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#268 想いは奇跡の鐘を鳴らす 21

 ニーナとファンタジー物のアニメを数話見て、休憩に入る。

 俺なら1クールくらいならぶっ続けて見れるがニーナだとそういうわけにもいかない。

 根を詰めて見させてファンタジーが嫌いになっては本末転倒である。

 ここは長期育成計画でいこう。


「そういう気の回し方ではなく、子供をずっと部屋に引きこもらせる危険性や悪影響を気にしてください」

「カグちゃん、ニーナ、大丈夫」


 本人はそういっているけど?


 俺とニーナの言葉にカグヤは眉をつり上げる。


「子供が間違っていることを正すのが親の務めです。そもそも親が間違えているからといって、子供まで巻き込まないでください!」


 とカグヤに結構マジで怒られたので、日課の運動をした後、食事をすることにする。

 するとニーナが思い出したかのように俺に告げる。


「ニーナ、このことを忘れていた」


 なんでもニーナは俺に伝えたいことがあるから先行して帰ってきたのだったと言う。


「お父さん、神殺しとかいうパスタはなかった」


 ああ、そういう話をしていたっけ。

 そうか、なかったか、残念だ。

 ニーナの言う通りテツジンのとこのラーメンで堕落していただけに本当に残念だ。

 あとは龍の聖女の活躍を信じよう。


「だけど、ギリアムと探してみた」


 そうか、頑張ったんだな、ありがとう。

 何かあったのか?


「『倒神』ってお酒、見つけた。ニーナ、お酒、飲めないからわからない。けど、説明ではあまりの美味しさに飲みすぎて神様もバタンキューと倒れるそう」


 ギリアムが酒瓶を持ってくる。

 パッケージを見るとニーナの説明と似たようなことが書かれている。


「この星でもかなりローカルなお酒ですね。材料の品質や醸造法にこだわって、管理頭脳の手はあまり使わずに人の手で作ったお酒のようです」


 とカグヤが教えてくれる。

 このご時世に手間暇かけてるのか。

 ちなみに酒のジャンルとしてはなんだ?


「蕎麦の焼酎でしょうか。蕎麦麹を使った蕎麦100%です。ウチのストックにも蕎麦焼酎は有りますが米麹や麦麹を使ってまして100%蕎麦というのはありませんでした」


 ふーん。

 まあ飲んでみよう。


「まだお昼なんですけど?」


 気にするな、せっかくのニーナの土産だ。

 とりあえずロックで。

 ピンクがグラスと氷を持ってきて、カグヤがしぶしぶ準備をしてくれる。


「…………」


 香りは高く、気持ちクセがあるが、それでも飲みやすい。

 ……ニーナ、これはよい酒だ。


「ほんと?」


 不安げに見ていたニーナの顔がほころぶ。

 ああ、本当だ。

 という事でカグヤよ、この酒を買い占めろ!


「船長、本気ですか?」


 本気だ。

 盛り塩がダメなら酒にしよう。

 これは塩よりは効くだろう。


「……そういうことなら手配します」


 今度来たら飲ませて酔っぱらってもらって宇宙に捨てよう。


「でも船長。そうすると誰かが飲ませないといけないんですが?」


 盛り塩の代わりに酒瓶置いとけば勝手に飲まないかな?


「……さすがにそれは」


 じゃあ御神酒って紙張っておけ。

 それなら勘違いして飲むだろう。

 腐っても神を自称しているんだから。


「いえ船長。自称ではなく本物なんです」


 世も末だな。


「でもお父さん。そのお酒、あまり売ってない。ギリアム、探すの大変だった」


 そこは任せろ、手はある。

 まずは正規ルート。

 続いてネットでのフリマやオークション、なんならこちらから募集の告知をしてもいい。

 最後には権力だ。

 レーティアに連絡してシンになんとか酒造所に連絡を取ってもらい根こそぎもらってこい。


「了解です。あと金に糸目はつけません。国中からかき集めます」


 と真顔で言うカグヤ。

 頼んでおいてなんだが、お前も必死だな。


「確かにダメで元々ですが、藁をも掴みたい気分でして」


 まあ気持ちはわかると言っておこう。

 本当に今回は疲れたからな。

 もう会いたくないので知らないうちに相打ちになっていてくれないかなぁ。


「望み薄ですが」


 だよな。

 だからこその備えだ。

 まあ買い占め頼むよ。


「了解しました」




「ただいま戻りました」

「ただいま~」


 数日後、ポーラとレーティアが大量の酒を持って帰ってくる。


「なんだよ、これ! いきなりお酒を買ってこいって大変だったんだよ!」


 まあ怒るな、レーティア。

 もしかしたらこれが俺たちの生命線になるかもしれないんだ。


「なんだよ、それ?」


 まあ後でゆっくりと話そう。

 お前には伝えねばならないこともある。


「まあいいけどさ」


 レーティアはウサギたちに指示して酒を運んでいく。

 

 ポーラも久しぶりだな。


「ええ、キャプテンもお勤めご苦労様です」


 ああ今回は本当に疲れた……あれ?


「どうかなさいました?」


 ポーラ、お前ずいぶんと痩せて、


「痩せてません」


 俺の言葉にかぶせるようにポーラは言う。

 顔はにこやかで口調も穏やかなのに妙に迫力がある。

 ……あれ?


「私はずっと変わっていません」


 ふむ、なんだろうこの威圧感は。


「ずっとこんなもんだったでしょう?」


 レーティアを見ると、「察してよ」と口が動いているのを確認する。

 ……ああ、なんかシンに体形のこと言われてたな。

 きっと地上で何やらダイエットでもしたのだろう、密やかに。


 悪い、ポーラ。

 今回ちょっとバタバタとして疲れててな、なんか勘違いしたようだ。


「まあ、それは大変でした」


 もうちょっと引きこもっておくわ。


「はい、ごゆっくりと。ニーナちゃんは私が面倒見ますね」


 まだニーナのファンタジー布教は道半ばだが、とりあえず今のポーラには逆らうまい。


すみません、明日の更新は休みます。

これから飲み会で、明日も所用で一日つぶれるもので。


日曜からこのシリーズおまけの3話を投稿します

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