#278 そこに愛はあっただろうか? 1
惑星フォースフルからゲートを跳び、惑星アルゴがある星系に到着する。
ここは少々特殊な星という情報を前惑星でシンより聞いているので素通りする予定である。
俺はもちろんのこと、気質が似ているニーナも地上に降りられないことは問題にならない。
ポーラくらいなものだが、今回は我慢してもらうようにすでに頼んでいる。
「私も少しくらいは問題ありません。……ですが変わった星もあるのですね」
と首をかしげる。
「宇宙船乗りが何年も出ていない星って言うのは珍しくはないけど、そういう星だって、むしろそういう星だからこそ他の星の文化を欲しがるものなんだけどね。確かに自星で自給自足はできるから交易する必要はないけど『鎖国』ってのは珍しいよ」
レーティアも同意する。
まあよくよく考えてみたらこんな星があっても不思議ではないのでは? と思わなくもない。
他の星の存在は知ってはいても、通信ができるわけでもない。
宇宙船からの情報頼みだというのに現在宇宙船乗りは少なく、定期便を自国で用意するのも手間がかかる。
ならばいっそのこと鎖国にするのも1つの手段ではなかろうか。
情報が遮断されれば国民からの他星のコンテンツが欲しいという要望をシャットアウトできる。
「でもあると知っているものを国家の方針で今後手に入らないということは反感が多いんじゃないのかな?」
とレーティアが疑問を呈す。
この星では100年ほど前までは鎖国などしていない星だったというのに突如鎖国を宣言したのだという。
基本的に宇宙船の立ち寄りは禁止。
食料や生命維持に必要な装置の故障という場合だけ、人道的見地から宇宙港に入港を許されるが船から降りることは許可されない。
ちなみに支払いはコンテンツの売り上げではなく、貴金属などを相手の言い値で売ることで支払うこととなる。
「私的にはこんな恐ろしい星はないですよ」
と顔が青いカグヤ。
そうだよな、恐ろしいだろうな、ハリセンやら調整室が。
この星のドラゴンはどうなっているんだろう?
まあ後で教えてもらうとして、まずはこの星の方針だ。
鎖国している星になんのトラブルもない宇宙船が立ち寄ることは許されまい。
ポーラもニーナも早急に地上に降りなければならないほど追い込まれている訳でもないのならばスルー案件だろう。
つまりは宇宙船に引きこもっているべき案件なのだ!
素晴らしい!
非常に素晴らしい!
なに、鎖国って住民は惑星に引きこもり、船乗りは宇宙船に引きこもるというダブル引きこもりシステムなの?
「船長、喜びすぎると落とし穴がありますよ」
「キャプテンは少々運が悪いですし」
「マスター、フラグだよ!」
「お父さん、ドンマイ」
うるさいよ!
さて自室にカグヤを呼ぶ。
この星のドラゴンについての情報をもらいたいからだ。
レーティアも呼ぼうかとも考えたが、まあドラゴンのことはできるだけ俺とカグヤでカタをつけよう。
で、この星のドラゴンはすでに調整室とかいうのか?
「いえ、この星にまだいます」
鎖国などされたらスペースオペラの欠片もないのにか?
「宇宙船乗りを輩出しないくせに他惑星と交易するのは問題だけど、鎖国という形で封鎖しているのなら、それは1つのスペースオペラの種。もしかしたら芽吹くかもしれないから見守りましょう。というのが創造主の判断です」
なるほど。
蒼龍のところのドラゴンを神とした宗教国家のように、そういう少し変わった素材は宇宙に多様性を生むかもしれない。
そこから何か大きな波が起こるかもしれない。
そうなると1つくらいはキープしておきたくはなるかな。
なるほどそう考えるとこの星のドラゴンはラッキーだな。
「船長はそういう考えなんですね」
とカグヤが言うが他にどう考えろと?
「気が気ではないですよ。そりゃあ今はいいですよ、今は。気が変わって真逆のことを言われて早急に鎖国を解除しろって言われたらと思うと」
青い顔で身震いする。
まあ確かに理不尽な存在だ、いつハリセン持ってくるかはわからない。
でもさ別にいいじゃないか、他人事なんだし。
それとも惑星アルゴのドラゴンが何か言ってきたのか?
「私もそれを気にしてたんですけど、不思議なんですよね、音沙汰がないんです」
まあほら、好きこのんで俺に話したがるドラゴンはいないって言ってたし、そのクチじゃないのか?
「そうでしょうか? こういう特殊な案件だとダメ元で船長に助言をいただきたいところですけどね」
特殊な案件の専門家のように言わないでくれるかな?
「今までの実績がモノを言いますよ」
肩をすくめるカグヤ。
おかしいな、俺は引きこもっていただけなのになぁ。
「引きこもっても宇宙をかき乱せるんだから大したものです」
言葉はともかく、口調は褒めていない。
まあこの星のドラゴンはもうこれでいいと開き直っているのか、ハリセンの恐怖に耐えきれずに壊れたかのどっちかじゃないか?
「後者はイヤですねぇ」
だな、だからさっさとこの惑星を抜けようではないか。
トラブルはごめんだ。
「え~、そんなこと言わずに~ちょっとなんとか~してあげて~」
自室のモニターがいきなり付き、惑星ジュメルで別れた龍の聖女が現れた。
今回から新シリーズの開幕です。
本当は300話に向けて違う話を書き、「300話も使ってプロローグだったとは予想していなかっただろう!」といって301話から本編開始しようという構想もありましたが、「プロローグが300話なら本編はもっと長いんだろうな?」ってツッコみを入れられたら詰むと思い断念w
気が付いてよかったw
このシリーズは10話+1話
終わるころには300話達成です




