#275 ニーナの欲しいモノ
「お父さん」
どうしたニーナ。
現在、ニーナと引きこもっている。
ちょうどアニメが見終わったところだ。
「ニーナ、……欲しいものがある」
と相も変わらず無表情で言うので、軽いおねだりか真剣なものかが判別しにくい。
とはいえ、ニーナの希望はできる限り叶えてやりたいとは思っている、俺にできること限定でな。
「お父さんにできないことあるの?」
父を買い被るな、山ほどあるわい。
宇宙の半分が欲しいとか言われてもちょっと無理ではある。
さすがに娘のためとはいえ宇宙征服するのは手間がかかる。
……1星系というのであれば、惑星ジュメル辺りの人類どころかドラゴンもいないところならば、俺のものと宣言してもどこからも文句はでないだろうから、それくらいでいいのなら。
ただ地上はボロボロらしいから降りれないけど。
「ニーナ、星系は欲しくない」
そうか、それは助かった。
実際問題、そんなことをするというとカグヤやレーティアに何言われるのかわからないからな。
では他に欲しいものか、……寿命のことなら時間をくれ。
今カグヤにクローンの研究の盛んな国やら遺伝子異常の研究が盛んな国を当たらせている、最優先にだ。
お前には長生きしてもらおうと思っているよ。
イヤ、悪魔に魂を売れば……もとい、女神に聖女になると誓えば永遠の命さえ手に入りそうなんだが、それは最終手段というか避けるべきだと思っている。
まあこの件はもう少し時間をくれないか?
「急がない。興味がない」
死にたくないと騒がれるのも困るが、興味がないと言われるのも困るところではある。
というか、そうなると欲しいものは寿命でもないのか?
俺が聞くと、頷いたあと少しためらって口を開く。
「ニーナ、……名前が欲しい」
名前?
ニーナは気にいらないか?
ちゃんと考えてはないしな、語呂合わせだしな。
「違う! ニーナ、お父さんのくれた名前好き。カッコいい」
拳を握って力説してくる。
そうか、大事に思ってくれるのはありがたいが、さっきも言ったが語呂合わせだからちゃんとした名前をつけても……。
「いらない!」
そうかい。
じゃあその名前でないとなると二つ名か?
白銀のニーナとか銀狼のニーナとかか?
「何それ! カッコいい!」
俺の言葉に目を輝かせて食いつく。
俺的にはニーナは髪の色から銀を使いたいところだが歌姫とか閃光とかもいいかな。
「お父さん! なんかいい!」
お父さん的にはプリティーとかプリンセスとかマジカルとかキューティーとかラブリーとかエンジェルも捨てがたいよな。
「お父さん、それはダサい」
解せぬ。
「お父さんは何か二つ名持っているの?」
俺的にはベストいやスペシャルファーザーと呼ばれたいのだが、一部ではドラゴンスレイヤーと呼ばれている。
「お父さん! なんか凄そう!」
凄いと思ったことが1度もないなぁ。
「どうやってドラゴン倒すの? 剣? 魔法?」
……精神攻撃かな?
言葉巧みに相手を追い詰めて自滅させる的な。
「お父さん、……地味」
さっきのトキメキを返せと言わんがばかりにテンションが下がるニーナ。
本当にな。
でもさ俺は本当にそれしかしてないんだぞ。
それなのに今やドラゴンたちは俺にひれ伏す勢いだぞ。
ニーナに危害を加えたらひどい目にあわす、でもニーナの寿命を延ばす方法を見つけたら優遇するって伝えてもらったら一気にドラゴンたちが動き出したって話だし。
「それは凄い?」
どっちかと言うと酷いかなぁ。
「二つ名、カッコいい。でもいま欲しいのはそれじゃあない」
とニーナが言うが、それなら後は何だろうか?
……そうなるとミドルネームくらいだろうか?
俺は日本で暮らしてたからなじみがないが、そういうのがあってもいいのかもしれないな。
そうなると俺的にはいまニーナは「日下部ニーナ」のつもりだったのだが「ニーナ・クサカベ」とするべきか。
そこに入れる名前を考えてみようか。
ニーナ・ミランダ・クサカベとかニーナ・フランソワ・クサカベのようにしようか?
「……お父さん」
俺の提案にニーナはポカンとした顔で俺を見る。
「ニーナは……クサカベ、なの?」
とオズオズと聞く。
「……お父さんと一緒?」
そりゃあそうだろう。
親子は同じ名字だ。
いずれお前はお嫁にいって名字が変わるかもしれない。
それはお父さんとしては寂しいことだけど、嬉しいことでもある……らしい、実感はまったくないが。
まあそんな先の話はとりあえず置いておくとして、とりあえず親子なんだから一緒の名字でいいだろう?
「うん!」
それならば、あとはかわいいミドルネームを考えよう。
かわいさと音の響きとあとバランスだな。
これは難題だ。
さらにニーナのかわいさを引き立てねばならない。
いや、まてよ、ミドルネームにも画数とかあるのだろうか?
あと由来もいるのか?
おいおい、これは大変だぞ!
しかしこれはやりがいが……、
「お父さん、もういい」
そんな俺の熱意をハタ目にニーナが立ち上がる。
いいって名前が欲しいんだろう?
俺いま珍しくやる気が出てるんだけど。
「ニーナ、知らなかっただけだった」
ニーナは若干嬉しそうな、そして誇らしげに、
「ニーナ、名前、もう持ってた」
前章でニーナがシンシアに自己紹介ときにそういえばと思いついた話でしたがようやくかけました。
明日は投稿を休ませてもらいます




