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#274 落としどころ

「どうすればキャプテンのように上手くやれるのでしょうか?」


 たまにはポーラとも向き合おうと個人面談をしていたときの発言。

 2人きりで良かったよ、カグヤやレーティアがいたら「正気になれ」とか「気を確かに」とさぞやうるさかったことだろう。


 それはさておき俺のようにね。


「はい。どうして私は上手くやれないのでしょうか?」


 原因は色々あるがまずは大前提としてこれは俺が思う一例であって、ポーラに適しているかとかは考慮していないということを覚えておいてくれ。


「はい」


 ポーラが真顔で頷く。

 また俺もたまにはこの子と真面目に話をしよう。


 まずポーラは自分が経験不足ということを自覚すべきだ。

 そしてもう少し俺の事を信頼すべきだ。


「お言葉ですが、私は経験不足は痛感していますし、キャプテンのことも信頼しています」


 ではなぜ、俺が会いに行くなと釘を指しても惑星ヤクモでアヤノに会いに行ったのはなぜだ?


「それは経験不足だからこそ、それを埋めるためにです」


 その考えは正論である。

 だがなぜ俺が行くなと言ったのかの意味がわかってないとも言える。


「……私がコトを大きくしたらキャプテンにご迷惑をかけるからでは?」


 俺もいつも面倒くさいとしか言わないから言葉が足りないと反省するところでもあるのだが、ポーラは人の言葉の裏を読むべきである。

 人間は誰しも素直に言葉にはしない。

 隠したり嘘をついたりする生き物だ。


「キャプテンがおっしゃると説得力があります」


 よく言われるよ。

 でまあ、 ポーラに行くなと言った理由はあんなのと会っても経験にもならない、時間の無駄だから止めておけということだ。


「時間の無駄ですか? ですが1度知るということは経験にもなるのでは? 失敗も含めて」


 それを加味して行くなと言ったんだよ。

 ポーラ1人で行って何の経験値が得られよう。

 特殊すぎて逆に経験したことが足枷になるってもんだ。


 岸から軍艦を素手で止めに行くが、陸から海の距離がありすぎて相手に気がつかれないようなもんだ。

どんなに声をあげても届きはしない、素通りだ。

 そんな感じで経験値が入るはずもない。

 後で物事をわかったときに恥ずかしい事をしたと逆にダメージを受けることだろう。


 生前働いていたときも特殊な事例だからついて行って勉強してこいと言われたこともあったが、まったく素地がないところでついて行ったところで、本当にただ見ているだけで結局頭に入らないというか身に付かない。

 時間の無駄である。

 そんなことをするくらいなら、地上で遊びながら誰かと会話していたほうがまだタメになるよ。


「ですが知らないと寄り添えないのではないでしょうか?」


 だからポーラがレオンの被害者に行くのは黙認してたよ。

 でもって加害者のほうに行くのを止めていただろう?


「……そう、ですね」


 俺の言葉に思い出しながらポーラは頷く。


 被害者の話を聞くのは――もちろん相手に親身になって話を聞くとか、相手を苛立たせない、相手の怒りを黙って受け止めるなど上手に聞くのはテクニックがいるが――相手の苦しみや怒りを受け止める忍耐があれば最低限はなんとかいける。

 さて加害者はというとポーラに絶対的に足りないものがある。


「なんでしょう?」


 落としどころの定め方だ。


「落としどころですか?」


 そう。

 例えばレオンに話に行ったときに、お前はどういう状況になったら満足だったんだ?


「それはもちろんレオンさんが反省してくだされば」


 その反省はポーラ相手に謝れば許すのか?


「心からの懺悔を私は聞き届けます。ですが私に謝罪するのではなく、被害者の方々に直接謝罪してほしいとは思います」


 つまりはレオンがあの時にこれから宇宙を謝罪行脚にでる。

 騙したことを謝り、金品を返すと言えばお前の気が晴れたのか?


「……気が晴れるというのとは違いますが、理想的かと思います」


 じゃあ聞こう。

 レオンがすると言ってもポーラがついて行くわけでもない。

 実際は口だけで謝罪行脚などしない可能性がある。


「それは……」


 仮に行ったとしよう。

 1人目で許す条件がこのまま結婚してこの星で過ごすだった場合、ほかの惑星の被害者に謝りに行けないけどそれはOKか?

 全員に謝ってから帰ってくるから待っていてくれと言っても、一度は逃げた結婚詐欺師を信じるやつはいないだろうし、他の星でも同じ条件を出される可能性だってある。


「……」


 最悪の場合、途中で逆上した被害者女性に殺されるかもしれない。

 そうなると被害者は加害者になる。

 それはお前の本意か?


「……キャプテン」


 ポーラ、お前の言うことは間違いではない。

 正論ではそうなんだろう。

 だけど実現不可能なことを望んでもしかたないんだよ。


「私はそんな気は!」


 そんな気はなくともだ。

 正論を盾に相手を責め立てるのは暴力と変わらない。

 正論を盾に実現不可能なことを強要するのは脅迫だよ。


 結果相手を追い詰める。

 逆ギレして暴れるかもしれない。

 精神的に病むかもしれない。

 そんな可能性があるわけさ。


 俺が働いていた時だって事故があった時など責任者や当事者を上司が責め立てる。

 なぜそうなった、原因は何だ?

 じゃあどうする、対策をだせ!

 この対策では不十分だ、やり直せ!

 損失をどうするつもりだ、責任を取れ!


 もちろん反省を促し、対策を練るのは当然のことだ。

 ただ落としどころもなく、ただ責め立てるのはパワハラになる。

 本人は正論を言っているつもりでも、その正論で逃げ場をなくされれば追い詰められる。

 それは新たな不幸を呼ぶことだろう。


「……ではどうすれば?」


 だから落としどころを作れと。

 反省を促すために相手ができそうなことを提案すればいい。

 

「どうすれば……いいんでしょうか?」


 最終的に相手を許してやれということさ。

 お前のところの教えはどうか知らんが、蒼龍の寛容さとか慈悲で相手を許し、救ってやりなさい。


「許すことは……できると思います。ただ落としどころというのが難しいです」


 まあそうだな。

 でもな、ポーラの正義感から正論で相手を叱ろうとするんだろう?

 なら叱る以上は許してやらないと相手が立ち直れないだろう?


「許す……そう、ですね」


 ポーラは言葉をかみしめるように、頷く。

 まあ難しいかもしれないけどな、これからゆっくり考えていけばいいさ。


「はい」


 ポーラが返事をした後、すぐに思い出したかのように俺に質問する。


「ちなみにキャプテンならレオンさんにどう落としどころを、許すのでしょうか?」


 ああ、それがお前にレオンに会いに行くなといった理由の大きなところだ。


「と言いますと?」


 俺、あいつに対して落としどころが見つからないんだよ。

 許したくないんだよ。

 だから関わり合いにならないのが一番だと思っているんだよ。


もう書くまいと思っても時々出てくるレオンw

しかも明日がモデルの奴の誕生日だということに気が付く。

通りでここ数日悪いことが続くw

そろそろ彼の呪縛から解放されたいw

でもネタの宝庫なんだよなぁw

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