。


「確かに国民投票では投票権のない未成年の意見は反映されません。ですが100歳以上の人間は事件のせいでトラウマを抱えています。また100歳以下でも事件の影響があり、宇宙を嫌っているものが大半であります。将来的に弊害があろうとも我々は鎖国を続けることでしょう」


 それは確固たる意思表明。

 それだけの事件が100年前この星にあったという。

 不老長寿で200年くらいは生きるこのご時世とはいえ、100年経ってまったく風化していないというのは尋常ではない。

 いったい何があったのか?

 ポーラのみならず好奇心をくすぐるところではある。

 俺だって前情報がなければ詮索したいと思うくらいの好奇心がわく。


「……くだらないことです」


 俺たちの無言の圧に負けたのか、マオ筆頭補佐官が口を重い口を開く。


「100年前、我が国に狂人が現れました」


 狂人ですか?


「ええ、狂人です。生まれたときはまともな人だったという話ですが、宇宙にあこがれ船乗りになり、妻子を国に残し十数年旅をして戻ってきたときには狂っていました」


 何でもかんでも宇宙船での生活が過酷って言わないで欲しいもんだけどな。

 俺的にはこんなに引きこもれる環境は他にないというのに。

 みんながあっさりおかしくなるものだから、適応している俺が異常だとドラゴンやタイガーから責められる、本当に困ったもんだ。


「彼は惑星に戻ってくるなり、どこからか用意した巨大なドーム状のコンテナで地上の都市を覆ったのです」


 この星には7つの都市があり、そこに人類は集中している。

 その生活圏をすっぽりとドームで覆った。


「そんなことが可能なのですか?」

「技術的なことは今現在も判明していません」


 そのドームの中には照明があり、太陽の動きに合わせて昼と夜を演出する。

 空調も完備され、一定の温度に保たれる。

 さながら強制的に宇宙船の中に閉じ込められた、そう誰かが言ったらしいが皆それに同意した。


「我々は太陽を、自然を奪われたのです」


 マオ筆頭補佐官は苦虫をかみつぶしたような顔をする。


「外に出られないのですか?」

「可能です」


 ポーラの問いに丁寧に答えてくれる。

 ドームには入り口がついており、外に出ることは容易である。

 太陽を浴びようと思えば、自然を感じたければ外に出ればいい。

 だが、そこで生活するのは難しい。


 惑星アルゴに関わらず、惑星運営は効率重視である。

 人間は都市部にまとめて移住させ、食糧生産に適した土地、工業に適した土地を開拓して効率よく生産している。

 7つの都市がドームで覆われたから代替えの土地があるかというと答えはノー。

 せいぜいリゾート地があるくらいだが、国民を移住させるほどの広さはとてもない。

 日光を浴びられないという欠点はあるが物資などは農業区、工業区などから搬入はでき、日常生活に何ら支障がないというのがこの問題をややこしくさせた。


 まっとうな手段としてはドームを撤去することなのだが、そこで問題になるのが先ほどの「技術的なことは今現在も判明していません」だ。

 管理頭脳が強固で仕様書や設計図が手に入らない。

 ドームの開閉機能があるようだが、ロックが解除できない。

 物理的に破壊しようとすると空調や照明が使えなくなる可能性があり、中にいる人間の生活ができなくなる恐れがある。

 それならば現状維持がマシなのではという考えになる。


「……そんな」


 絶句するポーラ。

 現在はドームの開閉機能の使い方を解析しつつ、一つの都市の住人を他に振り分け、物理的作業で破壊している最中だという。

 そして事件から100年経って今なおメドが立っていない。


「我々は宇宙から持ち込まれた未知の技術で都市に閉じ込められています。当たり前のように享受していた太陽や自然をいまなお奪われています。我々が宇宙を憎み、鎖国を選択したとして何の不思議がありましょう?」



暑い日が続いていますが皆様は体調は大丈夫でしょうか?


私はお盆休みもなく働いています。

室内で空調もある職場ですが、通勤やたまに外に出るときに太陽や温度が恨めしく、こういうドームで覆ってもらえるなら喜ぶタイプの人間ですw

この暑い時期に、太陽を奪われたというネタは「うらやましい」的に意見になり、この星の問題が軽いものにならないかと今日になって不安を感じましたw



説明パートでもどうにか読みやすいようにとか笑いの一つでもとかツッコミ入れれるようなネタをとか思っているのですが難しいです。

せめてあとがきで笑いをと思いましたが暑くて思いつきもしませんw

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